モノクマのいなくなった学級裁判場から引き上げようとすると、朝日奈さんは躊躇いの表情を見せた。モノクマの意地の悪い仕掛けが絡んでいたとはいえ、自分の思い込みで私たちを道連れにしかけたことを後ろめたく感じているようだった。
「本当に……ごめんなさい……」
「さっき葉隠くんも言ってたけど、誰も朝日奈さんを責められない、責めないよ。だから、大神さんの想いに応えられるように……一緒に前を向こう」
「いつまで謝っているつもりだ……それで最後にしろ……お前に何度も謝罪されるほど、俺は落ちぶれていない……」
 十神くんなりの言葉を聞いて、朝日奈さんは謝るのをやめ、少し照れたように顔を上げた。
 数日に渡った私たちの不和は、ここで全て和解できたのだった。

 ……だけどそれを“攻略フラグ”と受け取ったジェノサイダーは、朝日奈さんに噛みつかんばかりに牽制した。
「そんな訳ないじゃん! 誰が……あんな“かませメガネ”を……!」
「かませ……メガネ……?」
 全力否定する朝日奈さんの絶妙な例えに、かませメガネこと十神くんは即刻彼女と言い合いを始めてしまった。それすら羨ましがるジェノサイダーも交じり……しばらく収拾がつかない様子を見ることとなった。





「いやー! それにしてもまた灯滝っちの飯を食えるとは! なんかもう、今まで以上に美味い気がするべ! 今日も元気でご飯が美味いっ」
 ウキウキという擬音語がぴったりなテンションで、葉隠くんは遅い夕食を頬張っていた。
 私はというと、厨房の用事も片付いたところで話す相手が欲しいと言われ、一緒にご飯をつついていた。
 学級裁判を終えると、葉隠くんと気まずくなったことが嘘のようだった。
 ただ私は、まだ葉隠くんという存在をわかりかねていて、とにかくありのままの彼に接していくしかないんだなあと、謎の悟りを始めているところだった。

「一人で生き残ってもオメーの料理食えんと思ったら……学級裁判てなんて残酷なんだって、あの時は痛感したべ……」
 しみじみ語る葉隠くんから、やっぱり私にくっついている利が欲しいだけなんだと感じたところで、数時間前の言葉を思い出した。
「もしかして……葉隠くんが学級裁判の前に“どっちも取りたくても片方は取れない”って話してたのってさ……」
「あれは、俺の命と灯滝っちの飯なら、自分を取るって話だべ。なんせ死んだら飯どころじゃねーからなっ!」

 ……少し間をもって、そっか、とだけ返した。
 自分の命と天秤していたのが他の人の命ではないのが、ものすごく葉隠くんらしかった。
 葉隠くんとはそういう人なのだ。考えの軸はいつでも自分で、自分に正直で、都合の悪いことを引きずらない。
 普通はもっと他人や世間や常識に動かされるところが、彼はそうではない。それだけ心に留めておけば、うまくやっていけるんじゃないかと思った。


 葉隠くんが上機嫌なこともあって、私は取り留めのない話の聞き役になって食事は進んだ。
「……おやっ、くれんのか?」
「美味しいって食べてくれる人にはあげたくなるんだよ」
「ほほう……。サンキューだべ。俺は貰えるもんは貰っとく主義だべ。」
 食べ終わりそうな葉隠くんに、私は自分のおかずを分けた。昨日からの月経痛で、食が進まなかった。動けているので問題はないものの、鎮痛剤で食欲は戻らない。

「さっきは……もし灯滝っちが死んでもオメーの飯は一生忘れんって、噛み締めてたべ。……今もだな。だから、もう忘れん。」
「ありがとう、料理人冥利に尽きるよ」
 自分の料理を気に入ってくれている人はそれなりにいても、面と向かってそこまで言われたことはなかった。仕事を評価してくれると、やっぱり嬉しかった。


灯滝っち、これからも美味い飯をよろしくな。腹とかあったかくして寝るといいべ」
 おやすみ、と言って葉隠くんは食堂から出て行った。時計を見れば、夜時間まであと数十分だった。
 ……ご飯のためだろうけど、気遣われた気がする。私の内臓が欲しいと言ってた人とは思えない。本当に昨日の頼みがなかったことになっているのか……。
 いやいや、でも葉隠くんだ。ナントカ籍関係はまだわからないし、内臓の品質保持のためかもしれない。

 何にせよ、それはここを出られた時の話だ。今は明日のために準備をして休むほうが有意義だと切り替えた。
 片付けて、部屋に帰ろう。お腹も痛いし、葉隠くんの言うようにあったかくして寝てしまおう。
 ……と考えたところで、ふと思った。
 葉隠くんは、もしや……私の不調に気付いていたんだろうか。
 もし、そうなら、どこまで……。体調不良だけか、月の使者もか、ひいては占い的中まで……?
 気付かず偶然の発言なのか……気付いても敢えて具体的に言わなかったのか……。
 意味深な言葉を思い返してぐるぐるする。……寝るまで考えてしまいそうだった。



>>>CHAPTER4_END


【 DEAD 】
・大神さくら a.k.a“超高校級の格闘家”
 加害者/被害者:服毒による自殺
and...アルターエゴ a.k.a AI(不二咲千尋製)
 オシオキ・ショベルの達人


>>>生き残りメンバー 残り7人

>>>To Be Continued.

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