「教壇のうしろすがた」
2時間目の休み時間終了〜!いよいよ3時間目は英語だ〜。曽我部先生を一杯見れて嬉しい時間だよね〜、エヘヘヘヘッ♪
そういえば、今日は心強い味方がいたんだよ〜!ジャジャジャジャ〜ン!!お兄ちゃんから貸してもらった訳付き英語ノート〜!!・・って、ドラえもんみたいに決めたってしょうがないってば・・・・
昨日お兄ちゃんから借りたのは良いものの、肝心の中身全然見てなかった・・・パラ読みしておこっかな〜。まだ曽我部先生来ないよね・・・と思ってあたしがノートを広げたその次の瞬間!前のドアをすごい勢いで開けて入ってきたのは、その曽我部先生でした・・・・
ウワッ、結局ノート見れないジャ〜ン。まぁ、いっか。授業中に見たって間に合うだろうし・・・・
それにしても元気良いよね〜、曽我部先生って・・・・あぁ、でも曽我部先生をこうして見ることが出来て、嬉しい自分がいるよ〜。先生はここの担任だから、毎日朝と放課後には顔を合わせるけど、授業中にこうして見れるのはホントに嬉しいんだよね〜!
なんて考えている間に、英語の時間にはお決まりの最初の挨拶を曽我部先生としてから、改めて席に座った。曽我部先生って、挨拶の時からノリノリだよね〜・・・・だって「!」が何個も付いてそうな勢いなんだもん・・・・でも、そんな曽我部先生が好き・・かな。パワフルじゃない曽我部先生って想像出来ないし。
「よぉ〜っし!!それじゃあ諸君!!今日はLesson5からだったな!!予習してきたかな〜?ン?Mr.坂本君。」
うわっ、無造作に真ん中の列の一番前に座ってる坂本君当ててるよ・・・・そうそう。あたしは一番窓側の前から5番目。我ながらなかなか当てられにくい場所だと思う。役得、役得♪
「あぁっ。し、してないです・・・・」
「ワッハッハッハ〜!!素直で大変よろしい!!!あぁ、でも今度から予習してくるんだよ?そうじゃないと先生困っちゃうからね。他に予習してない人お手上げ!!」
これって、レッスンの最初に先生が必ず聞いてるけど・・・ここでほぼ全員が手を挙げていること、先生気付いてるよね?アハハハ・・・もちろんあたしも手を挙げてみました。
案の定、ほとんどの子が手を挙げてるねぇ〜・・・・そして挙げてないのは、やっぱりあたしのクラスでも特に有名な曽我部先生ファンの人達かな。多分この学年の中では、このクラスが先生ファン一番多いんじゃないかと思う。
「君たち〜、先生いじめて楽しいかい?まぁ、でもね。素直じゃない諸君が私は大好きだよ!!ウゥッ・・・」
あ、先生泣いたフリしてる。ジェスチャーが分かりやすいよね〜、曽我部先生って・・・・
『泣かないで、Mr.ソガベ!』
『泣いちゃヤァ〜ッ!先生!』
きた。曽我部先生ファンの女の子達が、「せぇ〜の。」なんて声合わせてそんなコト言ってる。そうすると曽我部先生はますます泣くフリを派手にするんだよね〜・・・・アハハハハ。見ていてこれは結構楽しいのです。
えっ?あたし?あたしは先生に声かけるなんてコトしないよ〜。前にも言ったけど、あたしの友達は曽我部先生にまるで興味ないから・・・見て楽しむだけなのです。
「諸君。「泣かないで」とか言うなら先生とのお約束事、ちゃんとしてきてくれないかな〜?」
「はいっ!!先生!私、予習してきてます!」
「おおぉぉ〜っ!!!そうか!Ms.上野君!!それじゃあLesson5の一番最初の文を呼んでごら〜ん。ついでに、日本語訳もお願いね。」
「はい、先生!!」
そうして少しキャピった感じで教科書の英文を読み出したのは、先生ファンの1人で有名な上野さん。ン〜・・・上野さんって、ギャルなんだけど頭が良い上に可愛い人なんだよね〜。きっと先生は、ギャルでも上野さんみたいな優秀で可愛い子が好きなんだろうな〜・・・・なんて考えると、あたしの出る幕なんて全然ない感じ。ウゥ〜ッ。昨日せっかくお兄ちゃんから勇気をもらったのに、結局あたしってば全然ダメダメだな〜・・・・
それからも先生のギャルファンの女の子が続々と手を挙げて予習してきたことを発表していく。いつものことながら、それを見ている内に、あたしの中に黒い感情が湧いてきて・・・何か一気に全部ヤになってきちゃった。そろそろ眠くなってきたし、寝ちゃおっかな・・・・
そうしてあたしは机の上に腕を置いて、そこに頭を置いた。イイも〜ん、どうせ今度の英語のテストだって補習決定だろうし〜。あ〜あ・・・お兄ちゃんから借りたこのノートも、何か一気に意味なくなっちゃったな〜・・・・あ、でも後で少し写させてもらお。
あたしは耳に聞こえてくる全てのものを遮断して、完全に眠る態勢に入った。このまま目を閉じれば、後は完了・・・・と思った、正にその時だった。
すぐ目の前に何かを突付くような音がして、あたしは気だるさを感じながらもそっちの方を見た。するとそこにあったのは・・・白衣に・・先生の長い指?
