第37話「初の謁見」
準備を終えたレグルスとスピカは、いよいよ国王ラグリアがいる城のほうに移動していた。
あまり治安が良くない国なので、2人は手をつないで歩いている。はたから見れば美女美男のカップルと勘違いされる勢いである。
「レグルスさん・・・・私、緊張してきちゃいました・・・・」
と、スピカは少し顔を赤くしてレグルスに言った。レグルスはそんなスピカを見て複雑な微笑を浮かべた。
「フフッ、そうかい?まぁ・・恐らく本人を目の前にしたら、もっと緊張するかもね・・・」
「えっ?そうなんですか?」
「そういうものだよ。と・・着いたね。ここが城門前だよ。さ、ここから先はおまえ1人で行くんだよ?」
「あ、はい。えっと・・レグルスさん、ここで待っていて下さるのですか?」
「ん?・・ほら、すぐそこにちょっとした公園があるだろう?そこで適当に待っているよ。」
「あ、はい。分かりました。それではいってきます!」
「あぁ、いってらっしゃい。」
ということでスピカはドキドキしながら先へと進んで行った。立っている兵士さんに少しビビりながらもスピカは確実に先に進んでいる。
レグルスはそんなスピカの後ろ姿を見送り、スピカの姿が完全に見えなくなってからため息をつき、どこか悲痛な面持ちで公園の方へ歩いていったのだった・・・・・・・・
とうとうお城の中に入ったスピカは驚いてしまった。この中の広さ、奇麗さ。とても大きく豪華なシャンデリアが高い天井の上から下がっている。
すぐ目の前には大きい階段があり、ここを上に上がるとどうやら国王ラグリアのいる謁見の間につながっているらしい。
スピカはゴクリと唾を飲み込んでから、ゆっくりと一歩一歩階段の方へと歩いていった。既に緊張しすぎて口から心臓が飛び出そうな勢いである。
ゆっくりと階段を上り、そしてたどり着いた先にいたのは・・・・・・そう、そこに彼はいた。だがその前に階段の前で待っていた兵士に呼び止められる。
「お待ち下さい。ラグリア様へのご用件は?」
「えっ!?えっと・・その・・・・お、お話を・・したくて・・・・」
スピカは突然のことで驚いてしまった。
兵士は顔を真っ赤にして驚いているスピカを見て取り敢えず悪者ではないと判断したらしく、「分かりました。」と言って国王ラグリアがいる方を手で案内した。通って良いということらしい。スピカはお辞儀をして少しずつ歩き出した。
中央にラグリアが座っているのが分かる。キリッとした眼差し。少し怖い感じの面持ちにも思えたが本当に端整な顔立ちでスピカはドキドキしてしまっていた。
スピカはとうとうラグリアの前までやってきた。膝を付き、その場でお辞儀をする。
「・・顔を上げるが良い。」
とラグリアから声がかかった。すごく高貴な声である。スピカはゆっくりと顔を上げてラグリアを見た。
本当にラグリアは眉目秀麗だった。こんなに素敵な男性を間近で見れて、スピカは本当に感動してしまっていた。
この人こそがこのフェラールを治めている王様なのである。まだ若い感じがするのに本当に素晴らしいと思ってしまった。
「・・私に何か用か?」
「あ、はい・・・あ、あの、えっと・・・その・・・・」
「用件は簡潔に述べよ。余計な言葉はいらぬ。」
「あ、はい・・その、すみません・・・・わ、私は・・・・えっと・・・・・・」
スピカは言葉に詰まってしまった。レグルスとアルビレオが言っていた通り、何か厳しい雰囲気を放っているラグリアにスピカは圧倒されてしまっていた。
それでスピカは怖いと思ってしまった。レグルスやアルビレオが言っていた「厳しさ」と「怖さ」を身を持って実感したのだ。
「何だ。満足に言葉も話せぬのか?」
「あ、え、えっと、その・・・違います・・・・えっと、その・・・・」
「あせらずとも良い。ただ用件を述べよと言っている。」
「あ、は、はい。えっと・・・・・それでは、あの・・・唐突に、お聞きしますが・・・・ラグリア様は、私のことを・・ご存知でしょうか・・・・?」
「?・・・・・知らぬな・・・そなたのような者を見知った覚えはない。私とそなたは初対面ではないのか?」
と、ラグリアが複雑な表情をしてスピカにそう言った。だがスピカはそう言われても何とか頑張ってみた。
「え、えっと・・・・あの、こちらの王国では、仮面パーティーが有名だとお聞きしました・・・・」
「・・そうだな・・・年に1度、建国祭の折に大々的な仮面パーティーを催している・・・・・そこで、私とそなたが会ったと言うのか・・・・?」
「その・・・・私にも、よく分からないんです・・・・本当に、ここの王国の仮面パーティーだったのかも分からないのですけど・・・私、3年前に、仮面パーティーに出たことがありまして・・・・その時、ラグリア様に似た方と、ご一緒した記憶があるんです・・・・」
「・・・・3年前・・か・・・・?」
「は、はい・・・・・」
そうしてしばしの沈黙。ラグリアが何か考えているようで、口元に手を置いていた。スピカは自分の言いたいことが言えたので、ラグリアのつむぎだす言葉を待つしかない。
その場にいた兵士達も顔を見合わせてはヒソヒソ話をしていることがスピカにも分かり、場を混乱させてしまったのではないかとタジタジになってしまう。
果たして、結果はどうなのだろうか・・・・・・・・・・
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