「修学旅行」 4 「や〜わら!!昨日はあれからどうなったのよ〜。Mr.ソガベと一緒に過ごしたんでしょう〜?」 確かに・・・昨日のアレはあたしも本気で驚いちゃったもん。優も驚いて当然だよね〜・・・その割にはしっかり絵里の言うことに乗ってたけど。 「えぇっ?そ〜う?ってゆーか、和とMr.ソガベ見てるとイライラしてくんのよね〜。」 絵里が時々分かんなくなるよ〜!!あたし、そんなにイライラするようなことしてるかな〜?思い当たることがないんだけど・・・・ 「・・・あたし思うんだけど、和って変な所で鈍感だよね〜。バレーしてる時とかの動きはテキパキしてて非の打ち所がないのに、恋愛面になると途端に鈍くなるんだもん。」 あたしが苦笑してそう言うと、絵里と優が揃って素っ頓狂な声を出して驚いていた。 「あんたね〜!自分のコトなのに、それでイイと思ってんの〜!?」 そう言ってくれる優にあたしはかなり勇気付けられてるけど、でもなぁ〜・・・・そんな、あたし自分に自信ないよ。どこも可愛いとか思わないんだけどな〜・・・・ 「んまぁ、初恋の話はともかくとして。和、あれから昨日はMr.ソガベと何してたの〜?」 話が振り出しに戻った。あたしは取り敢えず昨日絵里たちと別れてからの出来事を簡単に言った。特に進展なんてないし、お兄ちゃんとも一緒にいたから余計にそんなのはないワケで・・・・あっ、でもあの時のことは言っておいた方がイイのかな〜?ほら、たこ焼き屋さんで先生と一緒に待った時のこと。 「ちょっとちょっと〜、や〜わら〜!!!どーーしてそこで告白の1つもしないのよ〜!!!Mr.ソガベが「一緒にいたい」って言ってくれたんでしょ!?そしたらそれって、和とMr.ソガベの気持ちが同じだって考えてイイでしょがーーー!!」 あたしがそこまで言った所で、絵里がおもむろにスックと立ち上がった。 「あたし、Mr.ソガベここに連れてきたげる。和、覚悟して待ってなさい!!!」 そうして絵里が部屋を出て行っちゃったんだけど・・・・ど、どうしよう。元々ここあたしの部屋じゃないし、絵里がいない内に逃げるべき?だって突然すぎるよ〜!!ここに曽我部先生連れてきてどーすんのって!!!あたしが緊張するだけじゃん!! 「あぁ〜。就寝時間近いし〜、あたしそろそろ行こっかな〜?」 ウッ、口調が明らかにおかしいよ、あたし。優がそんなあたしを見てクスッと笑った。 「ダメだよ〜、和ちゃ〜ん。お部屋に戻ったとしても、絵里ちゃんに連れ戻されちゃうよ?」 あたしは優の黒い部分を垣間見てしまった気がした。ずるいなぁ〜、優には好きな人がいないなんて・・・・ 「うん、そうかも〜。やっぱり恋愛してる女の子ってイイなぁ〜って思う。何ってゆーか、見てて微笑ましいんだよね〜!」 ・・優って、実はとてつもなく理想高かったりする?一体優はどんな人が理想のタイプなんだろうか?と、あたしが思ったその時だった。ガチャガチャとドアの開く音がしてやって来たのは・・・・考えたくなかった、絵里と・・曽我部先生!! 「たっだいま〜♪Mr.ソガベ連れてきたよ〜!!」 そういえば絵里の名字って「海原」なんだよね〜。因みに優は「江波」・・だったかな?普段名前でしか呼び合ってないから、名字聞くとちょっと新鮮だったりして・・・・ 「こ、告白大会!?ちょっと待って、海原君!!先生そんなの聞いてないんだけど・・・」 ・・・先生、いつになく泣きが入ってるな〜。どうしたんだろ・・・・絵里と何か秘密のお話でもしたのかな〜?ムゥ〜ッ、絵里にちょっと嫉妬かも〜。 「どうしてですか〜。そしたら告白大会になりませんよ〜?」 ギャーーーーーッッ!!優〜、調子に乗りすぎだってば〜!! 「タンマ〜!!優、よりによってそんなコト聞かなくてイイから〜!!」 イヤ〜ッ!!あたし泣きたいかも〜。こんなこと言ってたら、ほぼ「曽我部先生が好きです。」って言ってるのと変わらないジャ〜ン!!あたしの人生ここで終わりそうって位、心の中がピンチだよ〜。 「ハァ〜・・・和。そんなこと言わずに!!せっかくMr.ソガベ連れてきたんだからさ〜、ズバッと本音聞いちゃえばイイじゃな〜い。」 あたしはもう半分泣きたい気持ちで、優の所から絵里と曽我部先生がいるお部屋の入り口前まで走って行ったんだけど・・・・そこでストップをかけたのは、曽我部先生だった。 「まぁまぁ、ふーせー君。