アマガミ
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SLGファン待望の新作登場!
TLSシリーズ最新作が満を持して登場しました(TLSって何?という方はキミキスレビューを御覧下さい)。今にも消えるのではないかと心配させながら、しぶとく生き残り続けるコンシュマーオリジナルギャルゲー。ときメモが沈黙を続ける中、希望の光と言えるのは本シリーズとメモオフくらいになってしまいました。つまり、アマガミがこけたらコンシュマーゲームはいよいよもって消滅の秒読み段階に突入することになるのです。そんな重責を負いながら、アマガミは発売されました。しかし、私は心配していませんでした。キミキスが予想以上の出来だったということもありますが、本作がSLGであるという点が最たる理由です。現在、ギャルゲーのSLGは絶滅寸前ですが、かつては一世を風靡していたジャンルですし、確実に一定の需要が見込まれるからです。絶滅寸前ということは、逆に埋没する危険性を考慮しなくて良いわけで、その点もプラスに働くはずです。そんなわけで、90年代〜00年代初頭にかけてSLGに熱中した私としては、大いに期待して望んだアマガミ。結論から言えば今回も大当たりでした。 ボリューム抜群のゲーム性とかつてない演出力 ■シナリオ 前回同様スキルート、ナカヨシルートに分かれており、その中でグッドエンド、バッドエンドがあります。ルート毎に独自のイベントを用意しており、分岐も多いことから、シミュレーションでありながらシナリオにもかなり配慮していることが分かります。イベントも量が多いだけでブツ切りになっているのではなく、連続性を持たせているものが多く、連続イベントの合間に連続しない通常イベントをバランス良く散りばめることで飽きが来ないようにしています。どれも極日常的な「普通」の内容ばかりなのですが、本シリーズに関して言えば逆にそれが良いのです。また、各ヒロインのシナリオが少しずつリンクしていて、全員クリアーすることで主人公の謎が解けるなど、意外と侮れない要素もあります。 ■キャラクター いつもの高山氏らしい嫌味のない健康的な絵です。攻略ヒロインの顔は割と似ていますが、サブキャラで印象の異なるタッチを見ることが出来ます。シリーズ共通なのですが、髪の色は黒かあって茶髪と大人しめに抑えられており、現実味があって良いです。そして今回も眼鏡キャラは0。 性格は、詞を除いてシナリオ設定に深く関わらないヒロインが多いです。女の子をゲットするのが目的なので、ヒロインの性格形成に関わるようなヘビーな話が出ないことは納得できますので、ここは深く追求する必要はないでしょう。また、さして奇抜な設定もなく、どこにでもいそうなヒロインばかりというのはTLSらしくて良いのではないでしょうか。 ■テキスト 大部分が会話で占められており、そのくせ気の利いた言い回しが少なく文章レベルは高くないのですが、主人公がイカレタ行動を連発するため、どうしても笑わされてしまいます。力技で勝負してくるのだから、評価のしようもありません。まあ、面白いから良いのですが。 ■演出 強烈です。これほど目パチ口パクに力を入れているゲームは見たことがありません。全ヒロインが、台詞の一言ひとこと、息遣いや行動に完璧に合わせて、瞬きしたり口を動かすのです。二次元的表現とは言え、これにはオーバーアクションで定評があるスクエニの大作RPGも裸足で逃げ出すことでしょう。エンターブレイン自体があまり喧伝していませんがこれには参りました。超完璧。効果音は目立ったものはありませんでしたが、使うべきポイントもあまりないので、気にはなりませんでした。また、残念ながらOPムービーは今回もありません。掴みって重要なのに何で作らないのかしらねえ。 ■シチュエーション キミキスがタイトル通りのキスシーンを数多く用意していたのに対し、あまがみするシーンはほとんどありません。別にそれが悪いというわけではなく、相変わらずキスシーンにおける温かみのある雰囲気作りは良いと思います。今回は所構わずキスしようとすると逃げられたりもしますので、バリエーションも多いですしね。また、バッドエンドのシチュエーションが結構堪えるものになっている点も評価できます。こちらは主人公もヒロインも悲惨な雰囲気が良く出ています。トラウマになる可能性はありますが、一見の価値はあるかも。 ■ゲーム性 従来のシステムから様変わり。いつどこで何のイベントが起こるか予めマップ上に示されるようになり、ランダム性がなくなりました。よって、攻略に際して戦略が立てやすくなっています。会話システムはキミキスと基本的に同じなのですが、前日の話題選択がなくなり、いつでも好きな話題を選ぶことができるようになりました。加えて、ヒロインの会話に対する反応(好感度の上昇・下降)が記録されるようになり、ユーザビリティーが向上しています。一見、攻略が簡単になっただけのように感じますが、イベント数が激増しており、フラグ管理も複雑さを増したことを考えると、バランスは取れていると言えます。また、隠しキャラも用意されており、かなりシナリオの重要な部分に関わっているので是非攻略してほしいところです。いずれにせよ、遊び甲斐があることは間違いありません。 ■グラフィック 背景はモブがいたりいなかったりするのが少し気になりますが、塗りやパースに関しては問題なし。パターンも30近くあります。立ち絵パターンは一人5前後。多くはありませんが、表情パターンが非常に多いのでまったく退屈はしないでしょう。 イベントCGは各ヒロイン25枚前後あります。前作より攻略ヒロインが減っている分、一人当たりの枚数が増えています。イベントCGのクオリティーはずば抜けて良いわけではなく、立ち絵と同程度です。つまり立ち絵が魅力的なのです。全部見るにはバッドルートもクリアーしないとならないので、結構困難な道になっています。
アマガミするシーンなどほとんどないにも関わらず、なぜアマガミという単語をタイトルに選んだのか。ずっと分からなかったのですが、その答えはバッドエンド(の派生ルート)に隠されていました。 本作は、このルートの最後でこれまで放置していた「あまがみ」という単語に対して初めて「家族への愛情表現」であると言及しています。 思い返してみれば、プロローグで駄目になってしまった主人公を、ここまで支えてきたのは誰だったのでしょうか。それは憧れの先輩でも幼馴染でもなく、たった一人の血を分けた妹だったのではないでしょうか。実はこのルートの途中で、シナリオに「何があっても最後まで支えあえる存在が家族である」といった件があるのですが、確かにその通りです。敢えてこの美也ルートでのみ「あまがみ」について触れたのは、どんな時でも一緒にいるだけでいい家族こそが最も「あまがみ」という単語に最も近いところにいると結論付けている証左といえましょう。 ゲーム中、主人公は流石にヒロインと家族にはなることはありませんが、その後、彼女らと家庭を築くであろうことは想像に難くありません。本編はそこまでの段階の一片と考えても良いでしょう。そして、本編を含む「あまがみ」という単語に近付いていくステップアップすべてをひっくるめたものこそが「アマガミ」なのです。 |