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「・・・スピカ。ソフトクリーム好きか?」
「は、はい!好きです。」
「そうか。じゃあ、何がいい?」
「えっ?えっと、そうですね〜・・・個人的には、ストロベリーのソフトクリームが好きですけど・・・・」
「・・おいしそうだな。」
「はい!あの、ミザールさんは、ソフトクリーム・・・・」
「・・食べたい、かもしれない。」

アハハハハ。「かもしれない」なんですね。

「そうですか。あの、それじゃあ、どうしましょうか?」

私がそう言ったと同時に小さなソフトクリーム屋さんに着きました。ここまでミザールさんと一緒に歩いてきたんですね!少し長い距離をミザールさんとご一緒したことで、その分・・前より打ち解けられたかなって思うと、とても嬉しく思います。
それにミザールさん・・・「お友達になる」って仰って下さいましたよね!それが私には何より嬉しくて・・・・ミザールさんは外見がとてもクールですし、実際あまりお喋りはしない方ですけど・・・・とてもお優しい方だなって思います。
横目でチラッとミザールさんを見ると、お店の方が「いらっしゃいませ!」と仰ったことに軽く会釈なさいながら、ソフトクリームの種類を眺めてらっしゃいます。ふ、普通「いらっしゃいませ。」の一言で会釈はしませんよね?それだけミザールさんは、お優しい方なんだな〜って思います。
それに加えて、ミザールさんはとても背が高くて切れ長の瞳が特にカッコ良くて・・・・こんなクールでカッコ良いミザールさんの隣に、私なんかがいていいんでしょうか?今頃になって周囲の目を気にしてしまいます。

「・・ストロベリーソフトクリーム、2つもらえるか?」
「はい、ありがとうございます!」

そうしてお店の方がストロベリーソフトクリームを2つ作って下さってるんですけど・・・・まっ、まさかミザールさんも同じものを頼まれるとは思いませんでした!何だかちょっと嬉しいです。
2つのストロベリーソフトクリームが出来るまで、ミザールさんとは何もお話ししなかったんですけれど・・・場の空気が、とても暖かい感じがします。ミザールさんとおそろい、なんて考えてしまうと、嬉しくて何も考えられなくなって・・・・結果的にお話し出来なくなっちゃうんですよね。
・・その内に一気に2つのストロベリーソフトクリームをお店の方が差し出されたんですけれど、私がお財布を用意したその瞬間にミザールさんが手でそれを制されたんです!私は驚いてしまって、思わずミザールさんを見つめてしまいました。

「スピカ。ソフトクリーム受け取ってもらえるか?」
「あっ。は、はい!」

私は反射的にそう返事をしてしまって、2つのソフトクリームを手に持ったんですけど・・・結局私、ミザールさんにお金払わせてます〜!!しっかり、私の分まで・・・・!!
どど、どうしましょう!私、今ソフトクリームを両手に持っているので何も出来ないんですよね〜。ミザールさんのお勘定が終わったらお返ししなければです!!
お店の方の「ありがとうございました〜!」という言葉は半分私の頭の中でかき消えてしまって、とにかくミザールさんにご迷惑をおかけしてしまったことで私はあせってしまっていました。

「スピカ。そこのベンチで良いか?」

ミザールさんがそう仰って左手を差し出されたので、私は自然と右手をミザールさんの方に持って行きました。そうしてミザールさんが、ゆっくりベンチの方に歩いて行かれたので、私も後を着いて行ってミザールさんの隣にお邪魔しました。

「あっ、はい!あの、それよりミザールさん!お金・・・・」
「・・金?俺、あんたから借金してたっけ?」

えぇっ!?あの、ミザールさんが、じゃなくて〜、私がです〜!!と、私は心の中で思わずミザールさんに突っ込みを入れてしまいました。

「あの!そうではなくて、私が今、ミザールさんにソフトクリーム代を支払わせてしまって・・・!」
「あぁ・・・それなら、あんたの笑顔で返してもらうから、いらない。」
「ええぇぇっ!?」
「・・・あんた、いい顔するな。今のは、半分レグルスの真似してみた。」

ミ、ミザールさん。今いかにも「クスッ」って感じで笑われましたよね!?今まではあまり感じなかったんですけど、ミザールさんもホストさんなんだな〜って思います。ある意味レグルスさんやアトラスさん以上に余裕がある方なのかもしれません・・・・

「ミ、ミザールさぁ〜ん。私のこと、からかいました?」
「・・悪い。でも、半分は本気だ・・・・だから、金はいらない。」

ミザールさんはそう仰って、私に微笑んで下さいました!このミザールさんの素敵な微笑を、こんな近くで見ることが出来て・・・嬉しい反面、胸のドキドキがとまりません・・・・!

