「先生が好き」 2 「・・・先生・・・すみませんでした。」 先生・・・敢えて、あたしが泣いた理由は聞かないんだね。それも先生の優しさなんだなって思うと、胸が痛くなってしまった。 「・・・大丈夫、です・・・・あの。長時間お引止めしてしまって、本当にすみませんでした!!」 あたしはもう謝ることしか出来なかった。だって曽我部先生は、ずっとあたしの傍にいて頭をなでてくれたから・・・・ 「・・ふーせー君、そんなに謝らないで。私のことなら心配しなくていいよ!」 今頃になって、突き指した人差し指の痛さを思い出した。ウゥッ、このまま骨が固まっちゃいそうで怖いんだよね〜・・・・ 「えっ?あぁ、養護の先生はお帰りになってしまって、閉まっているけど・・・まさかふーせー君、怪我したのかい!?」 先生はそう言って、職員室に入ってしまった。え・・・そんな、保健室の鍵借りたって、どうするの?曽我部先生、養護の先生じゃないのに・・・・ 「ふーせー君!!早く来なさい!!」 ヒャアッ!!先生、マジで怒ってる!?あたしは慌てて「はいっ!」って返事をして、保健室に入って扉を閉めた。 「失礼しま〜す。」 先生はすっかり養護の先生の座っている所にいて、色々用意をしていた。しかも先生って白衣着てるから、妙にここと馴染んでるのがすごい・・・・ 「えぇっ!?先生、そんなっ。無理ですよ!!」 意外すぎーーーー!!!ホントに驚いちゃったよ〜、あたし〜。もう泣いた顔を曽我部先生に見せちゃってるのはこの際どうでも良くなっちゃって、あたしはただ曽我部先生を見ることしか出来なかった。曽我部先生はようやくいつもの優しい笑顔を浮かべてくれた。 「本当さ!!英語の教師になったのは泣く泣くなんだぞ〜?それに、養護教諭は圧倒的に女性の先生が多いよね。その点、男の私は不利だったから化学の道を目指したんだけど、見事に落ちるし・・・・」 そうなんだ〜。確かに養護の先生って、色んな薬扱ったりしてるけど・・・それと化学って関係あるのかな?まぁ、関係がない訳じゃないだろうけど・・・・あぁ〜、ダメだ。その手のコトは考えただけて頭痛くなる・・・・ 「そうだったんですか〜。初めて知りました・・・・」 あたしはそう言って、先生に右手を差し出した。その次の瞬間、先生の大きくて暖かい手があたしの右手に触れてきた。 「そうか〜。それはまた、一番大事な所を突き指してしまったね〜。どれどれ・・・・」 先生はそう言いながら、あたしの指を念入りによく見ていた。アウ、先生に見られてるってだけでこんなに緊張してる。あたしのドキドキ、先生に聞こえてないかな〜って心配だよ〜。 「・・・ごめんね、すぐに君の突き指に気付いてあげれなくて・・・・だから私が声をかけた時、君は水で指を冷やしていたんだね。」 先生はそう言いながら、まずは湿布を張ってくれた。うわっ、つめたっ!! 「ウッ・・・」 うわ〜っ、湿布がしみるよ〜!!痛くて冷たくてどうしようって感じ。ここの所本当に突き指なんてしてなかったから、久々に味わう痛みだった。 「ウム、痛いだろうね〜、これは。でも、我慢だよ?ふーせー君!」 先生は優しくそう言いながら、あたしの突き指した右手人差し指に添え木をあてて、包帯で強く固定してくれたんだけど・・・・ 「こんな所かな〜。今日1日つらいだろうけど、明日は病院に行ってしっかり見てもらうんだよ?よろしい?」 あたしは椅子から立ち上がって、しっかり先生にお辞儀してそう言った。ハァ〜、今日は先生に迷惑かけまくっちゃったな〜。本当にごめんなさい、先生・・・・ 「いやいや、礼には及ばないよ!当然のことをしたまでさ!!ところでふーせー君。もう7時になろうとしてるんだけど、1人で帰って大丈夫?私の車で良ければ乗せていくよ?」 そうしてあたしと曽我部先生は保健室を出た。先生が最後に電気を消して、扉を閉めて鍵をかけて完了!「少しここで待っててね〜。」と曽我部先生が言って、職員室に行ったんだけど・・・・先生を待ってる間がとにかく楽しくて、嬉しくて仕方なかった。先生の車乗るの初めてだよ〜!?ワクワクしちゃう! 「さ、行こうか!ふーせー君!!」 もうこの時間だと、通常の昇降口はとっくに鍵がかかってる。だからいつも部活で残ってるあたし達は、毎日この職員玄関から帰ってるから、このことには慣れてたりするんだ〜。それでも曽我部先生と一緒にこの職員玄関利用するのって新鮮な気分かも。 「ふーせー君、大丈夫?寒くない?」 ・・・でも、曽我部先生ってオヤジの1歩手前だよねってあたしは密かに思ってる。だって29歳・・だったよね?曽我部先生って。 「ですけど、先生は限りなくオヤジにちか・・・・」 わぁっ!!先生いきなりすごい勢いであたしに言ってきたから、ビックリしちゃったよ〜。 「は、はい。分かりました・・・・」 先生はそう言って、助手席のドアを開けてくれた。うわぁ〜っ、何かお姫様みたい!!あたしはありがたく先生の行為に甘えて先に乗らせてもらった。先生、さっすが〜!! 「さすがに寒いね〜。待っててね、すぐに暖房付けるから!」 そうして曽我部先生はエンジンを入れて、暖房を付けてくれた。あっ、少しだけ暖かいかも〜。あたしは暖房の出ている所に左手のみ近付けた。突き指してる右手は暖めるの厳禁だからね〜。 「先生、本当にありがとうございます!あたしの家、分かりますか?」 ウソッ!?お兄ちゃんが!?聞いたことないってば!! 「そうなんですか!?すみません!!お兄ちゃんが、そんなこと・・・・」 ・・・お兄ちゃん以外にも、先生の車に乗った生徒いるんだ・・・・イイなぁ〜。あたしは嫉妬を覚えながらも、先生に平静を装って聞いてみた。 「そうなんですか〜。今までお兄ちゃん以外には、誰が乗ったんですか?」 チアリーディング部の部長!?マジで!?あたしにとっては先輩だけど・・・・スポーツやる上で応援は欠かせないから、チアリーディング部の大体の人は知ってる。取り分け部長さんともなれば、尚更で・・・・ 「そうなんですか〜。チアリーディング部の部長さんって、とっても奇麗ですよね〜。」 あれ?あたしとしては先生が普通に頷いてくれるモノだとばかり思ってたから、ビックリしちゃった。 「・・先生って、理想高いんですか?」 ウッ、もうちょっとだったのに〜。でも意外だなぁ〜、あのチアリーディング部の部長さんのルックス「イマイチ」って思ってるんだったら、あたしなんてもっと見れない部類の顔とか思われてるよね〜?そりゃ人間、顔だけが全てじゃないけどさ・・・・曽我部先生がこれだけカッコ良い人だから、やっぱり自分に釣り合う位の美人さんじゃないとダメなのかも。 |