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「おあずけ」 (9)




「よし、わかった」

地の底から沸いてくるような声を聞く。
声も怖いよう、兄貴。

兄貴は、寝台に手と膝をついて支えていた身体を起こし、俺の太もものあたりを跨いで座った。夜着の布越しに、身体の重みと、内股の筋肉の動きがはっきり脚に伝わってくる。
着込んでいた夜着の前を開くから、きれいに筋の乗った胸は薄明るい火の色に照らされ、すっとへこんだ腹の辺りは影になる。蝋燭のほのぐらい灯に慣れた目に、きれいな陰影となって映りこんでくる。

触りたい。いっぱい撫で回して、手のひら全部で楽しみたい。触るごとに、兄貴の顔が変わるのが見たい。「おあずけ」がかかってなきゃ、手を伸ばして抱き込んで、べったりくっついてやるんだけど。今動いたら、このすっばらしい状態を台無しにしちまうだろう。がまんの子…じっと、がまんの子。―――触りてェー。

そっと、目だけで兄貴の様子を伺うと、下着だけ着たまんまだったのを、俺の上に腰を下ろしたまま膝を立てて、面倒くさそうに抜き取っている。夜着は肩にひっかけたままだが、座るときに挟み込んでいた裾を抜き取ったので、裸の尻や内腿のあたりの柔らかい皮膚と、その下で動く筋の感触が、直に触れる。なんだかもう、これだけでも、結構ヤバイ感じに、びくびくきちゃうんですが。

そのまま、俺の脚の上を、少しずつずり上がってきて、肌と肌との擦れる感触がいったん離れて―――
ぎゅっと掴まれる感じがあって、先っぽが、ぐっ、と何かにあたる。

「うひ?ちょっと兄貴―――」

いきなりは、無理だと思うぜぇ!?
兄貴の身体の影になって良くは見えないが、酷く狭い場所に、きつく押し付けられ、押し返され、拒まれるのを感じる。

「あ、つっ、あ」

歪んだ声が、耳に飛び込んでくる。
見あげた顔は、つらそうに眉を寄せていた。
それでも無茶な動きは止ることがなくて、擦るつけるように捻りこむように、立ち上がったものに、入り口をあてがわれる。

「いや、だから、ちょっと待って―――」

まだ、そこには触ってもいねえんだから、入らねえってば。

「いきなり入れんのは、無理だって」

慣らしてからだって、全部入れると、かなり辛そうな顔するのに、無茶したら、本当にケガしちまうからよ。
だって、そこは入っちゃイヤだって言ってるし……いや、そんなとこは、しゃべらねえけどよ、物のたとえでだよ。
自分じゃ分かんないのかもしれないけど、そこに指入れてみれば、ぐるっと筋肉が囲んでるのが分かる。拡げないままで俺のを無理やり入れたら、皮だけじゃなく、筋が切れるって。

へんなとこ、気が短けえなあ、兄貴。
自分からすんのは、よっぽどイヤなのか、それとも単に面倒くさがってんのか、もしかして死ぬほど照れてるのか、本当のところはどうなんだよ。

「兄貴、ちょっと、間をすっ飛ばすのは無理だから―――」

「うるせ…っ、は…あっ」

ほら見ろ、その顔はよっぽど痛てえんじゃねえのか。俺は兄貴を痛い目に合わすのはイヤだって言ってんだろうが。

寝転がっていた身体を起こすと、腹にビリッとした痛みが走った。歯を食い閉めて腹に力を入れ、脱げかかっている夜着の端を引っ張って手繰り寄せ、腕を捕まえて引き寄せる。
兄貴が、俺の上に覆いかぶさるように倒れこんできた。

「っ、この馬鹿」

兄貴があわてて体を起こそうとするのを、肩を捕まえて押さえ、片腕を腰に回して引き止める。

「馬鹿は兄貴だ。てっ―――暴れんなよ。痛てえから」

捕まえている身体の動きが止る。

「放しな」

その声に従わず、腰のあたりの布を捲り上げる。尻をなでると、肩のあたりに顔を埋めてきた。

「逃げねえから、ちっと、手ェ放せ」

腕を緩めると、俺の身体を跨ぐように膝を立て、腹に体重が乗らないよう下半身だけを浮かせた。近くなった膝から腿、尻のあたりを、両手で強めに撫で上げ、撫で下ろす。荒く、緩く。熱っぽい手に、するりと滑らかで、少し冷やっこい感触が返る。痛みのせいで硬くなった筋の感触があるから、少し揉むように力を加えてやる。