「で、ですけど、そんな!奢っていただくなんて出来ません!」
「・・どうしてだ?友達だろう?」
「お友達でも、出来ないものは出来ないんです!とても申し訳ないので・・・・」

私がそう言って再度バッグの中からお財布を取り出そうとした時、ミザールさんの手が私の手に触れて行動をやめさせました!私は一気に驚いてしまって、ついミザールさんを見つめてしまいました。

「金はいらない。友達になった記念だ。」
「ミザールさん・・・!」
「大した額じゃないから、気にしなくていい。ソフトクリームもとけるだけだし・・・・」
「は、はい・・・すみません、ミザールさん。本当に、ありがとうございます!あの、ですけどこのままだと本当に申し訳ないので、今度何か・・・・」

私がそう言うと、ミザールさんは手を離して下さって微笑んで下さいました。

「・・・あんた、本当に優しいんだな。願っていいのなら、またこうして、あんたと散歩したいかもしれない・・・・でも、無理そうだ。」
「?どうして、ですか?」
「・・・今日あんたと出会えたのは偶然だ。それに、まだあんたは客としては新しいし、特にホストとの付き合いもないから、こうして一緒にいれるけど・・・・いずれ、あんたはホストを指名しないといけない。その時に、あんたが俺のことを指名してくれればいいけど・・・・そういう訳にもいかないだろう?」

・・ミザールさん・・・明らかに他のホストさんや、私のことを気遣って下さってらっしゃいますか?

「・・すみません、ミザールさん。お気を遣わせてしまって・・・・」
「・・・別に、そんなことない。どんなに客に指名されたいと思っても、宣伝するのは、あまり良いことだと思えない・・・・レグルスのようなナンバー1ホストなら、話は別だけど・・・・」

・・どんな世界でも厳しいものなんですね〜。そしてナンバー1の方は、どこまでも輝き続けるものなんですね・・・・

「あの。ですけどミザールさんは、とても人気がありそうです。」
「・・・そうだっけ・・・一応、売り上げ下げたことないけど・・・・」

えぇっ!?ど、どうしてそこできょとんとしたお顔なさるんですか〜!?ミザールさ〜ん!絶対変な所でボケてらっしゃいますよ〜!!・・って、私も抜けてるので人のことあまり言えませんけど・・・・

「それなら、人気があるんですよ!ミザールさん。売り上げを下げないのは、とても難しいことだと思います。」
「・・・そうかもしれない。でも、俺以外にも売り上げ下げずに頑張ってるホスト多いから・・・・あんたの目で見て、一番良いホストを決めて欲しい。」

ミザールさんはそう仰ると、ソフトクリームを食べ終えられました・・・私は舐めながら食べているので、ようやくコーンに突入です・・・男の方って、食べるの早いですよね〜・・って、お喋りしながら食べてるのも原因してるのでしょうか?

「・・はい。あの、分かりました!ありがとうございます、ミザールさん・・・・」
「・・・そういえば、もうレグルスのことは指名したって聞いた。もう1人は、これから・・か?」
「あっ、はい。そうです。」

わぁ〜っ、ダイレクトにそのようなお話って伝わってしまうんでしょうか〜。

「・・オーナーが張り切ってる。次は自分が出番だから、って・・・・あの人がそういうことで盛り上がってるの見たの、久しぶりだ・・・・」

・・・ラグリアさんって、ミザールさんのお兄様・・ですよね?まるで他人事のように話されたミザールさんに、私は少し驚いてしまいました。

「は、はい・・・・あの。アルビレオさんからお聞きしたんですけれど、ミザールさんとラグリアさんは、ご兄弟なんですよね?」
「あぁ・・・・そういえば、そうだった。」

ええぇぇっ!?ち、ちょっと待って下さい!ミザールさん。いくら何でも、ご兄弟であることを忘れるなんて・・・ボケている以前の問題だと思うんですけど・・・・

「え、えっと、あの・・ミザールさん?」
「・・悪い。俺にとって、あの人は店のオーナーって認識が強かった。ここの所、仕事の話しかしてないし・・・・」

アハハハハ。そ、それは確かにそうなんでしょうけれど・・・・それでも普通、ご兄弟であることって忘れないと思うんですけど・・・・ミザールさんならではの天然ボケと言えそうです。

