第29話「秘密の会話・後編」
「私がその方と初めてお会いしたのは、どこかの国であった、3年前の仮面パーティーでのことだったんです・・・・私、仮面を付けていて、右も左もよく分かっていなかったものですから・・・・その時に、フラフラになっていた私を助けて下さったのが、その方でした・・・・本当に、とっても素敵な方で・・優しくて・・・・更にその方は、私に約束して下さったんです。「また会いたい。つか必ず一緒になりましょう。」って・・・・それで私、ずっとその方を信じて待ってるんです・・・お顔は仮面でもちろん分かりませんし、お名前も、どんなご身分の方なのかも分からないのですけど・・・・私はずっと、あの方を一番お慕いしています・・・・誰にも、この気持ちは譲れないんです・・・・」
という訳でスピカは簡単にその内容をアルビレオに話して聞かせた。さすがのアルビレオも少し難しい顔をして考え込んでいたが、それからすぐに笑顔になってスピカに言った。
「ありがとスピカちゃん!貴重なお話聞いちゃったね!」
「い、いえ、そんな・・・・」
「でも、それだけあたしのコト信頼してくれてるんでしょ?あたし嬉しいわ〜!!それだったらさ〜、何かスピカちゃんも色々気になってるコトあるだろーから、あたしでよければ答えてあげるよ♪あいつの女性遍歴についてとかさ!」
とアルビレオに言われてしまうとスピカはやはり気になってしまった。スピカは早速その話に乗ることにする。
「あ・・そういえば、気になります・・・実はこの間、アルビレオさんと外でお会いした時ありましたよね?」
「ウンウンあったね〜。」
「あの時レグルスさんの所に、奇麗な女の方、2人いらっしゃったんです・・・・それで私、逃げ出すことが出来て・・・」
「あ〜。ん〜・・それってつまり、娼婦なんじゃないの?」
「えっ?」
アルビレオの思ってもいなかった発言にスピカは驚いてしまった。アルビレオは手をパタパタと振りながらスピカに言った。
「だ〜いじょうぶだって。全っ然、スピカちゃんの敵にもなりえない人達だね。気にする必要全くないって☆」
「あ、あの、ですけど・・・レグルスさん、すごく嬉しそうでしたよ・・・?」
「そりゃ〜アイツ女の子大好きだからね〜、女の子が寄ってくれば喜ぶって〜。で〜も、スピカちゃんとは全然違うね!ん〜、何って言えばイイかな〜?今まであたしアイツのことずーーっと見てきたけど・・・・ここまでアイツが本気になって恋してる女の子は、スピカちゃんが初めてだよ?」
「えっ・・・・?ほ、本当・・ですか?」
「うんホント〜☆むしろあまりの熱の入りようにあたしが驚いてる位なんだからさ〜。あげくあたしにこーして協力要請は出してくるでしょ〜?いかにアイツがスピカちゃんに命賭けてるのかよぉ〜っく象徴してるわよ。」
「あ・・は、はい・・・・」
そう言われてスピカが嬉しくない訳がなかった。もちろん仮面パーティーの例の男性が一番なのは揺るがないが、レグルスもあの時の男性に負けない位スピカが好きになってしまっているのは確かだったので、余計に嬉しかった。
「ンッフフ〜。あいつはそーゆーコト全然スピカちゃんに言わないだろーから分からないと思うけど。あいつホント、女の子には誰にでも嫌味な位優しいんだけどさ、スピカちゃんへの優しさは本物!それは姉のあたしのお墨付きだよ♪」
「アルビレオさん・・・・」
「あ、でもスピカちゃんはその仮面男の方が気になってんでしょ〜?う〜ん、どこの国の仮面パーティーか分かれば苦労はしないんだけどね〜・・あ、でもこのフェラールの仮面パーティーは結構有名だよ?」
「えっ?」
これまた思ってもみなかったことを言われてスピカは驚いてしまった。
「ンフフ〜ッ。仮面パーティーに力入れてる国なんてそうそんなにないだろーしさ〜。あたしの知ってる限り、ここはなかなか仮面パーティーの聖地としては有名だよ♪いつも建国祭の時にやるんだよね〜仮面パーティー。んだからもしかしたらだけど・・・スピカちゃんの探してる仮面男、この国にいるんじゃない?」
「!!!・・・・それ・・本当、ですか?アルビレオさん・・・」
「ん〜、スピカちゃんの記憶も曖昧みたいだから何とも言えないけどさ☆ただまぁ・・・仮面パーティーと言われればこの国の人達は大体反応するよ♪あ、んじゃあさ〜、ついでに聞くけどさ〜、その仮面男の髪の毛の色とかは覚えてないワケ〜?」
アルビレオにそう言われて、気分を最高に高ぶらせてスピカは記憶をまさぐってみたのだが、そんなハイテンションの時にはまともにうまくいく訳もない。
ただでさえよく覚えていないのだ。ただその仮面の男性があまりに神がかり的に美しかったこと以外は。
「・・すみません、よく覚えてないんです・・・・」
「う〜ん。髪の毛が長かったとか短かったとかは〜?」
「え、え〜っと〜・・・どうだったんでしょうか・・・・?あれは・・長かったのか、短かったのか・・・」
「あ〜らら、ダメみたいね〜。この国もそれなりに人は多いからさ〜・・仮にこの国のヤツだとしても、それでも何千何万もの男の中からそいつを探し出さなきゃいけないんだから・・・・こりゃハードだわね・・・・」
「は、はい・・・あの、ですけどアルビレオさん。私、すごく元気になれた気がします。憧れの方が、もしかしたらこの国にいるのかもしれないと思うと、私・・嬉しくて・・・・」
「アハハッ、でも確証は全くないんだよ?スピカちゅわ〜ん。ん〜・・もう少しスピカちゃんが何か覚えてるんなら力になってあげれそーなんだけどね〜。」
「あ、はい・・・・」
そうしてスピカは再びあの時のことを考え出そうとするが、先ほど同様この気分が高揚してしまった状態では常よりまともにうまくいく訳がなく、あの仮面の男性を思い出しては消え、思い出しては消え・・の繰り返しだった。もちろん結果的には何も思いだせない。
「・・やっぱり、ダメです・・・何にも、思い出せません・・・・・」
「ン〜。ま、そんなにあせる必要ないって!ゆっくりでイイんだってば。ンッフフ〜、まぁ・・・スピカちゃんが今のまま信じ続けてれば、きっと会えると思うよ♪ウン、これあたしの予言ね!」
「あ・・は、はい。私、何だかアルビレオさんに言われると、自信持てちゃいます!私・・ずっと信じてます。今までもずっと待ってましたから。あの方の為なら・・ずっと待てます・・・・」
とスピカは言って、胸に手を置いて改めてそう誓った。アルビレオはそんなスピカを見てちょっと複雑な微笑を浮かべている。だが今のスピカはあの時の仮面の男性のことしか頭になくて、そんなアルビレオの表情を見てはいなかった。
と、その時ドアがノックされ、レグルスが姿を見せた。
「やぁ、お待たせ。パフェが出来上がったよ。食べにおいで。」
「ウオーーッシ!!やったー!!そんじゃスピカちゃん早く行こ行こ!」
「あ、は、はい!」
そうして1階に下りていった3人であった。
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