「修学旅行」 4

うぅ〜ん!!今日のオリエンテーリング面白かったな〜!!さっすが曽我部先生だよね〜!!色んな面白い指令出してくれた上に、ゴール地点が奈良の大仏様なんだもん!!!あのおっきい大仏様見れて、あたし感動しちゃった〜!!

残念ながら1位にはなれなかったんだけど、ギリギリ3位だったから何とか良かったかな!!先生も一杯褒めてくれたし、先生のクラスの生徒であたし本当に良かった〜!!
因みに今の時間は21時半。後30分位で就寝の時間なんだけど、そんなこと構わずにあたしは絵里と優の部屋に遊びに行って、とにかく喋りまくっていた。今日は告白大会なんだよね〜!!!
絵里には彼氏君がいて、優はモテるクセに異性に興味がないから、最初は絵里のノロケ話報告を聞いていたワケだけど。一通り絵里のノロケ告白話が終わってからは、あたしが標的になっちゃうんだよねぇ〜・・・・

「や〜わら!!昨日はあれからどうなったのよ〜。Mr.ソガベと一緒に過ごしたんでしょう〜?」
「えっ!?うん!まぁ、一応・・・・」
「絵里ちゃんには感謝すべきだと思う〜。ってゆーか、絵里ちゃんって積極的に行動に出るよね〜。私びっくりしちゃった〜。」

確かに・・・昨日のアレはあたしも本気で驚いちゃったもん。優も驚いて当然だよね〜・・・その割にはしっかり絵里の言うことに乗ってたけど。

「えぇっ?そ〜う?ってゆーか、和とMr.ソガベ見てるとイライラしてくんのよね〜。」
「なっ・・ど、どうして!?」

絵里が時々分かんなくなるよ〜!!あたし、そんなにイライラするようなことしてるかな〜?思い当たることがないんだけど・・・・

「・・・あたし思うんだけど、和って変な所で鈍感だよね〜。バレーしてる時とかの動きはテキパキしてて非の打ち所がないのに、恋愛面になると途端に鈍くなるんだもん。」
「ウッ。だって、あたしは絵里と違って恋愛経験豊富じゃないし・・・・」
「・・和ちゃんって、Mr.ソガベが初恋の人〜?」
「うぅ〜ん、どうなんだろう・・・自分でもよく分かんないから、それでいいや。」

あたしが苦笑してそう言うと、絵里と優が揃って素っ頓狂な声を出して驚いていた。

「あんたね〜!自分のコトなのに、それでイイと思ってんの〜!?」
「いや、そんなコト言われてもさ〜!!そーゆー、恋愛とか・・あんまり興味なかったから・・・」
「もったいな〜い。和ちゃん可愛いのに、男の子たちは和ちゃんに興味なかったのかしら?」
「アハハハハ。そんなモテた経験ないし、好みの問題あるでしょう、優・・・・」

そう言ってくれる優にあたしはかなり勇気付けられてるけど、でもなぁ〜・・・・そんな、あたし自分に自信ないよ。どこも可愛いとか思わないんだけどな〜・・・・

「んまぁ、初恋の話はともかくとして。和、あれから昨日はMr.ソガベと何してたの〜?」

話が振り出しに戻った。あたしは取り敢えず昨日絵里たちと別れてからの出来事を簡単に言った。特に進展なんてないし、お兄ちゃんとも一緒にいたから余計にそんなのはないワケで・・・・あっ、でもあの時のことは言っておいた方がイイのかな〜?ほら、たこ焼き屋さんで先生と一緒に待った時のこと。
どうせ告白大会だ。絵里と優は信頼してるし、暴露しちゃえ!!ってコトであたしが昨日、うっかり口を滑らせて「先生と一緒にいたい」と言ってしまったこと、先生もたこ焼き屋さんに行った時、同じことを言ってくれたことを絵里と優に話したら、絵里と優の驚きようといったらそれはすごかった。

「ちょっとちょっと〜、や〜わら〜!!!どーーしてそこで告白の1つもしないのよ〜!!!Mr.ソガベが「一緒にいたい」って言ってくれたんでしょ!?そしたらそれって、和とMr.ソガベの気持ちが同じだって考えてイイでしょがーーー!!」
「えぇっ!?でも、その後先生に「好きな人いますか?」って聞いたら、先生は「真っ直ぐな人が好きだ」ってしか言わなかったよ〜!?だから絶対、あたしの知らない人だと思うんだけど・・・」
「和ちゃん、見事にはぐらかされたんだね?」
「ウッ、そうかも・・・・でも!先生、ウソついてるようには見えなかったな〜。」

