「先生の誕生日」 2


こうしてその後20分位で曽我部先生にプレゼントするものがかんせ〜い!!一旦帰ってきた時と同様、玄関から「お兄ちゃん、再びいってきまーーす!!」と大声で言って、あたしは夏が終わろうとしている、いつも通いなれたこの道をひた走った。早く曽我部先生に会いたいし、ちゃんとプレゼントしたいもんね!
中身は崩さないように走ってるつもりだけど・・・・崩れてたらゴメンナサイ、先生。
ってワケで全力疾走して学校とうちゃ〜く!!中に入り込んで職員室の近くをウロウロしてみたんだけど、どうやら曽我部先生はまだいるみたいでホッとした。でも、書き物してお仕事してるっぽいんだよね〜・・・・ウゥッ。入ってって大丈夫かな〜?・・大丈夫だよね!!たかがプレゼント渡すだけだし!!
あたしはそう決めると、「失礼しまぁ〜す!」と明るく言って職員室に入り込んだ。そのまま何か書いている曽我部先生の方に近付いていったんだけど・・・ウゥッ、やっぱり声かけづらいな〜、どうしよう・・・・
と、あたしが迷っていたら先生が丁度いい具合にあたしの方を見て気付いてくれた。

「ん?おやや〜!?Ms.ふーせー君!!!いや〜、どうしたんだい?私に用?それとも他の先生にご用事?」
「曽我部先生、こんにちは!あの、今日は先生のお誕生日だって聞いたもので・・・」
「ええぇぇっ!?そそ、それじゃあ、その君が手にしているものは・・・・!」
「はい!!お誕生日プレゼ・・・・」
「ああぁぁーーーっっ!!!ふーせー君!!ちょっとこっちにおいで。」

わぁっ!!曽我部先生、いきなり大声出すからどうしたのかと思っちゃった〜。曽我部先生が慌てて立ち上がって、あたしに手招きしてきた。どうやら職員室だと居心地が悪いみたい・・・・どうしてだろう?
そのままあたしは曽我部先生と共に職員室を少し離れた廊下を歩いた。ここから先は理科室だから、人気が全然ない。

「悪いね〜、ふーせー君。突然移動させてしまって・・・」
「いえ、いいですよ〜。はい、先生!お誕生日おめでとうございます!!間に合わせのものですけど、プレゼントです!」

あたしは笑顔でそう言って、急いで作ったこのプレゼントを曽我部先生に手渡した。曽我部先生に拒否されたらどうしようかと思ったけど、先生はちゃんとお辞儀してくれてそれを受け取ってくれた。

「ありがとう・・ありがとう、ふーせー君!!!君に誕生日を祝福されて、プレゼントまでもらえて、私は最高に幸せだよ!!」
「はい!ところで曽我部先生は、今日おいくつになられたんですか?」

あたしがそう尋ねた途端に、曽我部先生はそれまで嬉しそうに笑ってくれてたのに、突然慌て出した。

「あぁ〜っ!!あのね、ふーせー君!!世の中にはまだ知らないことや分からないことがた〜っくさんあってだね〜・・・・」
「先生が先生のお歳知らない訳ないじゃないですか。」
「いや、だからね!!そんな、君に言えるほどの歳じゃないんだよ、先生は・・・・シクシク。」

またウソ泣きでごまかそうとしてるな〜?曽我部先生〜・・・・

「先生、泣いたフリしてもダメです。」
「ウッ・・厳しいね〜、ふーせー君。」
「今までずーーっと先生には年齢はぐらかされてきましたからね〜。今日という今日は、教えてもらいますからね!そうじゃないと、そのプレゼント没収しちゃいますから!」
「あぁっ!そ、それだけはやめよう、ふーせー君!!君がせっかくくれたプレゼントを、無駄にしたくないから・・・」

もうこうなったらとことん悪魔になってやる〜!!ってコトで半分以上悪ノリでそう言ってみたら、思ったより効果テキメンだったみたい!よっしゃ、先生に勝った♪

「はい!そしたら、年齢教えていただけますか?せんせっ!」
「ウム、いいだろう・・・・ふーせー君。私はね、今日で20代最後の歳になってしまったんだよ・・・」

えっ?ってコトは・・・・

「先生〜、おめでとうございます!!もう少しでオジサンの仲間入りですね!!」
「!!あ、あぁ、そうだね・・・・ワハハハハ〜ッ!!もう前からイイ歳だけどね〜!!ハハハハハ〜、「オジサン」か〜。やっぱりそうだよね〜・・・・」
「あっ!ですけど先生は、今年はギリギリ20代ってコトですよね!!じゃあオジサンの1歩手前ですよ!」
「1歩手前!?そ、そうか・・・・」

あれ?曽我部先生、本気で悲しそうな顔してんのはどうしてですか。あたしのあげたプレゼント、気に入ってもらえなかったのかな〜・・・・まぁ、間に合わせになっちゃったし、無理ないかも・・・・

「あの・・先生、すみません。ご迷惑でしたら、そのプレゼント捨てて下さって構いませんから・・・・」
「えぇっ!?突然何を言うんだい!?ふーせー君!!迷惑だなんてとんでもない!!まして君からもらったプレゼントを捨てるなんて、そんなことは出来ないよ!!」

ギャアッ!!ビビ、ビックリした〜。曽我部先生がいつもの感じに戻ったと思ったら、突然あたしの両肩にすごい勢いで手を置いてきて・・・・
あ。あたしと先生、見つめ合ってる?今、ここ誰も人いないし・・・肩に手を置かれてるし・・・な、何か、一気にドキドキしてきちゃった!!か、顔が、体が熱いよ〜!!

