26 「はい、もしもし?」 キャ〜ッ!!電話口から聞こえてきたお声はアトラスさんです〜!!お声だけ聞いてもアトラスさんって男性らしい低くて渋いお声してますよね〜。思わずアトラスさんの普段の格好良い姿も思い出してしまって、余計にドキドキしてしまいます。 「えぇっ!?く、くたばる、ですか!?」 わぁっ・・アトラスさん。私のこと、心配して下さってるんでしょうか?う、嬉しいです〜・・・! 「は、はい。ですけど、元気ですよ。」 どうしてそのようなことをアトラスさんが聞いて来られたのか疑問だったのですけど、私がそう返事をすると、アトラスさんがすぐに仰いました。 「今すぐ外に出て来れるか?出て来れそうなら、これから出かけるぞ。」 キャ〜ッ!これって、もしかしなくてもデートのお誘い、ですよね?わぁっ、ドキドキです〜! 「はい、のります!ご一緒させて下さい!」 ええぇぇっ!?アトラスさんが、すぐそこに!?確認したかったのですけど、親機で出てしまった私はそこを動けなくて、驚きながらアトラスさんに言いました。 「は、はい。あの、分かりました・・・・」 そうして電話が切れてしまいました。私はほんの少しの間あまりの驚きに何も考えられなくてボーッとしちゃったんですけど・・・・いけないです!こんな風にボーッとしている間に、アトラスさんをお待たせしていることになっちゃうんですよね!?私は慌てて洗顔の続きをしてから外出用のお洋服に着替えて、それから必要な物をバッグに詰めてバタバタと外を出ました。 「よぉ、スピカ。意外に早かったな?」 私が最後まで言葉が言えませんでした。たまたまそこにあった小石に、つま先が引っかかってしまったからなんです!体が前のめりに倒れることを感じた私は、転ぶことや怪我することを覚悟したのですけど・・・・その後私にきた衝撃は痛くないものでした。 「ったく・・もう少し落ち着け、おまえ。」 私は何も言うことが出来ませんでした。それは、アトラスさんを支えにしてしまったことへの罪悪感もあったのですけど・・・・もっと大きな理由は、アトラスさんの声音が優しかったことと、アトラスさんが私のことを抱き締めて下さったからです・・・・ 「電信柱の次はコレか?・・危なっかしくて見てられないぜ。」 そういえば・・アトラスさんに初めてお会いしたあの時、電信柱にぶつかりそうになった所を見られてたんでした・・・・そのことを思い出すと、一気に恥ずかしくなってしまって謝ることしか出来ないです〜・・・・ 「まぁ、おまえに怪我がなければ良い。それより突然呼び出したが、おまえ本当に男と無縁なんだな?一発でOKされるとは考えてなかったぜ。」 何となく悔しくなってしまって、私はアトラスさんにそう尋ねました。そうしたらアトラスさんは、いつもかけていらっしゃる色素の薄いサングラスを軽く持ち上げて言いました。 「あぁ、今の所はな。まぁ、仮に誰かからオファーが来ても、今日はおまえといるさ。」 私がそう返事をすると、アトラスさんはワイルドな、余裕の微笑を浮かべられました。いかにもアトラスさんって感じで魅力的です〜。 「それなら余計に好都合だな。それじゃ、行くか。おまえ、行き先は考えて来たんだろうな?」 ウゥッ。咄嗟に思い付いたとは言え、本当に私用なんですよね〜。大丈夫でしょうか・・・・ 「えぇ〜っと。CD屋さんなんですけれど・・・・」 それからはアトラスさんとゆっくり歩きながらCD屋さんまで行くことになりました。何だかお店にいる時より、アトラスさんが身近に感じられるのが嬉しいです。 「はい。私、オルゴールの音が好きなんです。」 ええぇぇっ!?アトラスさんの歌ですか!?キャ〜、聞いてみたいかもしれないです〜! 「本当ですか!?わ、私、アトラスさんの歌を聞きたいです!」 私はわがままを言ってしまいました。