「そ、そうですか。あの・・やっぱり、お仕事は大変ですか?」
「ん・・・・でも、嫌いじゃない、この仕事。大変だけど、楽しいし・・・あんたと友達になれたのも、この仕事やってたおかげだ。」

ミザールさんがそう仰って、微かに笑って下さいました。そ、そんな風に言っていただけると、私も嬉しいです・・・・

「は、はい!私も、ミザールさんとお友達になれて良かったです。」
「・・・あんたは?事務の仕事って、大変じゃないか?」
「そうですね〜・・・・ですけど、私にはそれしか出来る仕事がないんです。」

私は苦笑するしかありませんでした。これが冗談ではなく本音なのが痛いんですよね〜・・・・

「そうなのか?あんたなら、もっと色々出来そうな気がする。」
「そ、そうでしょうか?ですけどダメなんです。私、本当に、事務位しかお仕事出来なくて・・・・営業とかは、絶対に不向きですし・・・」
「そうか?取引先にあんたが来たら、俺は問答無用で買うぞ?」

えぇっ!?ま、まま、待って下さい!!それは一体どういう意味ですか〜!?

「そそっ、そんな!ミザールさん!問答無用って・・・・」
「駄目か?」
「いっ、いえ。その、嬉しい、ですけど・・・・」
「・・良かった。」

ミザールさんは微かに笑ってそう仰ると、流れ行く車を見ていらっしゃいました。ですけど、それからすぐに俯かれて目を閉じられてしまったんです!えぇっ!?どうしたんですか!?ミザールさん、大丈夫ですか〜!?
ようやく私もソフトクリームを食べ終えて、ミザールさんにお声がけしました。

「あっ、あの、ミザールさん!?大丈夫ですか〜!?」
「ん・・・悪い、だらしない所見せて・・・・」
「い、いえ。あの・・付き合わせてしまって、すみません・・・・」

・・ミザールさん、こちらにお昼寝しにいらしたって仰ってましたよね?今、少しだけ目を閉じられてたのも、それが原因ですよね?悪いことしてしまいました・・・・

「謝るな。あんたのせいじゃない・・・・ところで、これからどうするんだ?」

そういえば。もう並木道までお散歩しちゃいましたし、ミザールさんとソフトクリーム食べて随分和んでしまいましたし・・・・どうしましょうか。

「そうですね・・・・どうしましょうか。すみません、ミザールさん。私からお誘いしたのに、何も決めていなくて・・・・」
「・・構わない。あんたが何か決めるまで、ここで昼寝してるから・・・決まり次第、叩き起こしてくれ。」
「えっ!?あっ、は、はい。お休みなさいです、ミザールさん・・・・」
「あぁ・・お休み。」

そうしてミザールさんは、そのまま少し下に俯いてその目を閉じられてしまいました。瞑想なさっているようにも見えますけど・・・・今日は本当にポカポカ陽気ですし、ミザールさんが最初に仰っていましたけど、絶好のお昼寝日和なんですよね〜。
そ、それに・・・ここのベンチは丁度良い感じに、木の葉っぱが影を作っているんですけど、チラチラと木漏れ日が奇麗で、程よい暖かさになってるんですよね〜。う〜ん・・・せっかく眠ってらっしゃるミザールさんを起こすのも気が引けますし、何だか私も少しずつ眠くなってきちゃいました。ほんのちょっとだけ、私もお昼寝しましょうか!少しだけ寝れば頭がリフレッシュするかもしれません。
そう思って、私もミザールさん同様に俯いて目を閉じました・・・・ここの温度が、本当に丁度良いです。このままだと、すぐに寝てしまいそうです・・・・ポカポカしていて・・・気持ち、良いです・・・・・


  

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