第47話「思いを託して」

いよいよ運命の日になった。
スピカはあまりよく眠れなかった。レグルスのことが気になっていることと、両親に会えることの喜び。その他色々な複雑な感情がスピカの中にあった。
そんな眠れない日でありながら、スピカは夢の中にあの仮面パーティーの男性の姿を映し出していた。優しく、優しく微笑んでくれたあの男性。仮面を・・・取ろうとしてくれていた。
その瞬間、スピカは目覚めて。なかなか気になる夢だったのだが、今は現実を見据えることの方が先だ。
なかなか早い時間に起きたスピカだったのだが、下に下りてみればアルビレオが台所に立っていて何やら作っているではないか!!スピカは驚いてしまった。

「ん?あっら〜、おはよ〜う!スピカちゅわ〜ん!早いのね〜。」
「あ・・はい。おはようございます!アルビレオさん。」
「ンフフフフ〜ッ。いつもレグルスの作る料理食べてただろーけど、あたしも料理作りは得意なのよ〜♪ルンルル〜ン♪」

とアルビレオは鼻歌混じりに作業を進めている。一見遊んでいるように見えるのだが、手の動きには全く無駄がなかった。

「もう少しで出来上がるから待っててね〜。」
「あ、はい。あの、アルビレオさん・・・今日は、何時頃にここを立つのでしょうか・・・?」
「ン〜そーね〜。10時までお城に着けばイイから〜。まぁ、9時半位かしら?」
「あ、は、はい、分かりました。」
「ほーい出来上がり!そんじゃ食べて景気付けて、元気にパーッといこーね!!」
「あ、は、はい!」

そうしてアルビレオと2人で朝食を食べたのだった・・・・・・・・・




時間がせまり、アルビレオとスピカは身支度を整え、家を出た。

「この家も、任務終了ね〜。後は壊されちゃうだけだから〜。」
「あ、は、はい・・・・今まで、ありがとうございました。」

と外を出て家を出てから、スピカは家にお辞儀をした。

「アハハハハッ!ン〜、きっとこの家も喜んでるわよ♪さ、そんじゃ行こっか〜、スピカちゅわん!」
「はい。」

そうして2人は城に向かって歩き出した。いつもと変わらない日常であるが、アルビレオやスピカにとっては今日が一大事の日であった。
いつも通りの城下町の雰囲気ながらも、アルビレオとスピカの中には緊張感があった。一体どうなってしまうのか、誰にも分からなかった・・・・・・・




それから何事もなくお城に着いたアルビレオとスピカは、そのままラグリアのいる謁見の広間の方に行った。
スピカの緊張感はピークに達していた。とても緊張していた。と同時に急に不安な気持ちになる。レグルスはどうなっているのか・・・まさか牢屋に行っているのではないだろうかと・・・・・
そして謁見の広間に着いた所で、階段の前に立っていた兵士がアルビレオの腕を掴んだ。

「あなたも共犯者ですね、アルビレオ様。こちらに。」
「うわっ、ビックリした〜。は〜いはいわーりましたよ〜だ。」
「あ・・・・・・・」

今まで一緒にいたアルビレオが急に兵士に連れて行かれて、ますます不安な気持ちがスピカの中に広がった。そして中央にはラグリアと・・・両親がいた。

「スピカ!!」
「スピカ!!!無事だったのね!!」
「!お父様・・お母様・・・・!」

スピカは両親に会えた喜びが強くて、ついつい母親に抱き着いてしまった。母親は暖かくスピカを包んでくれた。

「・・・申し訳ないが・・・・そのようなことは後にしてくれぬだろうか?」

と、横から冷たく言ってきたのは、国王ラグリアであった。ラグリアはいつにも増して怖い雰囲気と冷たい雰囲気が入り混じっていて、近づけない感じだった。

「あ、す、すみません・・・・!」
「・・すみません、つい・・・」
「・・・では、今回の犯罪人をここに・・・・」
「はっ!」

ラグリアがそう言うと、奥からレグルスが兵士に連れられて歩いてきた。
手を後ろにされていて、どうやら手錠か何かをかけられているらしい。気が付けばアルビレオも手を後ろにされている。
レグルスは昨日ほど顔色は悪くなかったが、いつものような余裕ある微笑を浮かべてはおらず、沈痛な面持ちでいた。アルビレオはそんなレグルスとは対象的に、ラグリアのことを少しにらみ付ける感じで見ている。

「この度の件は、被害者の両親達の訴えにより分かったものだ。そなた達・・・この犯罪者達に望むものは何だ?」
「極刑に決まっている!!」
「そうよ!それしかありえませんわ!」
『・・・・・・・・・・』

スピカの両親の意見に、皆沈黙してしまった。最もな言い分であるし、誰もがそのように言うことを分かっていたからだろう。


「私の娘を誘拐して・・何をしたと言うんだ!?怪我を負わせてはいないみたいだが・・・・性的ないやがらせもしたに決まっている!!こんなヤツ、許す訳にはゆかぬのだ!!!」
「そうです!!私たちの可愛い大事な一人娘をさらって・・・いかがわしいことをしたに決まっているんだわ!!この子の未来は私たちの未来も担っているんです!!許してなるものですか!!」
「・・・被告人・・・意見は・・・・?」
「・・ありません。」

とレグルスが言った。アルビレオはまだ何か納得のいかないような感じで、ふくれっ面をしてラグリアを見ている。

「何だ、もう1人の被告人よ。何か言いたいことがあるのか?」
「あ〜のさ〜、国王様?確かに被害者のご両親に話聞くのも分かるけど・・・・被害受けたのはこの子なんだからさ〜、この子の意見を何よりも尊重すべきだと思いま〜す。」
「・・・・確かにそうだ・・・・では被害者に聞く。そなたは・・・・この犯罪者達に何を望む?」

とラグリアはスピカの方を見てそう問うた。スピカはドキンとしてしまったが・・・・・昨日のアルビレオとの会話を思い出した。「レグルスのことが好きなら助けて欲しい、そして自分のことを信じて欲しい。」と・・・・アルビレオはそう言っていた。
それはアルビレオに言われてのこともあったが、自分は確かにレグルスやアルビレオのことを犯罪者だと思って見ていたことは最初だけだった。
だから素直になって、深呼吸をして・・・スピカは口を開いた。

「私・・は・・・・・」

場が静まる。皆スピカの言葉を待っていた。

「・・私は・・・・私は・・ほとんど無害です!!ですから・・・どうか、釈放してあげて下さい!!!」


  

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