第10話「翌朝の目覚め」

「・・・あ・・・・ここ・・は・・・・・?」

スピカは再度長い眠りから覚めたような感覚に捕らわれていた。
目を開けば、そこは・・・・つい何時間か前にも見た、同じ光景・・・・シャンデリアが灯る中、仮面をしている男女達・・・・皆楽しそうに踊っている・・・・その中で、自分は・・・・・?
その時背後にふと気配を感じて見れば、そこに立っていたのは紛れもない、スピカが今一番会いたかった相手であった。

「!あなたは・・・・」

そう、3年前、スピカと一緒に踊ってくれたあの男性である。その男性は微笑み、手招きして自分に着いてくるようにと誘っていた。
スピカはもちろん彼の後に着いて行った。そして着いた先は・・バルコニーだった。スピカはそこで、愛する男性に一杯のジュースを勧められた。

「いただきます・・・・・」

スピカが少し口に含み、飲み込んだと同時に・・・・眩暈が襲って・・・・・世界が、回り始めて・・・・・・・・・・




ピチピチ、チュンチュン


「・・・・ん・・〜っ・・・・・」

スピカはようやく現実に目覚めた。小鳥達の鳴く声しか聞こえない静かな朝。陽光が優しくスピカを照らしている。
気が付けば、スピカはちゃんと服を着ていた。ベッドが特に乱れている様子もなく、昨日の一夜の出来事がまるで嘘の様であった。
まさか・・昨日の出来事も全て夢なのではないだろうかとスピカは思った。あのレグルスという男も、全ては夢の中の出来事だったのかと・・・・・
だがそう思いたくても・・・・このベッドは確かに、昨日レグルスと一夜を共にしたベッドであり、この見慣れない家の装飾・・・・それはスピカを、再び恐怖に突き落としていた。
そして目線を変えれば、台所がある所に机と椅子が並べられていて、そこには食べ物のいい香りがしていた。
更に目線を変えれば、ベッドに一番近い席には銀髪碧眼の謎の美形男・レグルスがそこに頬杖を付いて、スピカをのことを見つめて座っていた。
スピカと目が合うと、彼は微笑んで口を開いた。

「やぁ、おはようスピカ。いい朝だね。」
「・・・・・・おはよう・・・ございます・・・・・」

スピカの機嫌はあまりいいものではなかった。少しムスッとした物言いでスピカはベッドから出たのだが、その途端下半身に鈍い痛みと重みを感じた。

「うっ・・・・・」

ついスピカは声を上げてしまった。

「おっと、大丈夫かい?スピカ。昨日は・・・・初めてなのにも関わらず、いきなりヤってしまったからね・・・・まだ痛むかな?」

レグルスはすぐさまスピカの所に行き、スピカの肩を抱いて優しくそう言った。
だが優しくされると、スピカはなぜだか不愉快になってしまった。昨日自分がこのレグルスに身を委ねてしまったことに自分自身一番腹が立っているのだが、認めたくない何かがあって結局はレグルスにその怒りを静かにぶちまけているのである。

「触らないで下さい・・・大丈夫です・・・・」

スピカはレグルスが自分の肩に置いた手をすぐに振り払い、テーブルの方を見てみれば・・・おいしそうな食べ物の香りが漂い、そこにはまだ作りたての食べ物が奇麗に並べられていた。
見栄えもいいし、この匂いだと味もおいしそうな感じがする。だがスピカはまだ起きたばかりで、あまり空腹感はなかった。
レグルスもスピカが何を見ているのか気づいたのか、すぐに教えてくれた。

「それは、私が作ったものだよ。お腹が空いたら食べてね。あぁ、それと洗面台とお風呂はあっち。トイレはこっちね。」
「・・・・分かりました・・・・あの、着替えは・・・・・・?」
「うん、そのことなんだけど・・・フフッ、もうすぐ客人がくるんだよ。その人に、おまえの服のことをお願いしておいたよ。」

とレグルスは微笑みながら言った。
まだレグルスのことをスピカはほとんど知らないが、常にこのような余裕ある微笑を浮かべている。それがまたサマになっていてカッコイイものだから反論出来ない。
普通の男がやったら「似合わない、カッコ付けすぎ。」で終わりそうな態度がレグルスがやるとなぜかとっても決まって見えるのだから不思議である。やはり彼は、明らかに普通の男とは違う魅力を持っている人なのだとスピカは改めて思った。
そうは思っても、やはり自分がレグルスと一夜を共にした事実を認めたくなかった。悔しくて・・・・・スピカは決めていたのだ。キスをするのも、初めて体を重ねるのも・・・・全部、あの人にやって欲しかったから・・・・
それが全て崩れてしまった。しかも自分は初めてなのにも関わらず、レグルスと体を重ねて快楽を覚えてしまった。キスまでせがんでしまった。
ほとんどがレグルスのせいであったが、自分もレグルスのすることに反応していたのは確かだったし・・・・やめて欲しくなかったのも、認めたくないが事実だった。

「私・・・・これから・・どうすればいいんでしょうか・・・・・」

レグルスに聞こえないように小さく呟き、スピカは少しフラつきながら洗面台の方に足を運んだ。冷たい水で顔を洗い、ようやくスピカは目覚めた感じを覚えた。
冷たい水が顔に心地良くて。何か色々複雑に考えてしまっていた自分がバカみたいに思えたが、それでも恐怖と絶望は拭いきれなかった。
手近にあったタオルはとても奇麗でふわふわで、あらかじめ用意されていることを考えると使っていいものなのだろう。そのタオルを拝借しながらスピカはふと現実に戻って考えた。

「レグルスさん、客人って仰ってましたけど・・・・私の服をお願いしたって・・どういうことなんでしょうか・・・・?」


  

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