<作> 坂田靖子 潮出版社 全2巻
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『アジア変幻記』でアジアを、『BEAST TALES』でヨーロッパを描いた作者は、次に何を描いたかというと日本であった。まあ、順当なところというべきなんだろうか。おそらくネタとなったのは今昔物語や御伽草子など、あるいはもっとマイナーな説話なんかを集めてきたのだと思われるが、彼女流に煮込まれてしまっていて、もとがどの作品であるかはもうわからない。ただ単に私が無知だというのもあるけど。
前作よりも「闇」の部分に近い話が多く、民話性が強く息づいている。しかし、そこはそれ、あくまで坂田流ファンタジーであって、全然怖くない。怖くない闇、これが坂田靖子の一つの特徴と言えるかも。彼らのような、人間の理の外にいる者たちに対して、人というものは恐怖と同時に親しみも擁くものだが、彼女の漫画はより後者にウェイトを置いているということなんだろう。
個々の作品としては、カッパやら子鬼やらがでてくるものが面白かった。カッパの出てくる話は、三話オムにパスといった珍しい形態である。カッパにまつわる短い民話を三つ並べてみた、という感じ。内容はおそらく原作に近いと思われる。杉浦日向子の『百物語』に形式としては似ている。(思えばこの漫画自体、『百物語』に似てるぞ)子鬼の話は、道中に鬼に捕らえられた旅人が、「人間の世界に出てみたい。」という子鬼の手引きで鬼の住処を出て、しばらくその子鬼と暮らす話。人間の常識の通じない圧倒的力をもつ存在でありながら、好奇心旺盛な子供でもあるちびっこ鬼がかわいい。風呂が好きな子鬼というのも、この作者ならではというところ。
相変わらずケチの付け所がないが、ずっぽりとはまるような漫画でもない点が難点か。でも、私はかなりはまっちゃってます。夜寝る前になんか、どうですかね。
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