ですけど、アトラスさんの歌を本当に聞いてみたいんです!アトラスさんはルックスはもちろん、お声もカッコ良いのでラブソングとか歌われたら痺れちゃいそうです。 「フッ、スピカ。男に物をねだる時は、もう少し色仕掛けを使え。その状態だと全く心が動かんぞ?」 ウッ!!い、痛い所を突かれてしまいました・・・・自分でもよく分かっていますけれど、本当に私は色気とは無縁の世界にいますよね〜・・・ 「あ、は、はい。ですけど、私は色気なんて全然・・・・」 ギクゥッ!!わ、私、確かにお化粧は必要最低限のものしかしてないんですよね〜・・・・やっぱり、アトラスさんはよく見ていらっしゃいます・・・・ 「は、はい。頑張ります・・・・」 わぁっ!アトラスさんはとてもセンスが良さそうですし、実際沢山の女の方と交流があるでしょうから詳しそうですね〜。参考にしましょう! 「はい、ありがとうございます!それでは、CD屋さんの後に・・ですか?」 えぇっ!?そそっ、そんな!私は驚いて思わずアトラスさんの顔を見てしまいました。アトラスさんは私と目が合うと面白そうに笑いました。 「ハハハハハッ!何をそんなに驚いている?おまえは礼儀正しすぎるんだ、もっと砕けろ・・って、おまえに何度も言ってる気がするな。」 こうしてアトラスさんとお喋りして歩いている間に繁華街の方に来ました。ここに大きなCD屋さんがあるんですよ。 「はい、大丈夫です。本当にすみません、アトラスさん。私用なのに、ご一緒に来ていただいてしまって・・・・」 えっ?私は驚いてアトラスさんの方を見てしまいました。アトラスさんは私の驚いた顔を見るとすぐに付け足して下さいました。 「客の趣味とかを知っておくのは、俺たちの世界では常識だ。立ち会えるなら尚のこと良いだろう?」 あ、なるほど。そういうことだったんですね・・・・ウゥッ。私がレグルスさんの方に心傾いているのは確かですけど、アトラスさんは私のこと、本当に「ただの客」としか思ってらっしゃらないんですね・・・・ 「えぇ〜っと。確かこの辺だと思ったんですけど・・・あっ、ありました。」 私が今一番欲しかったCDなんです!すぐに見つけられて嬉しいです〜。 「フッ・・おまえはガキだなぁ、スピカ。本気で喜んでるだろう?」 アトラスさんにそう言われると恥ずかしくなってしまって、つい笑顔を引っ込めたんですけど・・・アトラスさんを見ると、アトラスさんは前髪をかき上げて仰いました。 「いや、今までおまえのようなタイプの客がいなくて面食らっただけだ・・・・それより、それ以上俺を見つめない方がいいぜ?」 私がそう聞くと、アトラスさんはフッと色っぽく微笑んでから私の耳元に顔を近付けて来られました!そして私が驚くより前に、アトラスさんは小さく囁かれたんです。 「さっきのおまえの表情・・・誘ってるようにしか見えなかったからな。」 わ、私、そんな顔してましたっけ!?驚いてアトラスさんを見ると、アトラスさんは私の持っていたCDをヒョイッと取り上げられてしまいました・・・・ 「それより、買ってきてやる。待っていろ。」 ヒャアッ!アトラスさんの表情というか、目元が怖いです〜!「逆らったら許さない」という感じでサングラスの奥に鋭く輝いてらっしゃるアトラスさんの目を見てしまった私は、申し訳なく思いながら従うことしか出来ませんでした・・・・ 「あ・・はい、分かりました。あの、すみません・・・・」 アトラスさんはそう仰ってから、私の頭に軽く手を乗せられました。そのことで私が驚いてアトラスさんを見ると、アトラスさんはワイルドに微笑まれてからレジの方に行かれたんですけど・・・・颯爽としてらっしゃって、格好良いですよね〜・・・・ 「ほら、スピカ。」 アトラスさんが、CDの入った袋を私に差し出して下さいました! |