第26話「編み物中に・・・」

スピカの逃走事件から4日後、あの雷のあった日の3日後のことであった。
昼食を食べ終えたレグルスとスピカであったのだが、スピカはその昼食を終えてから部屋に戻っていた。そしてクローゼットの中から取り出したのは、編み物のセットであった。
実はこれ、元からクローゼットの中に入っていたもので、レグルスにそのことについて聞いてみたら「アルビレオが最初から入れているものだから自由に使っていい」とのことだったので最近のスピカの趣味となってしまっていた。
元々スピカは内向的な面があったから、外で動くという活発系ではなかった。家に引きこもり状態が多く、バラの菜園なんかも自分で面倒を見ていた位だし、外に出るとしてもやはり大好きなお花に水を与えたり肥料を与えたりする程度のことだったから、家の中でもう1つリラックスして出来ることが、この編み物だった。
かと言って実はスピカはそれほど器用ではない。針と糸を持たせるとすぐに怪我をしてしまう方だったし、実際今編んでいるこの編み物も決して奇麗な編み目とは言えない。料理もあまりスピカは得意ではない。だから正直言ってレグルスのあの器用さには驚いているのだ。
何をやらせてもレグルスはサマになっているし、うまかった。スピカはそんなレグルスを尊敬していたのだが・・・・・・

「何でレグルスさんってあんなにエッチなんでしょうか・・・・」

とボソッと呟きながら昨日からの続きをしようと編み始めた時であった。

「おやおや。エッチで悪かったね。」
「!!!!レ・・レグルスさん!?」
「アハハッ。いやぁ〜、ノックしても返事がないから勝手に開けてしまったよ。いるならいると言ってくれればいいのに。しかも、私の文句を言っていて現実を見ていなかったとはね〜。どういうことだい?」
「あ・・・そ、その、すみません、レグルスさん・・・・・」

確かにレグルスに対して物思いに耽っていたのは事実だったので、スピカは素直に謝った。

「フフッ、なんてね、まぁいいよ。それより・・・それは最近のおまえの趣味かい?」
「え?あ、はい、そうなんですよ。すっごく下手なんですけれど・・・・」
「ふ〜ん。まぁ・・確かに編み目が均等ではないね〜。」
「うっ・・・・」

一目見ただけで言い当てられるとやはり言葉に詰まってしまうし、ましてレグルスが編み物方面に明るい人間だとは思えないし・・・スピカはショックを受けてしまっていた。

「アハハハッ。ちょっときつかったかな?ごめんごめん、許してね?けれど、いくら何でもこれはちょっとひどくないかい?スピカ。ちょっと貸してごらん。」
「あ、は、はい。」

実際編み目がかなりチグハグだったのは曲げようのない事実だったので、スピカは半分諦めていた。それで素直にレグルスに棒と糸を差し出したのだが・・・・・
レグルスはスピカの隣に座り込み、器用に手早く編んでいった。スピカは思わず目を見張ってしまっていた。とても早い動きで無駄がない。
おまけに編み目は全て均等であるし、奇麗なのは言うまでもなく、レグルスの真剣な横顔もとてもカッコ良くて・・・・・スピカは完全に見入ってしまっていた。
レグルスは3段ほど編み終えて何か物足りなさそうな表情をしながらスピカに編み物をバトンタッチする。

「まぁ、こんなものでどうだい?」
「あ、はい・・・・その・・レグルスさん、本当にお上手ですね・・・・」
「フフッ、まぁね。しかし私には今一物足りないかな?単調な作業で疲れてしまうね〜。」
「あ、はい・・それは確かに・・・ってレグルスさん・・まさか、編み物始めてやった・・とか言いませんよね〜・・・?」
「ん?そうだね〜。まぁ・・幼い頃に姉さんに無理矢理1度やらせられた位かな?私は嫌だったんだけど、姉さんがうるさくてしつこくてね〜。まぁでも、今はその時やって良かったと思うよ。おまえにこうして見せられたからね。」
「あ、は、はぁ・・・・・」

幼い頃、とは・・今一よく分かりにくいが、つまりは何十年ぶりにやった、と考えていいのだろう。しかも2回目でこの驚異的な均等に揃った奇麗な編み目・・・・手つきも完全にプロ並だった。
スピカは半分レグルスのことを恨んでしまったが、それでもこのレグルスの多才ぶりはスピカも分かっていたことなので、敢えてその恨みやら怒りやらを押しやり、レグルスを複雑な眼差しで見ると同時に、最終的には尊敬してしまっていた。
と、スピカの膝がいきなり重くなったので何があったのかと見てみれば、ちゃっかりレグルスがスピカの膝を枕にして横になっているではないか!!スピカの驚きはもちろん尋常ではなかった。

「レ、レグルスさん!?」
「あぁ、スピカ。ちょっと膝を借りるよ。」
「えっと・・ええぇっ!?」
「慣れないことをして、少し目が疲れてしまったよ。休ませてもらえるかな?」
「あ、は、はぁ・・・・」

スピカは顔を赤くしてしまっていた。これは・・・・ひょっとしなくても膝枕をしているのだとスピカは気付き、更に顔を赤くしてしまっていた。編み物の方もレグルスが気になってしまって進まない。
レグルスはスピカのことを、いつもの余裕ある微笑を浮かべて見つめている。余計にスピカの作業は進まない。

「レグルスさん・・そんな、見ないで下さい・・恥ずかしいです・・・・」
「おや、どうしてだい?フフッ。こんなに可愛い顔を見ないなんて、もったいないよ。」
「そ、そんな・・レグルスさん・・・・」
「フフッ、おまえは常に一生懸命だね。ところでその編み物は、最終的には何になるのかな?私へのプレゼントかい?」

レグルスに言われてスピカはハッとなる。こんな下手な編み目ではレグルスにあげることなんて出来ない。
いや、別にレグルスに今作っているものをあげようとは毛頭思ってないのだが、今後レグルスに何か編み物のプレゼントをしたいと密かに思っていたのは事実だったので、スピカは思いっきり困ってしまっていた。

「ち、ちち、違います!!これは、ただの趣味です・・・・」
「ふ〜ん、もったいないね〜。もしマフラーとかセーターにするのなら、私がありがたくもらうのに・・・・」
「・・・そんなこと言うんでしたら、違う方にあげちゃいますよ?」
「おやおや、冷たいね〜、おまえは。私はこんなにおまえだけのことを想っているのに・・・・」
「本当ですか・・・?以前市場ですっごい奇麗な女の人お2人いらっしゃってたじゃないですか・・・・」
「あぁ、あれはね。その場限りの女性達だよ。」

とレグルスは言うが、あの女性達へのレグルスの言葉遣いを考えるとそんな風に思えなかった。だがそんな文句を言った所でどうせまたレグルスにうまく誤魔化されるだろうと思ったのでやめておいたのだった。


  

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