あたしがそこまで言った所で、絵里がおもむろにスックと立ち上がった。

「あたし、Mr.ソガベここに連れてきたげる。和、覚悟して待ってなさい!!!」
「ええぇぇーーーーーっっ!?」
「わぁっ、絵里ちゃんスゴーイ!」
「優!!感心してないで絵里止めてよ〜!!」
「ダメよ、止めたってあたしは行くんだから!!すぐに連れてくるからね〜!!」

そうして絵里が部屋を出て行っちゃったんだけど・・・・ど、どうしよう。元々ここあたしの部屋じゃないし、絵里がいない内に逃げるべき?だって突然すぎるよ〜!!ここに曽我部先生連れてきてどーすんのって!!!あたしが緊張するだけじゃん!!

「あぁ〜。就寝時間近いし〜、あたしそろそろ行こっかな〜?」

ウッ、口調が明らかにおかしいよ、あたし。優がそんなあたしを見てクスッと笑った。

「ダメだよ〜、和ちゃ〜ん。お部屋に戻ったとしても、絵里ちゃんに連れ戻されちゃうよ?」
「アウ。そうかも・・・・」
「絵里ちゃんの行動力と言ったらそれはすごいものだもんね〜。あぁ〜、楽しみだなぁ〜!Mr.ソガベの反応・・・・クスクスクスクス。」
「・・優。もしかして一番楽しんでたりするでしょ?」

あたしは優の黒い部分を垣間見てしまった気がした。ずるいなぁ〜、優には好きな人がいないなんて・・・・

「うん、そうかも〜。やっぱり恋愛してる女の子ってイイなぁ〜って思う。何ってゆーか、見てて微笑ましいんだよね〜!」
「優・・・・優も恋すれば、いずれそうなるじゃん。」
「そうなんだけど・・・イイ男いないんだも〜ん。」

・・優って、実はとてつもなく理想高かったりする?一体優はどんな人が理想のタイプなんだろうか?と、あたしが思ったその時だった。ガチャガチャとドアの開く音がしてやって来たのは・・・・考えたくなかった、絵里と・・曽我部先生!!

「たっだいま〜♪Mr.ソガベ連れてきたよ〜!!」
「ややや〜っ!?い、いや、私はここでイイんだよ?Ms.海原君。ウム!!部屋の方に押さなくていいから!!」
「そんなこと言わずに、一緒にお部屋に来てお話しましょうよ〜。何と言っても告白大会なんですから!!今日という今日は、Mr.ソガベに日頃の想いをたっぷり暴露してもらいますからね!!」

そういえば絵里の名字って「海原」なんだよね〜。因みに優は「江波」・・だったかな?普段名前でしか呼び合ってないから、名字聞くとちょっと新鮮だったりして・・・・

「こ、告白大会!?ちょっと待って、海原君!!先生そんなの聞いてないんだけど・・・」
「えぇ〜?でも「和と一緒にお話しませんか〜?」って言ったら、Mr.ソガベ・・・・」
「あぁーーーーーっっ!!!海原君!!シーッ、シーーーーッッ!!頼むからそれ以上言わないで。お願いだよ!!」

・・・先生、いつになく泣きが入ってるな〜。どうしたんだろ・・・・絵里と何か秘密のお話でもしたのかな〜?ムゥ〜ッ、絵里にちょっと嫉妬かも〜。

「どうしてですか〜。そしたら告白大会になりませんよ〜?」
「はぁ〜い、Mr.ソガベ〜。私からの素朴な疑問なんですけど〜、和ちゃんのことどう思ってるのか、教えてくださ〜い!」

ギャーーーーーッッ!!優〜、調子に乗りすぎだってば〜!!

「タンマ〜!!優、よりによってそんなコト聞かなくてイイから〜!!」
「えぇ〜っ?どうして〜?和ちゃんが一番気にしてることじゃないの〜?」
「ゆ、優ーーーー!!お願いだからもうこれ以上何も言わないで!!!」

イヤ〜ッ!!あたし泣きたいかも〜。こんなこと言ってたら、ほぼ「曽我部先生が好きです。」って言ってるのと変わらないジャ〜ン!!あたしの人生ここで終わりそうって位、心の中がピンチだよ〜。

「ハァ〜・・・和。そんなこと言わずに!!せっかくMr.ソガベ連れてきたんだからさ〜、ズバッと本音聞いちゃえばイイじゃな〜い。」
「絵里ーーー!!ちょっと!絵里までそんなこと言ったら、あたしは・・・・!」

