第12話「突然の嵐」

「あぁ〜っ!!!も〜う疲れちゃったよ〜。はいはいお邪魔しますよ〜。」

何事かと思えば、突然この家の中に入ってきたのは、1人の金髪碧眼の女性であった。
やたら大きい紙袋を両手にそれぞれ2つ、計4つ持っていて、大またでドスドスと家の中に上がってきた。

「フフッ、いらっしゃい。約束の時間より少し遅かったね〜。手間取っていたのかな?」
「も〜うそりゃ手間取るっつの〜。何なのさ〜、あそこのオヤジったらさ〜。いきなり「これもありますよ〜」とかやれ「これもどうですか〜?」とか言ってぜ〜んぶあたしに持たせるんだも〜ん。も〜うマジ限界。かよわい女にこのクソ重い荷物遠い所まで持たせたんだからさ〜、何かおごってよね〜?」
「アハハハッ、分かっているよ。今丁度、シナモンティーを作っていた所でね〜。」
「あマッジ〜?ふ〜ん、たまにはやるコトやるじゃな〜い?な〜に?それともやっぱ、大好きな女の子の前ではイイとこ見せておきたいワケ?これだから男ってのは全く・・・・」

スピカは完全にこの女性の言動に圧倒されていた。飲もうと思って握ろうとしたココアへの手の動きが完全に止まってしまっていた。
何なんだろうか?この女性は。察する限りレグルスの言っていた「客人」とは彼女のことなのだろうとは思ったが・・・・そしてこの大きい紙袋の荷物こそが、自分の着替えだと言うのだろうか?
何だかよく分からないけど申し訳ないことをしているのではないかとスピカは思いながら、目はこの女性のことを追ってしまっていた。
この女性はスピカの向かい側の椅子にドカッと座り込み、頬杖をついてレグルスの方を何やら陰険な目つきで見ている。
その女性がレグルスの方を見ているのでスピカもレグルスの方を見てみれば、沸かしていたポットらしきものの火を消し、ティーカップに注いでいた。シナモンの独特の香りが家の中をやわらかく支配する。

「ほら、まずはこれをどうぞ。」
「ンッフフ〜、サ〜ンキュ♪やっぱこれがなきゃね〜。フ〜ッ。フ〜〜ッ。ズズズズズズズッ。」

思いっきり音を立ててこの女性はレグルスが手渡した淹れ立てのシナモンティーを飲みだした。
スピカはもう完全に圧倒されていて苦笑いを浮かべてしまっていた。何なんだろう、この豪快な飲みっぷりは。見た目はなかなか美人な女性なのに・・・・やっていることが何か違う気がする・・・・・・・
そんなスピカの様子をレグルスは察したのか、レグルスは苦笑して口を開いた。

「フフッ、紹介が遅れてしまったね。彼女は、私の姉のアルビレオだよ。」
「えっ!?」
「ズズズ・・・あ〜っ、レグルス〜!!あたしが今言おうと思ってたコトをゆーなんて最悪〜!!!自己紹介位自分でするわよ全く〜。だからあんたは引っ込む!!!女の子同士のたわいない時間邪魔するなんてそれ敵同然なんだからさ〜!!」
「あのね〜姉さん。いつから私が姉さんの敵になったのかな〜?」
「常にそーでしょが。あんたは女にとっての敵!敵よ!!!ね〜ぇスピカちゅわ〜ん?」
「えっ?えぇっ!?」

完全に圧倒されてしまっていたスピカは、明かされる真実と再び名前を知られていたこと、更には突然話題を向けられたことで驚きが最頂点に達していた。
一方のレグルスもお手上げと言ったそぶりで両手を広げ、困った表情をしている。

「っとと・・・改めましてスピカちゃん、初めまして〜♪超出来損ないの弟が悪さ一杯しちゃってると思うんだけどゴメンね〜?でもあたしも・・今回こいつに協力しちゃってるから、いわば共犯になっちゃうのかな〜?アルビレオだよん♪時々ここに来ると思うからさ〜、これからよろしくね〜?スピカちゅわ〜ん。」

アルビレオはそんなレグルスやスピカに構わず自己紹介をし、スピカに手を差し出してきた。

「えっ!?あ、あの、はい・・・・スピカ、と申します・・・よろしく、お願い致します・・・・」

とスピカもまだ訳が分からないまま自己紹介をし、アルビレオと握手を交わした。

「ンッフフ〜。ねぇねぇレグルス〜。マジ可愛いねこの子〜。何となくあんたがこの子のコト好きだって言ってるの、分かっちゃう気がするな〜。」
「それはそうだろう?私が一番愛している女性なんだから。」
「アッハハハ〜!!それもそーだよね〜!!うんうん分かる〜。あたしももし男だったら、スピカちゃんみたいな子やっぱタイプだも〜ん。」
「フフッ。まぁそこえら辺が、私と姉さんの血のつながっている証拠かな・・・・?」
「ホントは認めたくないけどね〜、あんたとの血縁関係なんて〜。あ、でもあんたみたいなヤツ恋愛対象になんてしたくないから、そーゆー意味では良かったかも〜。」
「フフッ、私も姉さんに同じかな?」
『アハハハハハッ!!』

2人でハモって大笑いしている所を見ると非常に仲が良い姉弟らしい。スピカはそれまで突っ込みたいことが一杯あったのだが、何だかここまで大笑いされて仲の良さを見せられると自然とスピカにも苦笑いがこぼれてしまう。
スピカは一人っ子だから、余計に他の家族の姉弟を見ていると、自分も楽しんでいる筈なのに、どこか無視された気持ちがあって心に空洞が出来ている感じだった。
実際今もそうだった。突然現れたこのアルビレオというレグルスの姉は、恐ろしい程にすぐその場に溶け込み、盛り上げさせている。更にはレグルス並の独特の魅力を持っているアルビレオにスピカは引き付けられた。
何なんだろうかこの姉弟は。本当に不思議な魅力を持っている人達なのだなぁ〜とスピカは思うのだった。


  

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