「え、えっと・・・先生?」
「あぁっ、ごめん!!ふーせー君。これではセクハラだね!!ああぁぁーーーーっっ!!!ごめんよ、ふーせー君!!私は、君に何とゆーコトをーーーーー!!!」

先生はそう言ってすぐにあたしから手を離すと、この世の終わりとでも言わんばかりの勢いで頭を抱えていた。
い、いや、別に・・・・この位、セクハラでも何でもないと思うんだけどな〜。それはもちろん、ドキドキしたけど・・・・

「先生、別にセクハラじゃないですよ〜。それより、お仕事している時にいきなり押しかけてしまってすみませんでした。あたし、もう帰りますね!」
「あ、あぁ、そうか。ウム!!ふーせー君。本当にありがとう!!君に祝ってもらえて、先生は本当に嬉しかったよ!」

ウワーイ!先生にそう言ってもらえると、あたしも嬉しくなっちゃう。間に合わせでも気持ちは人一倍込めてプレゼント作ったし・・・先生が喜んでくれて本当に良かった!

「いえ、こちらこそ!それでは失礼しました!さようなら、先生!」
「ウム!!いよいよ明後日から学校だから、また元気に頑張ろうね!ふーせー君!」
「はい!」

 

あぁ〜、Ms.ふーせー君の笑顔が眩しいよ。君は誰よりも輝いているね!だからこそ、私は君から目が離せないんだよ・・・・
君の帰る後ろ姿を見ていると、つい呼び止めてしまいたくなるけど・・・・さすがに、それはまずいね。何か別の物を見ていないと、本当に我慢出来なくなりそうだよ・・・・
という訳で、自然と私はふーせー君からもらったプレゼントを見たんだけど・・・・花柄の袋詰めだね。赤いリボンが結ばれていて・・・・この大きさと軽さからすると、クッキーかな?
ハッ!!!ま、まさか、これはふーせー君の手作り・・だったりするのかい!?そ、そうだとしたら、どうしようか!!!つい、期待してしまいそうだよ・・・・
大人げもなく気になってしまって、リボンを解いて中身を見てみると、バニラエッセンスの良い香りが私の鼻腔をくすぐった。予想していた通りのクッキーがそこには何個も入っていたんだけど・・・どうやらバニラ味とチョコ味のクッキーに分かれているようだね。しかもこれは、絞って形を作るクッキーだよね?
いや〜、ふーせー君は料理を作る才能にも優れているんだね!!!ふーせー君の手作りプレゼントがもらえて、本当に嬉しいよ!!思わずふーせー君の愛を感じてしまうね・・・なんて、自惚れすぎかな?
試しに1つクッキーを食べさせてもらったんだけど・・・こ、これは美味い!!!クッキーの固さも丁度良いし、味もそれほど甘い訳ではなくて、ほんのり心地良い甘さだね・・・・さ、最高だ!!最高だぞ、ふーせー君!!!私は、本当に幸せだよ!!・・・このままだと、本当に期待してしまいそうだ。ふーせー君・・・・君が、私のことを想ってくれているんじゃないか、とね・・・・
あぁ〜、それより。君に「オジサン」と言われたことが、何より堪えたよ・・・・やはり、君の中で私は「オジサン」になってしまうんだね・・・・あぁ〜。そう言われるだろうことが怖くて今まで隠し通していたのに!!!見事にふーせー君にしてやられてしまったよ・・・・あんな風に言われたあげく愛らしい笑顔を見せられたら、抵抗なんて出来ないんだから。
うぅ〜む。確かに私は「お兄さん」と言われる年齢ではないし、実はふーせー君たち位の大きい甥がいたりするんだけど・・・・それでも、君に「オジサン」扱いされたことが悲しかったよ・・・・
でもね。例え、君の中で「オジサン」で「先生」であっても、私は屈したりしないよ・・・・もしかしたら、君が私のことを想ってくれているかもしれない・・その限りならば、ね。ワハハハハッ!なぜなら私もまた、君を愛しているからだよ!!!
・・・今は、この気持ちを君に言う気はないけれど・・・・いずれ、君に本当の感情を出せる日がくるのかな?教師としての私ではなく、君を愛する男として・・・・

「ふーせー君・・・本当に、ありがとう。今までにない、最高の誕生日になったよ・・・・」

 

END.


  

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