あたしはもう半分泣きたい気持ちで、優の所から絵里と曽我部先生がいるお部屋の入り口前まで走って行ったんだけど・・・・そこでストップをかけたのは、曽我部先生だった。

「まぁまぁ、ふーせー君。落ち着いて!海原君と江波君も今日はもう就寝時間だし、告白大会はまた別の機会に取っておいて、明日に備えてよく眠ること!!よろしい?」

ハッ!!そういえばと思ってふと絵里たちのいる備え付けの時計を見てみたら、時刻は22時になろうとしていた。さすが曽我部先生だな〜・・・・結局、あたしのことをどう思ってるかについては逃げられちゃったけど。

「ウッ、そういえばもうそんな時間か〜。くっやしいーーー!!」
「アハハハハハ〜。しょうがないよ〜、絵里ちゃ〜ん。明日で修学旅行も終わるし、何も修学旅行中じゃなくてもMr.ソガベに同じこと聞けるじゃない!」
「確かにそうだけどさ〜、超つまんな〜い。」

絵里は本当に悔しそうに唇を尖らせてる。まぁ、絵里にしてみれば自分の考えていた計画っぽいものが失敗した感じなんだろうから当然なんだろうけど、あたしとしては大分救われたかな・・・・

「それじゃ、お騒がせしました、先生。あたし、部屋に戻ります!絵里、優、お休み〜!!先生も、お休みなさい!」
「ン、お休み!和。」
「お休み〜、和ちゃ〜ん。」
「あぁっ!ちょっと待って、Ms.ふーせー君。見回りついでに、君の部屋まで一緒に行こう!そうしよう!!」

えっ?ウソッ!?ラッキーー!!あたしは嬉しくなって、笑顔全開で返事をした。

「はいっ!!ありがとうございます、先生!!」

そうして、あたしは絵里と優の部屋を出て先生と一緒に歩いたんだけど・・・・この長く続く廊下には、人影が全くなかった。物音もしないし、先生と2人きりでちょっとドキドキしちゃう。

「いやぁ〜、Ms.ふーせーく〜ん!災難だったね〜。告白大会とは、いやはや・・・・」
「アハハハハ。絵里に連れて来られた先生の方が災難だと思いますけど・・・」
「ワハハハハッ!!確かに君の言う通りだ、ふーせー君!!だがしか〜し!!!君は半分泣きそうな表情をしていたからね〜・・・もう大丈夫?」

あぁっ、やっぱり曽我部先生優しいな〜。こういう先生の優しい所、本当に見習いたいと思う。先生が好きな一番の理由かも・・・

「はい、先生!絵里が本当にご迷惑おかけしました。あたしは大丈夫ですよ!」

先生にこれ以上心配かけてられないし、実際あたしは、こうして曽我部先生と一緒にいれるだけで幸せだから・・・さっきの泣きたかった気持ちがウソみたいに、あたしの心はパーッと穏やかに晴れている。
やっぱり曽我部先生と一緒にいることが、あたしにとっては最高の幸せだな〜。これで先生と気持ちが同じだったらどんなに嬉しいだろう・・・・

「そうか!それは良かった!!あぁ〜、君の部屋はここだったかな?」
「はい!それじゃあ、ありがとうございました!先生。改めてお休みなさい!」
「ウム!!お休み、ふーせー君!また明日ね!」

そうして曽我部先生は、最後に笑顔で手を振ってくれた。もう、ホントに幸せ〜!!今の曽我部先生の笑顔、あたし絶対に忘れない!寝る時もずーっと、先生の今の笑顔思い浮かべて寝るんだ〜。
そうしてあたしは、最高にウキウキ気分で同じ部屋の子と少しお喋りしてから眠りについた。遠く曽我部先生のことを想いながら・・・・・

 

こうして、あたしの4泊5日の修学旅行が終わったんだけど・・・・学校に着いてから自宅までの道のりを、お兄ちゃんと話しながら一緒に歩いていた。一昨日の告白大会の時に、絵里が急遽曽我部先生連れてきたこととかを教えたら、お兄ちゃん驚いてたよ。まぁ〜、無理もないけどさ!

