サンタクロースってほんとにいるの?  .
 


クリスマスが近づいた週末 プレートともみの木

お昼ご飯を終えて片付けをしていた道徳と天化の耳に届いたのは、訪いの声。
「道徳、おらぬのか?」

「あ、太公望スースさ!」

「おい、天化、気をつけ・・」
がしゃん!

迎えに出ようと慌てた天化がくるっと振り向いたとき、重ねて持っていたお皿がつるっと滑って。
当たり所が悪かったのか、床の上で見るも無残に粉々になってしまいました。

「大丈夫か?」
「う・・・ごめんなさいさ」
「形あるものはいつかは壊れるものなんだ!気にするな!」

怪我はないようですがしょげ返っている天化を、道徳は少々良心の呵責を覚えながら 慰めました。
なぜって、道徳は太公望が訪ねてきたことに、もう先から気がついていたからです。気配を読んで声がかかる前に天化を迎えに出すことも容易いことではあったのですが、来訪の目的を考えるとその気になれずにちょっとばかり放ってしまったのでした。
そしてもうひとつ、天化が欲しがっている言葉を道徳はそれと知って掛けてやらなかったから。
それが何か分かっていても、道徳はどうしても言えなかったのです。

「また次から気をつければいいのさっ!ここは俺が片付けとくから、太公望を迎えに行ってきてくれ」
ということで洞府の入り口で太公望が眼にしたのは、すこしばかり落ち込んでいる天化なのでした。

「いらっしゃいませさ、太公望師叔」
「・・・?どうした、天化?道徳に叱られでもしたのか?」

天化は首を振りました。
そう、別に叱られたわけじゃありません。逆に道徳は慰めてくれたのです、落ち込む必要なんて全然ないのですが。太公望が「話してみよ」と視線で唆すので、天化はつい今しがたの出来事を話したのでした。

「俺っちいい子じゃないさぁ・・・サンタさん来ないさ?」
話し終えてしまうと天化は我慢できなくて、さっきから気になっていた一言を吐き出しました。さっき道徳に否定して欲しかった、ひとことを。
とはいえ相手は太公望、慰めてもらうのに適当な人選とはたぶん言えないでしょう。
太公望はきら、と目を光らせて小さな天化に答えたのでした。

「おぬしがいい子か悪い子かは分からぬが・・・天化、サンタクロースのためにいい子でいるのか?」
そういうのはサンタクロースに見抜かれるんじゃないかのう。
ひょほほ、と軽い口調で言い添えます。
「わ〜っ!太公望、お前こんな小さな子に何を言い出すんだ?」
二人が遅いので様子を見に来た道徳が、慌てて割って入りました。

「おお、道徳。わしは別に嘘は教えておらぬぞ。
しかし紫陽洞に行けば面白いものが見れると言う話は確かだったな」
「あのなあ・・・で、用件は何なんだ、太公望」
「もう8割方済んだようなものだが・・・青峯山のもみの木を貰ってくるように、普賢に頼まれてな」
「はあ・・・って、なんでわざわざうちから?!」
「何を言っておる、そのほうが面白いからに決まっておろうが」
「何考えてるんだお前ら!」

師父たちの話をよそに、天化は太公望の言葉をひとりで考えていました。
・・・・?・・・???
いい子じゃないとサンタクロースは来ないけど、いい子にしててもサンタクロースは来ないさ?
わっかんないさ〜!

「コーチ、俺っちいい子にしてないほうがいいのさ?あれ?」
それじゃあやっぱりサンタさんは来なくて。

太公望との言い合いの最中に、ふと裾を引かれて投げかけられた質問。
その困った表情に道徳は思わずきっぱりと宣言してしまいました。
「天化、太公望の言うことなんか聞かなくてもいいぞっ!
普段どおりのお前で十分なんだっ!」

からかうような太公望の視線が、ちょっと痛い。
それはともかく、天化はちょっときょとんとして、それから笑いました。
ほっとした気分の鮮やかな、やんちゃな男の子らしい表情。それを見慣れているはずの道徳が一瞬眼を奪われたくらいです。

「おや、元気になりおったのう・・・面白くない」
「あのな・・・」
太公望は変わらず軽口を叩いていますが、まあ、この道士に乗せられたような気がしないでもありません。道徳は大きく息をついて、手頃なもみの木を選んでやることにしました。

「この木、何にするのさ?」
「クリスマスツリーだよ、天化」
「おぬし、サンタクロースに振り回されて他の事は何も教えておらぬのか?」
太公望のわざとらしい嘆息に、道徳は言い返す言葉がありません。

「あー、その、何だ、飾り付けをするんだよ。ロウソクとか、林檎とか、星とかな」
「どうしてさ?」
子どもの質問は止まりません。
どうして、か、道徳は自分も確かには知らないことに気が付きました。太公望が助け舟を出してくれる気配はありません・・・いえ、太公望に答えさせたらさらにこの場はややこしくなりそうです。道徳と天化の反応を彼は楽しんでいるのですから。

「・・・綺麗な緑だろ、こんなふうにいつも変わらず、今年も、来年も、またクリスマスが来るように、かな」
「ふーん」
納得してくれたことにほっとして、「うちの洞府にも飾るさ!」という声には道徳は頷きました。ここでそれに反対するのは土台無理というものです。そんな理由も、ありませんしね。

大きすぎず若すぎず、美しく茂ったもみの木を2本、3人であれやこれやと選び出して。
賑わしい午後の終わり、結局切り出した木を元始洞まで運んだ道徳に太公望は礼を言ってからにやりとひとこと付け加えました。
「で、道徳。サンタクロースはどうするのだ?」
「?!・・ああっ!」

結局その問題は少しも解決なんかしていなくて。
やっぱり頭を抱えた道徳をすげなく追い払った太公望は、事の次第を普賢真人と冷やかすべく白鶴洞に向かうのでした。




あさってじゃなかったですね(^^ゞ間に合うかな。
割れたお皿はクリスマスプレートじゃないのに、
タイトルが妙なことになってしまいました(^^ゞ。

2006.12.23

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