「あらら、灯滝さんもフッちゃうんだ。真面目も度を越すと一生カノジョできないよ? 石丸クン〜」
 灯滝が去った教室には、モノクマが現れていた。先の灯滝と同様に石丸を真正面に捉え、右手を口元にやりながら茶化すように喋りかける。
 石丸は無言だったが、諸悪の根元が目の前に来ていることは認識していた。
「ま、本当に会いたい人はもう天国だもんね。いや、地獄かなあ? なんたって人殺しだもんね。しかも結果的に二人も殺しちゃった人だよね」
 オーバーに全身で天地を表現し、モノクマはくるくると石丸の前で回っていた。
 諸悪の根元と認識していても、石丸は直立不動を崩さなかった。意地の悪い挑発的な発言にも表立った反応は見せなかったが、内心では傷口を針で突付かれる痛みを堪えていた。

「うぷぷ……そんな大和田クンにはもう会えないけどさ、大和田クンが殺したはずの不二咲クンの元気な“姿”には……会えるかもしれないよ……?」
 モノクマは少しずつ喋りを遅めながら、石丸の様子を窺い見た。
 魔法の言葉は思惑通り、効果てきめんだった。何も映そうとしていなかった瞳が、モノクマを捉えようと動いていた。
「……本当か? 不二咲くんに……会えるのか……?」
「ボクは嘘なんて付いていないよ。その元気な不二咲クンとは、お喋りだってできるらしいよ? でも……知ってるのに何も話さなかった灯滝さんて、案外イジワルだよね。ヤサシイ“苗木先生”にでも聞いてみたら? うぷぷぷ……」


 石丸は教室を出た。少しふらつく足をゆっくりと動かし寄宿舎に向かった。
 モノクマは彼に付いて行かなかった。モノクマとして姿がなくとも、黒幕には監視カメラという“目”が至る所にある。着実に進む姿をモニターで確認していた。
 目当ての個室の前に立ち、石丸はインターホンを押した。ほどなくドアが開くと、許可も聞かないうちに入室していった。
「……本当か? 不二咲くんと会えるって……」
 苗木は親切でお人好しの凡人だ。壊れかけの石丸が訴えかければ、必ず“例のもの”に引き合わせる。

 それは黒幕の予想に違わず当然の結果だったが、その後脱衣場から廊下に飛び出てきた“生まれ変わったような”石丸の姿は予想外だった。
「こ、こんな姿……っ、大和田が生きてたらどんな顔したか! 本人が絶望から飛び出しちゃったのは癪だけど、コレ別ベクトルで周りに絶望振り撒くんじゃん!? うぷぷぷぷぷ……!」
 何もかも想定内で進む展開ではツマラナイ――。入念な下準備の成果とハプニングを、黒幕は一人愉しんでいた。

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