自然とあたしが頭を上げると、すぐ傍にいたのは曽我部先生!!!皆はと言うと、口々にレッスン5の本文を口に出して読んでいる。
「いかんな〜、Ms.ふーせーく〜ん。3時間目は眠いかな?」
「!せ、せんせぇ?」
「ワハハハハッ!ふーせー君は毎朝部活で早そうだもんな〜。先生より早く学校に来てる時もあるだろう?違うかい?」
「えっ!?い、いえ!それほどでも・・・・」
「ワハハハハ〜!!またまた〜、イイんだぞ〜?隠さなくて!!あぁ、それより・・・ふーせー君。ここからしっかり音読するんだよ〜?それから、Mr.ふーせー君の力を借りるのは違反ね。」
ゲゲッ!!!あぁっ!!そういえばあたし、ついうっかりノート閉じちゃってた!!そう、ノートの最初には、お兄ちゃんの名前がしっかり書いてあるワケで・・・・
先生は没収こそしなかったけれど・・・・ヤバイ。またあたし、悪い意味で先生に存在覚えられたかも・・・・・
「は、はい。すみません・・・」
「・・そんなシュンとしないで。文法説明の時は寝てていいから。」
はい〜!?先生、笑顔でそんなこと言われても、あたしかえって困っちゃうよ〜!!
それから先生はポンポンとあたしの頭に軽く手を置いてから、皆の様子を見て回っていってた。うわ〜、さすがにあたしも1回だけ音読しとかないとヤバいかも・・・・ってコトであたしは完全に起き上がって、取り敢えず英文読むだけ読んだんだけど・・・・やっぱり英語ってワケ分かんない。部分的な単語の意味なら分かるけど・・・この長い単語とか動詞が一杯あったり、指示代名詞?とかゆーのが多すぎてワケ分かんない・・・・
それから先生は教壇の前に戻って、パンパンと手を叩いた。それは、先生が「読むのをやめ。」っていうサイン。一気に教室の中が静かになって、曽我部先生が黒板に英文を書いていく。皆はそれを一気にメモして・・・静かな中に、曽我部先生の書くチョークの音と、あたしたち生徒の鉛筆の走る音だけがする。
先生の、教壇のうしろすがた・・・・カッコ良いな〜。先生、背が高いし、ずるい位細いよね〜・・・・
あ。今頃だけど、先生に頭ポンポンってされたのは、ちょっとだけ嬉しかったかも・・・・今でも頭に暖かさを感じる。もちろん先生としては、あたしのこの身勝手さや勉強の出来なさに呆れてるんだろうけど・・・・先生。あたしは、先生に頭ポンポンってされて嬉しいんだよ?だって、先生は・・あたしにとって、特別な存在だから・・・・
「・・・であるから、ここがこうなる訳だ!!諸君、よろしい?質問あったら遠慮なくしちゃってね。」
「はい!先生。今の所、最後の方のご説明を、もう1度お願い出来ますか?」
曽我部先生の授業は、いつになく皆が積極的になる。そういう空気を作ってるのは他ならぬ曽我部先生であって・・・・本当に、曽我部先生は人気者なんだよね〜。女子生徒から人気があるのはもちろん、男子生徒も曽我部先生のこと普通に好きな人が多いみたい。今だって挙手して質問したの、ウチのクラスでは結構頭の良いことで有名な男子だもんね・・・・
「OK、OK!どこえら辺から?」
「そこの変わる部分からお願いします。」
そうして先生は、また丁寧に説明をしていく。先生の授業って、文法も分かりやすいってとっても評判イイんだけど・・・・全部がワケ分からないあたしにとっては、どれも「?」なワケで・・・・うぅ〜ん。これでも結構真面目に先生のお話は聞いてるのに・・・基本が分かってないからダメなのかな〜?
先生の元気な熱のある授業は続く。先生が真剣に、ちょっとジョークも交えてあたしたちに授業教えてくれてる姿は本当にカッコ良いと思う。
・・・どうでもイイけど、先生って肩幅が広いから、どんな人でも優しく包んでくれそうだよね〜・・・・って、いけない、いけない!!あたし、授業中に何考えてんだろ・・・・
あたし、自分でもいわゆる「スポーツバカ」だって思ってるし、バレーやってるクセに背が小さいんだよね。だから、曽我部先生の背の高さには本当に憧れちゃう。細いけど、先生って体格ガッシリしてるよね〜。加えてカッコ良くて優しいとあれば、人気が出るのは当たり前で・・・・
このままずっと、曽我部先生のことを見つめていたいな〜って思う。やっぱり、あたしのこんな想いは曽我部先生には叶わないんじゃないかって思うけど・・・・それでも、今は少しでも曽我部先生のこと、見ていたいなって思う。カッコ良くて、優しくて、ハイパーテンションな曽我部先生が大好きだから・・・・・
END.
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