第39話「嫉妬」
城から出たスピカは、城門のすぐ近くにある公園の方に行った。そこでレグルスと待ち合わせていたからである。
この公園には非常に大きな木があり、日差しを避けるには丁度良い役割をしていた。そこで涼んでいる人は数多く、その中にレグルスの姿もあった。
小さな本を手に取り、眼鏡をかけて読書している。レグルスは眼鏡が本当によく似合う。スピカはまた見惚れてしまっていた。
声をかけてはいけないような衝動に駆られてしまい、そのまま立ち尽くしてしまっていたのだが・・・突然レグルスとスピカの目が合ってしまい、スピカは驚いてしまっていた。
「フフッ、戻ってきたならそう言ってくれればいいのに・・・・どうして黙って立っていたんだい?」
と、レグルスはそこにスピカがいたのを分かっていたように声をかけてきた。スピカは返答に困ってしまった。
「え、え〜っと、その・・・・」
「それより、国王様はどうだったんだい?おまえの探していた男とやらだったのかな?」
と、レグルスはゆっくりと眼鏡を外しながらすぐに話題を変えてくれた。スピカは「良かった〜。」と心の中で思いながら返事をした。
「えっ?あ、えっと・・・違いました・・・・あ、あの、ですけど・・・・ラグリア様が、「また来てもいい」って仰って下さったんです!」
「へぇっ?あのラグリアがかい?」
「はい!えっと・・ミャウさんという子猫さんと、仲良くなってきました!」
「・・・へぇ〜・・・・あの子猫、確か人見知りが激しかったんじゃなかったかな〜?」
「えっ?レグルスさん、ご存知なんですか?」
「ん・・・?あぁ・・・まぁ、それなりにあの子猫も有名な存在なんだよ。」
「そうだったんですか〜、知らなかったです〜。」
「フフッ・・・・それじゃあ、帰ろうか。スピカ。」
「あ、はい。」
そうして2人は手をつないで帰路についたのだった・・・・・・・・・・
何事もなく家に着いたレグルスとスピカであったのだが・・・・家に着いてドアを閉めたと同時に、レグルスはスピカを抱き寄せ、その唇に自分の唇を重ねた。
「!・・・」
あまりに唐突のことでスピカは驚いてしまったが、レグルスは更に舌を入れてきた。2人の舌が絡み合う。
「ん・・っ・・・!レ・・レグルス・・さん・・・?」
「・・スピカ・・・もう、私は我慢出来ないよ・・・・おまえのその美しさは、あまりにも罪すぎる・・・今すぐ抱いてもいいかい?」
「えっ?」
「・・・それから、ラグリアに対する嫉妬の念も渦巻いていてね・・・・このままおまえを抱かないと、私はどうかなってしまいそうだよ・・・・無理矢理にでも、おまえを抱くからね。」
「えぇっ!?」
スピカはもう驚いてしまってどうしていいか分からなかったが、レグルスは有無を言わさずスピカを抱き上げ、ベッドに横にさせた。すぐに自分も覆いかぶさり、スピカの服を脱がせ、自分の服も脱ぎだした。
「やっ!待って下さいレグルスさん!私、まだ・・心の準備が・・・!」
「そんなのいらないよ。強姦するんだから。」
「ええぇぇ〜っ!?そ、そんなレグルスさん!困ります、私!そんな・・強姦だなんて・・・・」
「フフッ。まぁ元々、私はずっとおまえに強姦しかしてないけどね。」
「!・・・レグルスさん・・・・」
「今日はいつもより、キスマークを多くしてしまおうかな・・・?あぁ、それとも・・強姦なんだから、縄で縛った方がいいかな?私から逃げられないようにして・・・・」
「やっ・・!嫌ですレグルスさん!そんなこと・・嫌です!!」
「どうして・・・・?だってそうでもしないと・・・おまえは私から逃げ出すだろう?そして・・ラグリアに会いに行くんだろう?おまえの探していた男でもなかったのに・・・・おまえはラグリアの話をすると、途端に笑顔になるよね・・・・でも今は・・私のことしか考えられなくなるようにしてあげるよ・・・・」
「やっ・・いやっ・・・!レグルスさん・・・!」
スピカは半分涙目になっていた。レグルスを怖いと思ったのは、あのさらわれた時以来のことだった。
レグルスの目は本気だった。両手首を完全につかまれたスピカはもがいてみても、身動きすることが出来なかった。
「フフッ、今縄を持ってくるからちょっと待っててごらん。あぁ、それとも・・・・縄が痛くて嫌なのなら、手錠の方がまだいいのかな・・・・?」
「いやっ・・・!嫌ですレグルスさん!!!そんな・・そんな、こと・・私、嫌です!!」
スピカは怖くてつい涙が出てしまっていた。レグルスはそんなスピカを見れば、いつもは優しくキスしてくれるのに・・・・今日は違った。
「フフッ。まぁ、そうして泣いてるといいよ。そうでもしてもらわなきゃ、強姦する意味がないからね。」
「レグルスさん・・・・あ、あの・・もしかして・・・・」
「ん?何だい?」
スピカはやっと気が付いた。レグルスは怒っているのだと。
レグルスはいつも通り余裕の微笑を浮かべているし、口調もいつも通りだったから分かりにくかったが・・・・明らかにラグリアに嫉妬して怒っているのだ。
レグルスは自分をさらった時でも優しくしてくれたから・・・・こんなレグルスは嫌だったし、怖かった。そしてその原因が明らかに自分にあるとなると、スピカは謝ることしか出来なかった。
「その・・すみません!私・・私、のせいで・・・・怒ってらっしゃるんですよね・・・・?」
「・・・・・・・・・・」
「すみません・・・・!すみ、ません・・・・!」
スピカは何度謝っても謝りきれなかった。黙って自分を見ているレグルスの視線が冷たく怖かったが、それでもスピカには泣いて謝ることしか出来なかった。本当に自分が、最悪な人間だと思いながら。
レグルスは目を閉じて沈痛な面持ちをしていたが、やがてスピカの両手首を押さえていた力をゆるめた。
「・・レグルス、さん・・・・」
「・・本当に、私は・・嫉妬深いよね・・・・自分でも、よく分かっているんだよ・・・悪い、癖でね・・・・」
「・・・レグルスさん・・・・」
「・・・悪いね、スピカ・・・・でも、今日のおまえを見て美しいと思ったのは本当だし、嫉妬しているのも本当だから・・・・フフッ。どちらにしろ、おまえを抱くことになりそうだけど・・・いいかな?」
今のレグルスは、いつものレグルスだった。優しく自分を見るレグルスを見て、スピカはコクンと頷いてしまうのだった。
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