第11話「レグルスの意外な一面」
スピカは再びレグルスのいる方へと戻っていった。
出来ることならあまりこの男と顔を合わせたくなかった。色々複雑な感情がスピカの中に入り込み、結局スピカは顔を下にしてレグルスが座っている隣の席に腰掛けた。
レグルスも特に声をかけてくることはなかった。ただスピカのことを心配そうな眼差しで、時折ひどく切ない表情をして見つめているだけである。
そろそろスピカも空腹感を覚え始めた。一応スピカは確認の為聞いてみることにする。
「あ、あの・・・・」
「ん?何だい?」
「この食べ物は・・・私が食べても・・・いいんですよね?」
「あぁ、もちろんだよ。そのために作ったんだからね。」
「・・・・毒入りですか?」
スピカのその質問に、レグルスは驚きながら一言こう言った。
「・・・入れて欲しかったのかい?」
「そんなことありません!!!ただ・・・あなたは犯罪者だから・・・・」
「・・・・確かにそうだね。でも私は、愛する女性に毒なんて入れたりしないよ。そんなことをして何の得になるというんだい?」
最もなことではあるのだが、この男がなぜ自分のことを「愛している」などと言うのかがさっぱり分からない。
「・・・・あなたは・・なぜ私のことなど愛していらっしゃるのですか?私とあなたは、面識なんてないんですよ?」
「・・・・おまえになくても・・・・私にはあるんだよ。」
「・・分かりません・・・・あなたと私がいつどんな形で出会ったというんですか?」
「そうだね〜、どんな形だったんだろう?」
「・・・謎かけですか?」
「フフッ、どうだろう。でもまぁ、それほど気にすることでもないと思うけどね〜。そんなの、些細なことだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
「全然些細じゃないです。」という突っ込みがスピカの心の中にあふれ出したが、スピカはそれを心の中だけに留め、冷めてしまうのももったいないのでテーブルに上がっている食べ物をいただくことにする。
ラインナップはトーストしたパンにいちごのジャムがのっているもの、ハムエッグにレタス、コーンスープにココア・・・・といったものであった。
一見地味に感じるのだが、どの食材にも新鮮さが漂っている。スピカはいちごのジャムパンを最初に食べた。
「・・・・おいしい・・です・・・・・」
それにはもちろん毒なんて入っていなかった。純粋においしかった。パンはもちろん、いちごのジャムも洗練された味である。文句などなかった。
「フフッ、ありがとう。そう言ってもらえると素直に嬉しく思えるよ。全て私の手作りだからね。」
「あの・・・・全てと言いますと・・・・」
「ん?そのパンも、いちごのジャムも、私の手作りだよ。」
「えぇっ!?パンや、ジャムまで最初から作ってるんですか!?」
「そうだよ。フフッ、そんなに驚かれるとは意外だね〜。これでも私は、料理は得意分野なんだよ。」
これにはさすがのスピカも驚いた。ここまでこだわって始めから作る人などそうそういるものではない。
しかもこのレグルスに関して言えば、眉目秀麗なルックスとのギャップも激しかった。だから余計にスピカは信じられなかった。
あるいは農家で一人暮らしでもしているのだろうか。どうも彼を見ている限り、高貴な雰囲気が漂っているからスピカは何か誤解をしているのかと思いつつ、ますますこのレグルスという男が分からなくなっていた。
あまりにも謎が多すぎる。聞いた所でまともに答えてくれることもないだろうし・・・・と困り果てていた所で、突然外からこの家のドアがバンッ!と開かれた。
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