どれほど打ち合ったのだろう。一瞬のような永遠のような時間をこえて。
ふたりともが絶妙に激しく刃を合わせたとき、きらめきが散った。
刃毀れするような現の剣ではないけれど。
きれいだ、とそれを振う意識のよそで天化は感じた。
見事だね、と楊ゼンが囁くのが聞こえた。
宝剣がひときわ明るく輝いている。
二人はどちらからともなく動きを止めた。
快活で前向きで鮮やかなその光。
きれいだ、と思う自分を天化は知る。
だれかによく似たその単純で見事なひかり。
そのだれかはもういない。
悲しいさ。
自分が確実に知っている、真実がひとつここにある。
気がつけば莫邪IIの光はまたもとのまま。
輝きは一瞬のものなのだ。
人が永遠でないように。
だから。
だから生きるのだ。
光が永遠でないように。
自分に残された時間を数えながら。
きれい、だったさ。宝剣に視線を落とし小さく天化は呟いた。
「天化くん?」
三尖刀を下ろし呼びかける楊ゼンを、顔を上げて真っ直ぐ見遣る。
「ありがとうさ、楊ゼンさん」
そうして収める莫邪IIのひかり。手の中にしっかりと重みを残すその宝剣。
俺っちはこれを使いこなせる。
天化が揺らぎなく手にしているものはいくつかある。
失ったものは悲しめばいい。それはほんとうのことだから。
知らないことを知ったとは、つまりこのさき知ることができると知ったのだから。
まだ少し、時間はあるはず。
師父は最期の瞬間まで確かに生きて笑っていたに違いない。
俺っちもそう生きる。
莫邪の宝剣IIを、天化はぐっと固く握った。
了
最終話。
どうにか書きたいことを書き切らせていただきました。
長いあいだお付き合いいただきまして、ほんとうにありがとうございました。