第13話「しばし平和な空間」
「あぁ、それで姉さん。頼んでいた例の件だけど・・・・」
「あぁ〜、ん〜。そこの紙袋4つがそれね。合計20着でお値段50万!!ん〜、我ながらナイスな買い物だったわ〜。あ〜これもおいし〜!!モグモグモグモグ・・・・・」
レグルスはそれから用意していた軽食をアルビレオに出していた。アルビレオはそれをこれでもかという勢いでガツガツと食している。
スピカはもうただアルビレオの異様なハイパーさに圧倒されるばかりで、持ちかけているココアがまだ飲めていない。
「フフッ、ありがとう。それより、お金の方は急がないんだろう?」
「・・は?そりゃまぁそーですけど?別に急いだ所で何があるワケでもないし。いいよ、無利子で長期間待ってあげるから。特別にね。」
「さすがは私の姉さんだね。物事をよく分かっている。」
「ゲッ、あんたに誉められるなんてそうそうないコトだから・・・・明日は雪かな?こりゃ・・・」
「おや姉さん。失礼なことを言ってくれるね〜。私はこれでも姉さんには深く感謝しているんだよ?」
「あぁ〜そりゃも〜う感謝してくれなきゃ困っちゃうわよ〜。んでなきゃこんなコトわざわざしないっつの。ってあ、それよりスピカちゃ〜ん。どしたの〜?動き止まっちゃってるけど大丈夫〜?」
と、アルビレオはスピカの方に目を向けて、フォークを口に入れたままそう尋ねた。
「えっ!?あ、は、はい!大丈夫です・・・・」
スピカは突然のことで驚いたものの、ようやく手足が動いたような感覚に捕らわれながらココアをいただく。
「フフッ、最初は誰でもそうなんだよ。この姉さんの雰囲気に誰もが呆然としてしまって、何も出来なくなってしまうんだよね。」
「あ、ひどーい!あたしをまるで怪物扱いするなんてさ〜。」
「おや?姉さんは怪物ではなかったのかな?」
「うっわ、最悪に失礼なんだけどコイツ。どこからど〜う見てもこのかよわい女がよ!?ど〜こが怪物よ!!ねぇスピカちゃ〜ん?」
「えっ!?え〜っと、あの〜・・・・」
突然話題を振れられてもスピカは困ってしまうばかりであった。苦笑いをしてスピカはレグルスとアルビレオを見る。
「フフッ、スピカ。ためらうことなんてないんだよ。正直に言ってみてごらん?「怪物並にスゴい」って・・・」
「えぇっ!?」
「こぉ〜らレグルス〜!!変なことスピカちゃんに叩き込まな〜い!!大体何よそれ〜。それならあんただって怪物でしょが〜。」
「フフッ。それはもちろん、私は常に女性を追う獣であることは確かだけどね〜。」
「自負しちゃってるよコイツ・・・・あ〜ヤダヤダ。これだから男ってのはね〜。ね〜?スピカちゃ〜ん?」
「えっ!?あ、え、えっと・・・はい・・・」
スピカは最後小さく返事をする。
「ほぉ〜らスピカちゃんも認めた〜!!あんた嫌われてるね〜。」
「フフッ、いいんだよ。それじゃあスピカ。今日もマッタはなしで抱かせてもらうよ。いいね?」
「えっ!?」
「あ〜あ・・こぉ〜のフケツ野郎・・・・」
レグルスはアルビレオが呟いた言葉などまるで無視して、スピカのことを妙に色気のある視線で見つめる。
スピカはもう困ってしまって苦笑いするしかなかったが、実際心の中はとても怖かった。
「あ、あの、レグルスさん・・そ、そのすみません!!ですから今日は・・・・」
「おやおや、前言撤回とは・・別にいいんだよ。ただ・・言ったことは・・戻らないんだよ?」
「う・・・・・・・」
今にも涙目で泣き出しそうなスピカを、レグルスが優しく抱き締めた。
「あ〜あ、完全に酔っちゃってるよレグルス・・・バッカじゃないの・・・・」
と、アルビレオが冷たい目で見ていても、レグルスは敢えて無視してスピカを抱き締めている。
スピカは苦笑しつつ、怖さも伴いながら複雑な感情を抑え切れなかったのだった。
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