キミキス
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もう一つの真実のラブストーリー
※概ねプレイ記のまとめです。 キミキスの話をする前に、トゥルー・ラブストーリー(以下TLS)の話をしておかなくてはなりませんね。 ほとんどの方がご存知かと思いますが、TLSシリーズとは、1ヵ月後に転校する主人公が転校までに好きな女の子を見つけて告白すると言うSLGです。TLS3になって期間が卒業までの1年間に変わりましたが、コンセプトは変わっていません。女の子との出会いと別れを通して真実のラブストーリーを堪能する……そんな純粋なゲームなのです。何が面白いかと言うと、言わずと知れた「下校システム」。女の子と帰りながら会話を盛り上げていくシステムは、単純そうに見えてはまると抜け出せません。 ※詳しくは公式ページを参照して下さい。 2006年――ときメモと肩を並べる恋愛ゲームの金字塔トゥルー・ラブストーリー発売から実に10年が過ぎました。キャラデザの松田氏は引退し、2003年に発売された「True Love Story Summer Days, and yet...」はタイトルが英字になり、雰囲気がどこか違ったものになっていました。それ以後、TLSシリーズの製作発表はされておりません。今年発売されたトゥルーティアーズと言うゲームは、どうやらTLSのスタッフによって作られているようです。TLSシリーズは終わりを告げ、新たな段階へと進む時が来たのでしょうか? さて、何故この様な話をしたのかと言うと、今回の「キミキス」はTLSシリーズのスタッフが作成しているからなのです。最早タイトルに「トゥルー」の文字は見当たりません。しかし、キミキスは確実にTLSの流れを汲んだゲームに違いありません。ですから、私にとってキミキスは「もう一つの真実のラブストーリー」なのです。よって、本批評はキミキスをTLSシリーズの一環として捉えておりますが御了承下さい。 下校システムからマッチング会話へ キャラクター。最も心配していた高山氏の絵ですが、思ったよりも可愛くて良かったです。松田氏の絵のファンとしては、クセが無い高山氏の絵は若干物足りなく感じたのは否めませんでしたがTLSに必要な要点は抑えてますね。それは「現実路線」から逸れないこと。髪の色は茶色までで至って大人しめでありながら洗練された誇張のない制服。どこにでもいそうな女子高生がここにいます(重要)。対して性格付けやキャラ設定はやや突出した面が窺えます。このシリーズはゲームだけどどこにでもいそう……そんなヒロインが味噌だったんですよ。しかし、キミキスのヒロインはゲームでしか会えないヒロインが多くなりました。深月や瑛理子はその典型ですし、菜々もこの部類に入ると言って良いでしょう。別にこれが悪いと言っているわけではないのですが、ともすればキャラゲーと誤解され兼ねない要素の一つではあります。キャラの性格を強烈にすることによってどうしてもプレイヤーに媚びた雰囲気が出てしまう。これによって、折角の自然な雰囲気が無くなってしまったのが残念です。ただ、メインヒロインの結美に関してはこれまでのメインヒロインの中で一番どこにでもいそうなヒロインでした。ストーリーも自然でしたし、ここは評価したいと思います。 ※どこにでも――とは現実に……と言う意味です。ゲームでどのメーカーでも見かけると言う意味ではありません。 ボイス。声にはあまりこだわらない私ですが、TLSに関しては毎回密かに楽しみにしていたりします。今回も期待通りでしたね。メンバーがビックネーム揃いなだけあって流石に上手いです(別に売れっ子声優ではなくても良いのですが)。普段SLGをしない方でゲームには耐えられなくても声に助けられた方が多かったかもしれませんね。 グラフィック。背景は綺麗と言うほどでも無いですが雑と言うことも無く、至って普通の出来です。イベントCGは各ヒロイン20枚前後ずつ。ヒロインによって異なるのですが、全部見るには「仲良し」ルートと「好き」ルート、あるいは真ん中のルートの2乃至3ルートを通る必要がありそう。一周では全部のCGを見れないと言うことです。 シナリオ。キミキスはSLGですので、シナリオはあってないようなもの。とは言え、TLSの中では一番ストーリーの流れにこだわっていたように思います。おかげでかなりゲームとしての自由度が下がってしまったのが問題ではあるのですが。