リトルバスターズ!
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友情物語爆誕!? 本作は、智代アフター以来となる2年ぶりのKeyの新作です。初回限定版には特典として、棗恭介風来記(原画集&スタッフコメント)とアレンジアルバム及び劇場版CLANNAD割引券が付いています。Keyの大作にしては珍しく発売延期がありませんでした。最初からボイスがあるのもユーザーにとっては嬉しい誤算。全年齢対象ゲームであり、Hシーンは一切ありませんので念のため。また、メインの原画が二人体制になったことや音楽担当が大幅に増えていること、Keyのメインライターである麻枝氏が本作をもってライター引退を表明していることから、同ブランドのターニング・ポイントとなる作品となるかもしれません。 さて、本作の特徴は、これまでのKey作品のテーマであった「家族愛」が「友情」に変わっていると思わせていることです。外から内へと収縮していくという強い内向性を持っていたテーマが、内から外へと拡散していくテーマへと逆転したわけです。ここで私が危惧したことがあります。家族と友人という二つの関係を比較したときにどちらが強い結びつきであるかと考えると、当然前者であると思います。ここから、人の結びつきを表すなら、友情よりも家族愛を選択した方がより強い感動を与えられるのではないかと思うのです。友情物語を選択したことが過ちとなったのか否か。ここが注目すべきポイントだと思った本作でしたが……? 「世界の秘密」を暴きだせ! 構造の転換 ■シナリオ 「――この青春を駆け抜けろ。」 パッケージ裏のキャッチコピーです。これと同じくパッケージ裏に併記されているストーリー解説(ストーリー項と同文)から予想し得るのは、本作が、友人たちと楽しい学園生活を送りながら恋に落ちる……という学園恋愛物であるということでしょう。確かに、親を失った主人公が友人に囲まれてそれでも楽しく過ごすという学園物の一面はあります。その中で、主人公が恋をするのも確かです。しかし、シナリオの真の目的はそこにはありません。本作の真の目的は、学園で恋愛を体験することではなく、「世界の秘密」を解き明かすことにあるのです。各ヒロインとの恋物語は、謎を解き明かすための布石に過ぎません。全員を攻略しなければ真相には辿り着けませんが、その過程にも意味があります。世界の秘密に隠されたテーマを暴き出す……これが本作の目的です。そして、ここに構造の転換が見られます。これまで、ヒロインのために奇跡やファンタジーが存在していたのに対し、今回はファンタジー世界を成立させるためにヒロインが存在しているのです。謂わば本作は、Keyの奇跡の集大成なのです。 ■キャラクター まず絵ですが、いたる絵独特の特徴がかなり薄まり、ついに他原画家とのコラボが実現されるまでになりました。ちなみにいたる氏の担当ヒロインは、小毬・葉留佳・来ヶ谷で、Na-Ga氏の担当ヒロインが、鈴・クド・美魚です。私はいたる絵はわりと好きなので、クセがなくなってきたことにむしろ違和感を覚えていますが、絵を見ただけで敬遠したくなるようなものでなくなっていることは確かです。一方、男性陣のバランスは悪く、下手な気がします。 キャラクター設定について。これまでの奇妙な口癖を代表とする強引なキャラ立てはそのままに、性格付けはシナリオと大きく関連しているので合格点を付けられますが、シナリオの目指すものが世界の秘密の解明であるために、どうしても各ヒロインの印象が薄くなってしまった感は否めません。男性陣も非常に素晴らしく、普段のギャグシーンとシリアスシーンのギャップが与える驚愕と感動はヒロインを凌駕しているとさえ感じます。ただ、主人公がこれまでの乗りの良い面白キャラではなく、完全なツッコミ専門のギャルゲーテンプレ主人公と化していたのが個人的には気に入りませんでした。テンプレ主人公がシナリオコンセプトを達成するための十分条件だったと理解はできるのですが、恭介タイプの主人公路線でいけなかったのかと今でも疑問に感じています。次回はまた面白い主人公を復活させてほしいところ。 ■テキスト 描写ではなく、兎角、説明に終始する面白みのないテキストが多く、読んでいて退屈です。あれだけ生き生きとした面白いセリフの掛け合いを書けるのに、なぜ地の文……というか独白があんなにもつまらないものしか書けないのか不思議でなりません。 ■演出 OPムービーは、イベントCGを使ったキャラクター紹介。かなりの枚数が流れ、ネタバレを懸念したのですが、肝心なところは流れていなかった模様。CLANNADのように、ムービー専用の動画などは一部しかなく、イベントCGの編集でほとんど構成されています。歌詞とCGもあまり合っていないのでいまひとつセンスが感じられませんでした。 本編では、雨や光が降るなどの効果はなかったのが残念でしたが、恭介の一問一答などでは面白い視覚的な演出があって楽しめました。効果音は豊富なだけにもう少し基本的な画像効果をつけてほしいですね。 EDでは各ヒロインごとに歌やスタッフロールを変え、綺麗に纏められています。また、トゥルーエンドのアニメーションは見ていて楽しかったです。この工夫がOPにも欲しかったなあ。 戦闘シーンの効果音やランクは分かりやすくて良かったです。 ■ゲーム性 ADGとしての難解な選択肢分岐などはありませんので、クリアーするだけなら簡単です。CGをコンプリートしようとすると、トゥルーエンド後にもう一周しないと回収できないCGがあったりするのでやや分かりにくい点がありますが、全体的な難易度は低いでしょう。 また、本作はミニゲームが優れています。代表的なミニゲームは、@投手が投げたボールをノックし、返球されたボールを打ち返してコンボを繋げる野球ゲーム、Aアドベンチャーパートで集めたアイテムを使ったり野球ゲームで鍛えて能力アップを図り、オート戦闘でランキング上位を狙うバトルゲーム、B指定された食品をトレーに乗せて運ぶ学食ゲームの三種類です。どれも本編そっちのけで熱中できる内容となっています。このミニゲームは評価したいですね。 ■シチュエーション 本作は、ヒロインと主人公の出会いシーンを最小限に留め、友人全員が集まって楽しい日々を過ごす日常シーンに重きが置かれています。そのせいか、当初はヒロインとは恋人と言うよりは友人感覚を思わせるシチュエーションが多いです。しかしながら、個別ルートに入ると、次第にヒロインと主人公の二人だけの隔絶した世界が構築されていき、プレイヤーはあたかも自分とヒロインが無人島に放り込まれた二匹の実験動物であるかのような気分にさせられることでしょう。そんな空間で二人だけのプラトニックな愛が描かれているのが本作の特徴です。 ■グラフィック 目にする度に、鳥の氏の背景はエロゲー界でもトップクラスだと思います。私としてはこの人の背景のためにお金を払っている部分もあります。特に木がすごい。エロゲーでこの人以上に上手い緑を見たことがありません。建物やモブもしっかり描きこまれていて文句なし。 立ち絵は各キャラクター5〜7パターン。全体的に大雑把な印象で、以前より髪の毛の描き込みや塗りが甘くなった気がします。表情は豊富で10パターン以上あり、コロコロと変わる顔が面白いです。イベントCGの出来は普通。光を上手く使ったものが多いです。枚数は差分を含めなければ97枚で多くもなく少なくもなくといったところでしょうか。個別ルートが短いので本編中は少ないとは感じなかったので及第点。
本作のテーマは「成長」の一言に尽きます。 友人ができて、閉じこもっていた殻から脱出できたと思っていた主人公。しかし、実際にはまだ殻に閉じこもっていたままだったのです。実情は依存する対象が家族から友人に代わっただけ。「リトルバスターズ」という居心地の良い巣で餌を与えられていただけに過ぎなかったのです。そこでは、何も考える必要はありません。ただ友人という名の親兄弟についていけば良いからです。 しかし、友人がいなくなったら、彼はどうすれば良いのでしょう? 巣立たねばなりません。自分で考え、自分で餌を得なければならないのです。本作は、そんな巣立ちの物語。「リトルバスターズ」という仮初の巣から巣立ち、成長できたとき、本当の「リトルバスターズ」が生まれるのです。 |