LOST CHILD
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このゲームもなぁ……。 と言うことでロストチャイルド略してロスチャでございます。世界ノ全テが割と好きだったので、このゲームには期待していたんですよ。パッと見た感じでは世界観がサイバーパンク調で、前作とはまったく違う印象だったにもかかわらず、期待させるだけのパワーがあの頃のたまソフトにはあったんです。これがロストチャイルドの製作が発表された2003年の話。 ところが、2004年8月19日に同年10月29日の発売が決定したかと思うと同10月13日には早々と延期が決定。続いて次の延期告知が同年12月1日に。発売予定だった2005年春は何事も無く過ぎ去り暫らく時が流れます。そして開発陣が逃げたのかと噂がたち始めた2005年11月25日、2006年3月24日の発売がようやく決定……と言うか最早誰も期日通りの発売なんて信じていないわけです。 「今回もどうせ延期だろ」 誰もがそう思った2006年、ついに奇跡が起こる。2年の時を経て3月24日、ロストチャイルドはついに発売されたのだ! ヒーローになりたかった人達へ 開始前メニュー画面の時点で既に、このゲームは美少女ゲーム度0と言う雰囲気を醸し出しております。サイバーな画面にパンクでロックな音楽が凄まじく格好良く、厭が応にもテンションが高まるのが感じられ、OPムービーでそれは最高潮に。このアニメーションムービーがまた格好良い。初っ端からバトルスーツに身を包んだ連中が出てきて、スーパーメトロイドの様相を呈し始めます。歌もやはり凄まじい。最早自分がギャルゲーを買ったかどうかも疑わしく思えてくるパワーを秘めたOPだと思います。 キャラクター。ややクセがある絵なのですが、基本的には素直に可愛かったり美人に見えます。ただ、レイリアの顔が怖く感じなくもない。特にメインヒロインの藍。わざとなんでしょうけどもね。性格は各キャラ立っていたと思いますが、「ヒーローになりたかった人達へ」とキャッチコピーを打っている割には主人公がいまいちピリッとせずにヒーローには見えませんでした。 ボイス。主人公も含め男性キャラにもボイスが付いています。そのどれもが秀逸。男性ボイスが良いと思えるのは久々です(特に柘植/笑)。勿論、ヒロインの声も良いですよ。特に藍。無愛想な最初の頃と成長して感情が現れていく後半のギャップを少しずつ表せています。 グラフィック。背景は草薙なので丁寧です。イベントCGの塗りは少し独特で全体的にぼかしがかかったような感じですが基本的に丁寧。枚数もパターンは含めなければ150枚近く。立ち絵もそこそこのパターンがあります。 ゲーム性。一話ずつ進んでいき、一話終了毎に挿入歌とOPが流れる続き物アニメ方式。基本的にワンプレイで完結する一本道シナリオです。選択肢は難しくなく、特にエンディングに影響は無い気がします(少なくとも私はメインヒロインである藍ではなく由良寄りの選択をしましたが普通にエンディングを迎えました)。注目すべきは戦闘パート。戦闘行動と回避行動の二つのパターンを行うだけの至ってシンプルなもの。行動時にゲージが現れてゲージ内をメーターが動き始めます。ゲージ内の特定の部位でクリックあるいはキーを押下し、動いているメーターを止めることが出来れば成功し出来なければ失敗。これだけ。最初の内は良いのですが、後半になると最早作業でしかなくなり飽きてきます。難易度設定も出来るのですが、基本的にメーターの速度が速くなり止めなくてはならない範囲が狭くなることによって判定が厳しくなるだけ。もう一工夫欲しかったですね。 演出。効果音は申し分ありませんが、画像効果は目立つような目新しいものはありませんでした。。ムービーは歌と合致したアニメーションをつくってきたので合格点を出せます。戦闘パートのキャラのカットインも格好良かったです。ただ、戦闘パートで3Dで表されているアーミットやマガツカミが2Dの通常パートの絵よりちゃちに感じられた様な気も。全部2Dでも良かったのではないかとも感じました。少し細かい注文ですけどね(^^; Hシーン。概して短いので実用性には堪えませんが、レイリアと人間の互いの存在を認め合う、確認し合うと言う意味が伝わってはくるので必要性はありましょう。萌え要素はあまりなく、特殊なシチュエーションもありません。また、陵辱系のシーンがほとんど無かったのは少し意外でした(一部あるのですが)。 テキスト。思ったよりクセが無く読みやすい文章です。ギャグも笑えるところは笑えますし、シリアスに決めるところは決めます。戦闘などにおいて勢いが足りずに冷静すぎるきらいはあるのですが、キャラの感情描写についてはしっかり書けていると思います。ゲーム内時間もプレイ時間も長目ですが、何とか飽きさせない文章は及第点を与えて良いかと。 シナリオ。本作には多くの人物が登場するのですが、これらの人物ほとんどにスポットを当てながらシナリオを進行させていったのは良かったと思います。ザッピングを駆使して視点を常に変え続けたので、主人公に感情移入出来なくなる点は問題でしたが、シナリオを楽しませると言う点においては成功しています。ただ、独自の世界観をつかっていることによって、ややもするとゲーム全体が世界観の説明に終始している感もありました。もう少し主人公を中心としたバランスをとってプレイヤーをただの「読み手」にしない工夫が必要だったかもしれません。また、構造が大掛かり過ぎて消化し切れていない部分もありました。シナリオを読ませたいであろうゲームでこれは頂けない。近未来世界に哲学を持ち込んだ設定は面白かったですし、バトル主体で終わらなかったのも評価したいと思いますけれどもね。
本作のテーマは、孤独とその反意語である愛です。 人間はお互いを完璧に分かり合うことは出来ません。価値観の相違は生まれて当然ですし、逆に全員が同じ思考回路を持っていたらこれ程不気味なことはありません。自分で考え行動し成長するからこそ人間は人間足りえるのです。その価値観が違いすぎて許せなくなってしまった時に喧嘩や戦争が起きるのです。 しかし一方で、人間は自分が好意を持っている対象に対しては少しでもその人のことを知りたいと思うもの。完璧に理解することは不可能でも、少しでも相手のことを分かることが出来るように努力します。ここに「愛」があるのです。 ロストチャイルドにおける人間とレイリアとの関係は、恐れながらも近付き離れ、離れては近付くと言うお互いを理解するために努力する過程そのものです。これは特別なことではありません。あらゆる人々が毎日毎日経験していることなのです。 本作に登場する人物は様々な形で孤独を背負って生きています。しかしながら同時に、彼らは決して孤独ではありません。彼らの周りにはいつだって誰かがいるのです。そのことに気付き、愛を忘れなかった者が、南甲と言う何かが欠けた世界で生きることに終止符を打ち、真の現実世界に到達出来るのでしょう。 我々人間は確かに一人です。しかし、絶望することはありません。一人であることこそ人間の証なのですから。もしそれを孤独と思った時は、ふと振り返ってみれば良いでしょう。いつだって我々は一人では無いことに気付くことが出来ます。傷ついても良い。人と触れ合おうと言う「愛」の欠片が心の中に残っているなら、我々は決して孤独ではありません。 |