キャラと同じでゲームだけど誰でも体験しそうなイベントを見ていくのがTLSの魅力でした。これに関してはキミキスもある程度は守れていたのですが、やはり深月や瑛理子は設定が設定だけにストーリーが少し大きくなってしまっていた感があります。 シチュエーション。今回はキスに焦点を当てることになります。このゲームを始める前は、いつでもどこでもキスなんて一体どんなバカゲーだよ……と少しがっかりしていたんですがかなり予想とは違いました。確かに一定条件下ではどこでもキスを始めるんですが、その条件まで辿り着くまでに時間をかけてそれなりのステップを踏まえる必要があります。その頃には目当てのヒロインに本当にキスをしたいとプレイヤーに思わせることが出来ているんです。一見「いつでもどこでも」なんて何も考えていない様に見えて、とても雰囲気作りを大切にしている……。矛盾していそうだけど実際は緻密な計算の上に成りなっているたまらない「キス」シーンの数々。キスを題材にするだけあってムードは考えられていましたよ。 ゲーム性。本作はSLGですからこれが一番の生命線。TLS時代の下校システムは消滅しましたが、今回のマッチング会話システムは下校システムそのものと言っても良いでしょう。これは女の子の好きそうな話題を振ってそれが適合すれば好感度が上がり、合わなければ下がると言うシステム。ヒロインに合うような話題を振っていくのはこれまでの下校システムと同じなのですが、このヒロインのしたい会話が主人公と同じ様に毎晩変わっていくのが面白い。ヒロインも主人公同様に話題袋(ヒロインが持っている種類豊富な話題リスト)を持っており、「この話題が当たったから今日の彼女はおしゃれ系の話題袋だな。ならばファッションの話題がマッチするに違いない」という風に推理していくことになります。しかも、一日に使える話題の数が限定されているので、「今この話題を使うと次に他のヒロインに会った時に困るな」などと色々考えさせられる。この戦略性を楽しむには、一人だけ狙っていては意味がありません。キミキスをSLGとして楽しむには同時攻略を狙う必要があります。これにより、話題袋との格闘に日々真剣に頭を悩ますことが出来るかと。 一方、今回もヒロイン出現地点がランダムである点には悩まされます。ある程度所謂「よくいる場所」が限定されるとは言えやはり悩む。しかし、イベントCGがランダム発生では無くなったので(ランダムはカミカゼとお風呂イベントくらいかと)、TLSに比べると難易度はかなり下がっていますね。やや物足りない気がしますが、昨今はあまりに難しいゲームは敬遠されるので仕方が無いですかね? いずれにしても本シリーズのゲーム性には毎度のことながら夢中にさせられます。意中のヒロインと出会ったり会話がマッチした時は本当に嬉しいですし、逆に誰もいなかった時や会いたくないキャラに会った時には本当にがっかりします。これがキミキスの魅力ですよね。 ※何だか今回は先生や妹の出現率がやけに高かった気がするのですが(^^; ※TLSと比べると難易度もボリュームも下がっている様に感じましたが如何でしょうか。
私達が本当に互いに存在しているかを確認し合うには、触れ合うのが一番手っ取り早く且つ確実な方法でしょう。我々は触れることによって初めて、物体あるいは生命体が実在していることの確証を得るに至るのです。 では、愛はどうでしょうか? 愛には物の様な確かな存在はありませんし、究極的なところを言ってしまえば確かめるなどと言うことは出来ないのかもしれません。しかし、お互いの愛を理解し合おうと少しでも近付く時、最も簡単で確実な方法は「キス」であると私は思います。挨拶のキス、尊敬を表すキス、快楽を求めるキス……様々な種類のキスがあります。しかし、本当にお互いが愛し合っている時にするキスはそのどれとも違うと思うんですよね。どんなキスでも同じじゃないかと思われるかもしれないのですが、キスと言うのは意外と状況に応じた相手の感情がきっちりと伝わってくるものでございます。それが好きでしているのか嫌々しているのかあるいはどうでも良いキスなのか……。 人間は言葉と言う素晴らしい発明品を携えています。しかし、言葉だけでは伝えられないことはあるんですよね。いえ、言葉だけでは伝えきれない、と言った方が適切でしょうか。 キス……でしか伝わらない想い…… キスに込められた純粋な想いが伝わってくるゲームです。 |