「ん―――」

気持ちのよさそうな息が、首筋に落ちてくる。その唇が肩のあたりを吸い、舌が肌を舐めてきた。なにやら微妙に擽ったい。
触っている身体が緩んできたので、尻の割れ目まで、指を辿らせる。そこに触れると、きゅっと締まるような動きが指に伝わった。痛い目に合わされかかった身体が、その主の意思とは別に勝手に竦んでいるんだろう。
くっついている体から、わずかに震えが伝わってくる。

「ったく、無茶すっから」

「うるさい」

「せめて、自分で触るなりなんなりしてからじゃないと、無理だろうがよ」

水っ気がたりないから、指を唾液で濡らす。周りの薄い皮膚を、円を描くように撫でてやる。水分を足しながら、指の腹を押し込むようにして慣らしていく。

「ん、っ、んなとこ触りたくねえ。文句言うなら、おまえとは二度とやらん」

脅し文句のようだが、声が濡れているので、ただ言ってみているだけなのがわかる。ほんとうに脅しをかけられるときは、声も顔もヒヤッとするほど冷たいからなあ。
兄貴ったら、わがままさんなんだからー。

もう一方の手を身体と身体の間に差し込んで探ると、それはすっかり立ち上がって、濡れている。それを手に収め、揉みこむ。反射的に揺れる腰の後ろに指を立ててあてる。掻き分けるようにして、ずるっと入り込む。

「あ―――」

鼻にかかった声。イイよなあ、兄貴の声。耳から背骨伝って、腰にくるんだよ。
動きを止めて、中の熱さと、ひくつく動きを楽しむ。

「ライナス、早く―――」

めずらしくも、先をせがまれる。
してもらってる間に、兄貴のほうも興奮してた、ってこと?張り切っちゃうよ、俺。
纏わる壁を擦りながら、奥に入り込み、引き出す。俺の手はでかいから、結構奥のほうまで入り込める。何度も、入り口の締め付ける筋に指の節を引っ掛けるように、捻りながら入れる。

兄貴が、息を吸うのが、震える声になって聞こえた。緩く握っているだけの手に時折、こすりつけるような動き。
だいぶ柔らかくなってきたから、指を増やす。
一番いい、とわかっている場所に指先を置く。少し力を加えて止める。

「やだ…それ…あ、あ」

上になっている体が震え、そこを指に押し付けるように、腰が動いてきた。

「やらしい、兄貴」

耳に声を吹き込んでやると、その動きが止る。止ったところで、指をそろえて強く擦ってやる。

「はっ、あっ」

俺の肩に、額を強く押し付けてきた。
中も外も、ぬるぬると潤ってきている。硬かった入り口のあたりが解けている。もう1本、入り込んだ指に沿わせて、傷つけないように入れる。

兄貴の身体が反り、上体が俺から離れる。伏せていた顔が俺の目の前に晒される。目を硬く瞑り、入り込む質量に耐えている。その表情は、ゆがんでいても、ひどくきれいだ。俺を受け入れようと、息と声を吐き出して、身体を緩めようとしている。
指に、きつく圧迫される感じが返る。無理には入れない。拡げられるのに、身体が慣れてくるのを待つ。止めていたもう一方の手をゆっくり動かし、気を散らさせて、手伝ってやる。

「ライナス、もういい、から」

うん、そろそろ、大丈夫かも。
そろそろと指を抜く。兄貴が、詰めてしまっていたらしい息を吐き出しながら、身体を起こす。離れていく肌の感触が少し惜しい。

どうせだから、ついでに……

「舐めようか」

俺の顔の上に跨ってくれれば―――

「いやだ」
だよねー。

兄貴は、俺の腰を両脚で挟みつけて跨り、脱げ掛かっていた夜着を脱ぎ落として、それを、俺の顔の上に放り投げてきた。

「うわ」

「動くな」

ああっ?
これから、夢のようにステキなシロモノが拝めるってのに―――
そりゃないよ、兄貴。



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