落ち着いて!海原君と江波君も今日はもう就寝時間だし、告白大会はまた別の機会に取っておいて、明日に備えてよく眠ること!!よろしい?」 ハッ!!そういえばと思ってふと絵里たちのいる備え付けの時計を見てみたら、時刻は22時になろうとしていた。さすが曽我部先生だな〜・・・・結局、あたしのことをどう思ってるかについては逃げられちゃったけど。 「ウッ、そういえばもうそんな時間か〜。くっやしいーーー!!」 絵里は本当に悔しそうに唇を尖らせてる。まぁ、絵里にしてみれば自分の考えていた計画っぽいものが失敗した感じなんだろうから当然なんだろうけど、あたしとしては大分救われたかな・・・・ 「それじゃ、お騒がせしました、先生。あたし、部屋に戻ります!絵里、優、お休み〜!!先生も、お休みなさい!」 えっ?ウソッ!?ラッキーー!!あたしは嬉しくなって、笑顔全開で返事をした。 「はいっ!!ありがとうございます、先生!!」 そうして、あたしは絵里と優の部屋を出て先生と一緒に歩いたんだけど・・・・この長く続く廊下には、人影が全くなかった。物音もしないし、先生と2人きりでちょっとドキドキしちゃう。 「いやぁ〜、Ms.ふーせーく〜ん!災難だったね〜。告白大会とは、いやはや・・・・」 あぁっ、やっぱり曽我部先生優しいな〜。こういう先生の優しい所、本当に見習いたいと思う。先生が好きな一番の理由かも・・・ 「はい、先生!絵里が本当にご迷惑おかけしました。あたしは大丈夫ですよ!」 先生にこれ以上心配かけてられないし、実際あたしは、こうして曽我部先生と一緒にいれるだけで幸せだから・・・さっきの泣きたかった気持ちがウソみたいに、あたしの心はパーッと穏やかに晴れている。 「そうか!それは良かった!!あぁ〜、君の部屋はここだったかな?」 そうして曽我部先生は、最後に笑顔で手を振ってくれた。もう、ホントに幸せ〜!!今の曽我部先生の笑顔、あたし絶対に忘れない!寝る時もずーっと、先生の今の笑顔思い浮かべて寝るんだ〜。 こうして、あたしの4泊5日の修学旅行が終わったんだけど・・・・学校に着いてから自宅までの道のりを、お兄ちゃんと話しながら一緒に歩いていた。一昨日の告白大会の時に、絵里が急遽曽我部先生連れてきたこととかを教えたら、お兄ちゃん驚いてたよ。まぁ〜、無理もないけどさ! 「・・先生、よくそこに来てくれたね。」 アハハハハハ、確かに。あれにはあたしも未だに驚いちゃってるよ〜。 「ねぇ〜!!ビックリしちゃったよ〜、いきなり「デート」とか言い出すんだも〜ん。しかも絵里には彼氏君がいるんだよ〜?どこをどうすればデートになるんだか・・・・」 そうしてあたしとお兄ちゃんは笑い合った。でもお兄ちゃんの場合、「笑う」って言うより「クスッと微笑んだ」っていう表現の方が正しいかもしれない。そもそもお兄ちゃん、あんまり微笑むこと自体少ないからな〜。珍しいかも・・・ 「えっ?和にするんじゃないの?」 気になる〜。一体何だろう?とうとう好きな人が出来たとか〜!? 「・・曽我部先生と一緒に、温泉入った。」 このことも、さっきお兄ちゃんに報告済みだったりする。 「・・・そういえば、曽我部先生が気にしてた。どうしてスクール水着じゃないのかって・・・・」 ウゥ〜ッ、そーゆー時に絵里たちが羨ましいなぁ〜って思う。流されてる孤独なあたしって悲しい・・・・ 「・・・プッ、そうなんだ。和らしい。」 お兄ちゃんのバカバカーーーー!!片思いってつらいんだからね〜!! 「・・片思いだって、本当に思ってるの?」 お兄ちゃんが驚きながらそう尋ねてきた。そんなこと言われたら、逆にあたしが驚いちゃうじゃない!! 「当たり前だよ〜!!だって曽我部先生だよ!?曽我部先生!!先生なんだよ!?しかも超モテモテだし・・・・」 お兄ちゃん・・・・うん、そうだよね。やっぱりお兄ちゃんって、あたしの言って欲しいことズバッと言ってくれるよね〜。お兄ちゃんのその優しさが、あたしにとって何よりの励ましだよ〜。 「ありがと!!お兄ちゃん。もちろん、諦めないよ!!あたし、頑張る!」 あっ、家が見えてきた。これで、本当の意味で修学旅行が終わりだね。本当に楽しかった!!これからの日常生活、また一杯エンジョイして、ついでに曽我部先生ともっと仲良くなりたいな〜♪これからも一杯頑張ろうっと!! END. |