「・・先生、よくそこに来てくれたね。」
「うん。でもね、「告白大会で」って言わなかったみたいだよ〜?そういえばあたしのことがどうこう言ってたけど、何のことだろ?」
「・・・・女子バレー部の人達って、勘が鋭いんだね。」
「えぇっ?そう〜?まぁ、突然行動に出たり変な所で楽しむ傾向とかは強いけど・・・・」
「・・和。それは、女子バレー部の人達が、和の恋を応援してるからだと思う。2日目の班行動の時も、明らかに和と曽我部先生に気を遣ってたよね。」

アハハハハハ、確かに。あれにはあたしも未だに驚いちゃってるよ〜。

「ねぇ〜!!ビックリしちゃったよ〜、いきなり「デート」とか言い出すんだも〜ん。しかも絵里には彼氏君がいるんだよ〜?どこをどうすればデートになるんだか・・・・」
「・・・それも、女子バレー部の人達の作戦だと思う。俺には出来ないな〜、あんなこと・・・・」
「お兄ちゃんがそんなことやったら、あたしお兄ちゃん見る目変わるよ?」
「・・じゃあ、今度やってみようかな。」
「誰にやるのよ、誰に!!!」

そうしてあたしとお兄ちゃんは笑い合った。でもお兄ちゃんの場合、「笑う」って言うより「クスッと微笑んだ」っていう表現の方が正しいかもしれない。そもそもお兄ちゃん、あんまり微笑むこと自体少ないからな〜。珍しいかも・・・

「えっ?和にするんじゃないの?」
「タンマ〜!!あたしとお兄ちゃんがデートとかってあり得ないでしょがーーー!!」
「そう?曽我部先生には、意外と効果的だと思うんだけど・・・・」
「ウソだ〜。だってお兄ちゃんだよ!?分かってる!?」
「うん、自覚してる・・・・・そういえば、俺も和に言わなきゃいけないことがあったんだった。」
「えっ?何?」

気になる〜。一体何だろう?とうとう好きな人が出来たとか〜!?
でも意に反して、お兄ちゃんはあたしが考えていたこととは違う、でも羨ましいことをサラッと言ってくれた。

「・・曽我部先生と一緒に、温泉入った。」
「えぇっ!?イイなぁ〜!!!」
「混浴だったら、一緒に入れたかもね。」
「ウッ・・・でも、恥ずかしいよ。温水プールで先生と遭遇した時も恥ずかしかったんだから・・・・」

このことも、さっきお兄ちゃんに報告済みだったりする。
どうでもイイことだけど、あの時の曽我部先生すごい勢いでダッシュしてたよね〜。あたし走ることにはそれなりに自信あるから、今更だけど競争したかったかも〜。

「・・・そういえば、曽我部先生が気にしてた。どうしてスクール水着じゃないのかって・・・・」
「ウソッ!?ヤダーーーーッ!!やっぱりスクール水着の方が良かったかな〜。」
「・・ホテルのプール使用説明の時に、「学校指定の水着じゃなくてもいい」って言ってたことは、俺も何となく覚えてる。だからなの?」
「まぁ、そうなんだけど・・・ほら〜、絵里とかバレー部の子って彼氏君持ちの人が多くてさ。デートで海とかよく行くから、毎年水着買ってるんだって。そんなワケでスクール水着じゃなくて自分の自慢の水着持ってく〜、なんて張り切ってたから、あたしも意味もなく張り切っちゃって・・・・」

ウゥ〜ッ、そーゆー時に絵里たちが羨ましいなぁ〜って思う。流されてる孤独なあたしって悲しい・・・・

「・・・プッ、そうなんだ。和らしい。」
「お、お兄ちゃん!?またそうして笑う!!どうせあたしは片思いだもん!!!」

お兄ちゃんのバカバカーーーー!!片思いってつらいんだからね〜!!

「・・片思いだって、本当に思ってるの?」

お兄ちゃんが驚きながらそう尋ねてきた。そんなこと言われたら、逆にあたしが驚いちゃうじゃない!!

「当たり前だよ〜!!だって曽我部先生だよ!?曽我部先生!!先生なんだよ!?しかも超モテモテだし・・・・」
「・・・うん、確かにそうだけど・・・和、もっと自信持っていいと思う。片思いだって諦めるのは、良くないことだと思うから・・・・」

お兄ちゃん・・・・うん、そうだよね。やっぱりお兄ちゃんって、あたしの言って欲しいことズバッと言ってくれるよね〜。お兄ちゃんのその優しさが、あたしにとって何よりの励ましだよ〜。

「ありがと!!お兄ちゃん。もちろん、諦めないよ!!あたし、頑張る!」
「うん・・その調子、和。」

あっ、家が見えてきた。これで、本当の意味で修学旅行が終わりだね。本当に楽しかった!!これからの日常生活、また一杯エンジョイして、ついでに曽我部先生ともっと仲良くなりたいな〜♪これからも一杯頑張ろうっと!!

 

END.


  

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