「先生が好き」 1

ただいま風声和は部活中です。しばらくお待ち下さい、ピンポーン・・・・なんて、ごまかしちゃダメ?エヘヘヘ。でも、部活の時は集中していたいんだ〜。

・・実はね、この間、隣の学校と練習試合したの。一応ウチが勝ったんだけど・・・・あたし、ミスばっかりしちゃって皆に迷惑かけたから、反省してて・・・・今日はその練習試合が終わってからの初部活で、あたしの気合いの入れようはいつも以上のものだった。いつだって気合いは入れてるけど、今日は特に強いかな。
あたしのポジションはセッターなんだ〜。アタッカーにボールトスする役目なんだけど、これが難しいんだよね〜。常に状況を見て判断しなきゃいけないから、余計に・・・・
しかも最近、よりによって試合中や練習中であるにも関わらず、どうしても別のこと考えちゃって・・・・あたしがこの間の練習試合でミスばっかりしたのはそれが原因。そう、曽我部先生のことだよ・・・・・
ここ最近になって、曽我部先生への想いがどんどん強くなってる気がする。もう、この気持ちを我慢してるのが限界にきちゃった感じで・・・どうしよう。練習に集中しなきゃいけないって分かってるのに、自然と曽我部先生のことを考えちゃう。先生のカッコ良い笑顔や、いつも優しく励ましてくれる先生を・・・・
あぁっ、だからダメなんだって!!!こんなことばっかり考えてるから、またミスしてる。ボールトスする方向逆に間違えたなんて、絶対あり得ないから!!
ピーッ!と笛の音が鳴って、バレー部顧問の吉河先生が複雑な表情であたしを見ていた。

「風声、何をしている!!今は羽田にボールをトスしなければならないだろうが!!海原の方に送ってどうする!!」
「すみません!次、お願いします!」

ウゥ〜ッ、ホントにあたしってばおバカ〜。集中しなきゃ!!今だけは、曽我部先生のこと忘れて・・・・

「ドンマイ、和。」
「和、次はちゃんとお願いね!」

絵里を始めとして、皆があたしにそう言ってくれた。あたしはコクンと頷いて、吉河先生の放ったサーブを受けて、トスをして・・・・という練習を幾度もなく繰り返していった。

 

・・・そうして今日の部活も終わったんだけど・・・・ハァ〜。あれから当然ながら吉河先生には沢山お小言もらっちゃったよ。無理もないよね〜・・・・何か、一気に自信喪失した気分。
バレー部の皆は「大丈夫だって!」とか「調子が乗らない時もあるよ。」とか、一杯あたしを励ましてくれて帰ったんだけど・・・・あたしは、まだ帰れない。もっと練習しないと、このままじゃ・・・皆に迷惑かけたままじゃ、ダメだから・・・・
ただでさえスポーツ以外に取り柄がないと自分でも思ってるのに、そのスポーツでさえもこんなんじゃあ、ホントにやってけないじゃん!!何とか、明日までには少しでも直しておかないと・・・・
あたしは自分でボールを上げて、トスの練習を何回もした。ついでにアタックしてみたりもしてね・・・エヘヘヘ。
元々あたし、ライトアタッカーだったんだよね〜。今の星光学園に入ってセッターやり出したから、も〜うよく分かんなくて、1年の頃は先輩に泣きついてたっけ。曽我部先生にも、1年の時から愚痴こぼしてたし・・・・
そう考えてみれば、今のあたしがあるのは曽我部先生のおかげだと思う。先生はいつも優しい言葉で励ましてくれるから、頑張りたいのに・・・・大好きな先生の為に、一杯頑張りたいのに・・・・

「あぁ〜っ!!またトスの方向間違えちゃったよ〜、あり得な〜い!」

仮にレフトアタッカーにトスをしたらってコトでやったんだけど、どうして右に出すかな〜、あたし〜。絶対におかしい!!!やっぱり曽我部先生のこと考えちゃったからかな〜・・・・ウゥッ、今だけは曽我部先生のこと忘れなきゃ!!
そうしてまた自分でボールを上げてトス練習。それを幾度となく繰り返していたら・・・・やってしまった。

「あいたっ!!」

指に走る嫌な痛み。うわ〜っ、突き指しちゃったよ〜、どうしよう〜!!よりによって右手の人差し指だし。ウゥッ、力が入んない・・・・!
あたし、本当にバカすぎ!!突き指したら何にも出来ないじゃん!!ここの所突き指なんてしてなかったのに、油断しすぎだから!!
・・・マジで最悪なんだけど〜。もう部活終了時間はとっくに過ぎてるから、きっと保健室開いてないだろうし・・・・どうしよう。とにかくまずは冷やすしかないよね!水・・確か保健室行く途中の職員室沿いにあった気がする!ってことで、あたしはまともに練習の成果も出せないまま、ボールを片付けてから体育館の電気を消して校舎の方に行った。
もう学校の中も半分以上が暗くなってる。保健室、きっと開いてないよね・・・・コンコンと保健室のドアをノックしてみたけど、扉の隙間から明かりっぽいものは見えないし、案の定反応0だし。
仕方なく、あたしが職員室沿いの水道の水で指を冷やしていた、その時だった。

「おやや〜?Ms.ふーせー君じゃないか〜!!」
「!曽我部先生・・・・」
「フフフフ〜。もう部活終了時間過ぎたけど、君はいつでも一生懸命だね!偉い、偉い!!」

あぁっ、曽我部先生!!今一番会いたかった先生が、ここにいた・・・・!!そう思うと、あたしは自然と体が動いて・・・指の水もまともに拭き取らずに、自然と先生に抱き着いてしまっていた。
もう曽我部先生への気持ちが止まらなかったのはもちろん、試合でミスばっかりしたし、今日の練習では全く何も収穫出来ないまま突き指しちゃったし・・・・色々なことを考えると、悔しくて、情けなくて・・・・あたしは、目からあふれ出てくる涙を止めることが出来なかった。ただ、先生の胸に顔を埋めて泣くことしか出来なかった。

「やや〜っ!?ふ、ふーせー君!?どうしたの、大丈夫!?」

先生は、あたしの頭に手を置いてそう言ってくれたんだけど・・・・ダメ。あたし、泣くことしか出来なくて、何も喋れない・・・・!!

「ウッ!ヒック・・・せん、せ。あたし・・・!」
「ふーせー君・・・・よしよし。」

先生はそれ以上何も聞こうとせずに、あたしの頭を優しくなでてくれた。曽我部先生の手が、大きくて、とても暖かくて・・・・あたしは、最高に嬉しかった。

「せんせぇ・・・・ウッ・・とつ、ぜん・・・すみません・・・!!」
「ウム、構わないよ。君が落ち着くまでずっとここにいるから、安心しなさい。」
「はい・・・・!!」

先生がずっとここにいてくれるって言ってくれたことが、とても嬉しかった。またあたし、曽我部先生に迷惑かけちゃったけど・・・・今は、ただこうして泣くことしか出来なかった・・・・・


  

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