第49話「再会」
結局レグルスとアルビレオに課せられた刑は、城の中での謹慎生活だった。アルビレオは2週間、レグルスには1ヶ月の城での謹慎生活が言い渡された。
ここまで被害が軽くなったのは、スピカがラグリアに頼みに頼み込んだからだった。スピカは「無罪」を主張し続けたが、レグルスとアルビレオは「さすがに無罪ではまずいだろう。何がしか罰を受けてしかるべきだ」ということで意見が一致し、最終的にラグリアが悩みに悩んで出した結果が、この謹慎生活というものだった。
そしてこの2人の謹慎生活が始まったと同時に、全く身寄りのなくなってしまったスピカも一緒にフェラールのお城に住むことになった。
今の所どこかに行く当ても全くないし、ラグリア、レグルス、アルビレオ・・・この3人とは面識もあったので、ラグリアがスピカを保護する形で、スピカはこのお城に住むことになったのだ。
だが実際の所、スピカはラグリアと一緒にいる訳ではなく、レグルスと一緒に住んでいた。これもまた、スピカがラグリアに頼みに頼んだことだった。
最初ラグリアはこのことに反対していたのだが、ミャウの機嫌が良くなく、仕方なくスピカの言い分を許可したらあっさりミャウは機嫌を良くしてしまったと言う何ともすごい理由がその背景にはあったりする。
ミャウはそれからもずっとスピカのことを気に入っていて、よく甘えてきていた。ラグリアもミャウには何か逆らえない所があるらしく、こんな子猫でも何気に最強の力を見せ付けていた。
いずれにせよ今回の事件は、スピカの両親と偽っていた男女がその後死刑になり、解決することとなったのだった・・・・・・・・・・
スピカの偽両親が死刑になってから翌日のこと。レグルス、アルビレオの謹慎生活5日目のことであった。
レグルスとスピカは紅茶を飲みながら、幸せな時を過ごしていた。謹慎中であるとは言え、お互いに大好きな人と一緒に過ごす時間は本当に嬉しかったし楽しかった。
「本当に、おまえには助けられてしまったね・・・・本来なら、私がおまえのことを助けなければならないのにね・・・・ありがとう。私がこうして今暮らしているのは・・・おまえのおかげだよ。」
「そんな、レグルスさん・・・・そんなことないです。私でもレグルスさんのお役に立てて、本当に良かったです。私はいつも・・レグルスさんにご迷惑をかけてばかりいましたから。」
「そうかな〜?そんなことあったかな?」
「ありましたよ〜。いつもお料理作って下さいましたし・・襲われそうになった所を助けて下さったり、怪我した時すぐに介抱して下さったり・・・」
「それは当然のことだろう?そんなことで迷惑をかけたと思っているのかい?おまえは・・・・フフッ、それは間違ってるね。」
「そ、そうですか〜?ですけど私は・・とっても助けられたと思ってますよ?」
「フフッ。そんなことでいいなら、いくらでもやってあげるよ?お姫様。」
とレグルスは言ってスピカの所に行き、その唇に自分の唇を重ねた。2人の舌が絡み合う。
「ん・・っ・・・レグルス、さん・・・」
「フフッ・・・あぁ、そういえば・・・結局私の正体は、姉さんがおまえにバラしていたんだろう?」
と、レグルスは自分の席に戻り、紅茶を飲みながらスピカにそう尋ねた。
「あ、はい。そうなんです。その・・・アルビレオさんに、無理矢理教えてもらいました。」
「えっ?」
「アルビレオさんは、レグルスさんが一番気にしていたことだからって話すのためらってたのですけど・・・・もしもこうしてレグルスさんが助からなかったらと思うと、私、気が気じゃなくて・・・本当のこと、全部知っておきたかったんです・・・・」
「あぁ、なるほどね・・・・フフッ、それじゃあ私も・・・おまえの秘密を知っておくべきではないかい?」
「えっ?」
「私に秘密にしていたことがあっただろう?おまえが以前から好きな男のことだよ。」
「!あ・・・・・・」
「今なら私に教えてくれたって構わないだろう?お互いに秘密をなくす方がいいだろうからね。フフッ、また嫉妬でおまえを抱きかねないけど。」
「ア、アハハハハ・・・・あ、ですけど、分かりました・・・あの、お話します。」
とスピカは言って、気持ちを改める意味も込めて「コホン」と小さく咳払いし、一旦座りなおした。
レグルスの方も、いつも通りの余裕ある微笑を浮かべてスピカのことを見つめ、話を聞く態勢に入った。
「その・・前にレグルスさんに、仮面パーティーについてお聞きしたこと、ありましたよね?」
「あぁ、あったね。」
「私がその方と出会ったのは、3年前の、その仮面パーティーの時だったんです。どこの国であったのか、分からないのですけど・・・・仮面という慣れないものを身に付けて、フラフラしてた私を、その方は支えて下さって・・・本当に優しくて、とっても素敵な、魅力ある方だったんです・・・・一緒に、ダンスも踊って下さって・・・・そして、約束して下さったんです。「また会いたい。いつか必ず一緒になりましょう。」って・・・・それで私、ずっとその方を信じて、待ち続けているんです・・・・仮面でお顔は分かりませんし、お名前も、どんなご身分の方なのかも分からないのですけど・・・・私、ずっとその方のこと、好きです・・・・すみません。レグルスさんよりもこの方は・・私にとって、譲れない存在の方なんです・・・・」
とスピカは言い終えた。好きな人の話をしたことで、顔が赤く染まっている。レグルスはこの話を聞き終えて、目を閉じた。話の余韻を頭で辿っているように見える。
しばらくして目をゆっくり開けて、レグルスは口を開いた。
「なるほどね、スピカ・・・・おまえにとってその男は、本当に印象が深かったみたいだね・・・・」
「はい。そうなんです。」
「フフッ・・・・ねぇ、スピカ。当ててみようか?その男が、おまえをダンスに誘う時までの言葉を。」
「えっ?」
このレグルスの発言にスピカは驚いてしまった。レグルスは立ち上がり、スピカの下に跪き、スピカの手を取って口を開いた。
「あなたはお美しいですね・・・連れの男性はいらっしゃらないのですか?」
「!!!!」
「連れの男性がいないとは本当ですか?それならば、是非私と一緒にいて欲しいのですが・・・・」
「!!!あ・・あの・・・・・」
スピカの顔はもう真っ赤だった。体が震えているのが自分でもよく分かる。なぜ、どうしてレグルスがこんなことを知っているのか分からなかった。
「ほら、運良くダンスの時間も始まりました。一緒に踊りましょう。」
とレグルスは言って、スピカの手の甲にキスをした。
スピカはもう驚いて顔を赤くしてしまうばかりだった。これは一体・・・どういうことなのだろうか?まさか・・まさか・・・・彼が・・彼こそが・・・・あの時の仮面の男だったと言うのか・・・・・・?
レグルスは、いつもの余裕ある微笑を浮かべるだけだった・・・・・・・・・・・・
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