「騎士の祝宴」 (8)
奥深く入り込んだまま、円を描くようにゆっくりと動かれる。拡げられた皮膚と粘膜を宥めるような、ぬるぬると撫でられるような甘い感覚。
「ん…っ、んあ―――」
上顎のあたりをかすめるように、声が出る。身体の奥深くを貫かれ、かき回される感覚が、混乱する意識をさらに炙る。目をきつく閉じると、つながった部分から広がってくる奇妙な感覚が強くなる。寒気に似たその感じが背骨伝いに上がってきて、頭の中が痺れた。
「や…ああ、そんな、するな…あ」
「嫌なのか」
い、嫌とか嫌じゃないとか、そういう問題ではなくて―――
「や、ちが…っ」
「いい?」
耳元で微笑みを含んだ声で聞かれ、ついでに耳たぶを舐められる。
いや、だから、よく分からんというか―――何と言ったらいいのかが分からん、ああ―――私はおかしい。なんだかもう、何もかも良く分からな―――
「あっ、は…あ、あ」
身体をゆらゆらと揺らされるような動きに慣れかけ、内側から溶けるようなじわじわした快感に理性を溶かされる。溶けかかった場所を擦って、ずるりと大きく抜き出され、それを追いかけるように腰が動いた。膝裏を取られる感覚があって、一気に突き上げられる。
「あ…ああ―――っ」
押し出されるようにとんでもない声が上がるが、止めようという気力は残っていなかった。体の中と外とで受け取る感覚を、声にして逃がしてやらないとおかしくなりそうだ。セインの背中を掻き寄せるにして縋りつく。
「ん……あっ…」
突き上げる動きで、自分の腹とセインの腹の間で、立ち上がったものがぬるぬるとこすられ、揉まれる。それがたまらなくて身を捩るようにしたところを、捻れた体の中心を真っ直ぐに貫かれるから、内側の柔らかい壁ににきつく当たって抉られるような感覚かあった。
「ひ――――」
神経を直に擦られるような痛みに似た感覚に、びくびくと身体が跳ねる。
「ここ、いいんだ」
同じ場所を、同じ角度で、確かめるような動きで嬲られる。きつい感覚から逃げようと思っても身体は痺れて動かない。
いや―――だ。おかしくなる。どうなるんだ、私は―――おまえは私をどうしたいんだ。私はいったいどうしたらいいんだ。
「ああ、ああっ、やあ、あ」
がくがくと震える唇を、優しく吸われる。
繰り返し突き上げらる場所が内側から膨れ上がるような気がした。気持良くて、身体の奥が切なくて、どうにもならなくて――――
丸みのある茶色の目が顔を覗き込んでくる。目を合わせたまま、さらに同じ場所を強く突かれた。セインの目が、自分の乱れきったさまを、じっと見ている。
「セイン―――」
たまらなくなって、名前を呼ぶ。
「あ、いい、あ、あ」
絶え間なく漏れる、意味を成さない乱れた音の羅列。
目を見開くのに、視界が白く滲んだ。ぐちゃぐちゃと熱く濡れた場所を突かれている。
気持ちいい、気持ちいい、たまらない。
「ああ―――あ―――」
背を反らせ、もがきながら、溜まった熱を吐き出す。濡れた熱さが腹のあたりに広がるのを感じ、つりそうに筋の張っていた四肢から、一気に力が抜ける。
「はあ、あ、は…」
身体全体が痺れたような、泡立つような感覚。
打ち寄せてきていた快感の波が、少しずつ引いていく。
深く入り込まれた内側の粘膜が、ひくひくと締め付けるような動きを繰り返すのが、自分でもわかった。
「ん―――気持いい」
耳元で、濡れた声がして、心臓が跳ねる。身体の中にあるものは、まだはっきりと硬く、熱い。くちゃ、と濡れた音がして、腹と腹が擦れる。
達して力の入らない体の中、ひくつく粘膜を掻き分けるように突きこまれ、掠れた声を上げる。
「中、出してもいい?」
乱れきった声が聞いてくるのが愛しかった。答える代わりに、セインの首を抱き寄せ、髪に指を差し入れる。応えるように強い突き上げがきた。荒い息が首筋にかかってくる。身体のほうが勝手に、入り込んでくる熱いものを締め付け、物欲しげに動めくのを感じる。自分の身体の乱れきった反応を、嫌だとは思わなかった。
セインだから―――こうやって抱き合う相手がセインだから、私はこの行為を受け入れる。同じ男として、騎士として、友人として、このような立場に置かれるのは、少しばかり癪なことではあるが―――
「は、っあ、セイン、早く―――」
達した後だというのに、繋がったままで感じる、飢え、のようなもの。
満たせるのは、きっと、この男しかいない。
限界まで開かれ、強く打ちつけられ、いっぱいにされて、自分を抱く男のことしか考えられなる。
私はおまえが好きだ。好きで好きで、おかしくなりそうだ。今まで一度も、こんなふうに誰かを好きだと思ったことは―――無い。こんなふうに、おまえの傍にいられるのは、とても嬉しい。こんなこと面と向かって言えはしないが。
溶けきった内側をかき回され、動きを合わせながら、喘ぐ。強く抱きしめられて背が反り、奥深くに熱が広がるのを感じる。
「あ―――」
中を擦られながら、熱く溶けた快感のすべてを受け入れる。ぐちゅぐちゅと濡れきった感覚に、ぶるっと身体が震えた。抱き合ったまま動きを止めると、自分と相手の荒い息が聞こえ、乱れきった鼓動を感じる。身体の中心から広がってくる気だるさはひどく甘くて、身を任せてしまうと目を開けるのもままならない。
「は…あ」
溜息をつきながら、セインが離れていく。抜き出される感覚は切なくて身体が震えた。身体が寝台に貼りつくように重くて、仰向けに寝転がったまま動けない。ただ荒い呼吸だけを繰り返していると、背中から腕がまわってきて、引き寄せられ、抱き込まれる。背中に感じる温みが気持ちよくて、溜息をつく。
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