ROOT DOUBLE Before Crime After Days
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●オートメッセージ ●スキップ(既読判定あり) ●オートセーブ ●クイックセーブ ●クイックロード ●バックログ ●バックログ中の音声 ●バックログジャンプ ●ヒント表示 ●音声同期 ●TIPS ●マップ ●プレイングログ ●CG鑑賞 ●ムービー鑑賞 ●音楽鑑賞 |
●BGM:30曲 ●OP歌 Double Bible 結城アイラ ●ED歌 Rondo Carrousel 結城アイラ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
必要なものはすべて備わっています。マップは主人公が現在いる場所を表示するもので、ヒント表示はバッドエンドになったときに、その原因と対処方法を示唆してくれるものです。 | キーボードを主体にして、パーカッションを織り交ぜる曲が多いです。弦楽器や管楽器の類はあまり使われていません。悲惨な状況にもかかわらず、大人しい曲が多い印象です(使われる頻度は別ですが)。 ●Words of Healing ●Extra-Sensory Perception ●Pose the Question in this world ●The Brave Decision ●Rondo Carrousel | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
最悪の状況から脱出するSFサスペンス! Ever17の中澤監督作品ということで購入。この人の作品で最終評価はともかく、つまらなかったものはありませんでしたので、今回も当たりだろうと踏んだところ、やはり当たりでした。鉄板というヤツですね。 ジャンルは「SFサスペンスADV」となっております。ストーリーの項をご覧いただくと分かりますが、閉じ込められた非常に劣悪な環境下から脱出するのがゲーム開始当初の目的となっています。そのため、一見すると単純なパニック物のように受け取れますが、その背後には大きな謎が隠されており、プレイするとサスペンスだと分かるはず。かなりプレイ時間は長めですが、緊張感を保ってプレイを続けられる名作の一つだと思います。 初回限定版にはサウンドトラックとドラマCDが同梱されています。また、同年にWindows版が発売されています。 Lの季節を髣髴とさせる「センシズシステム」が面白い ■シナリオ 原子力研究ラボ内に事故によって閉じ込められた人々が脱出するために奮闘する姿を、2人の主人公の視点から描くもの。主人公の内、1人は事故前〜事故発生まで、もう1人は事故発生後の話となっており、一方のルートの謎がもう一方で明かされるなど、リンクのさせ方が上手です。個々のルートは謎を多く残す終わり方となっており、両ルートをクリアーした時に新たなルートが出現して、真相が明らかになる構造となっています。中澤作品のお決まりともいえるパターンですね。 ただ、ループ物ではないにもかかわらず、同じようなシーンを繰り返し見なくてはならない展開(RAMを使うところ)があります。上手くスキップさせるなり、一度にまとめるなりしてくれると、すんなり楽しめたのですが、ここは冗長な印象を受けました。2周目以降、時間がかかって仕方がないので……。 特殊設定も多いのですが、理論的に説明されているので、世界観は普通の近未来世界といった感じです。ほとんどのプレイヤーは違和感なくプレイ出来ることでしょう。 ■キャラクター 何だかダ・カーポを髣髴とさせる絵だと思ったら、彩色のスタッフがダ・カーポ2のスタッフだったようです。原画のみけおう氏も文庫版の挿絵をしたことがあるようです。本作とはまったく関係ない話でした。絵ですが、学生ヒロイン(悠里を含む)はギャルゲーっぽさを感じる大きな目をしていますが、社会人キャラはノーマルです。それ程クセのある絵ではないので、多くの人は違和感なくプレイ出来るでしょう。男性キャラは目が細いきらいがあって少しクセがありますが、こちらも許容範囲でしょう。 性格・設定は本作の肝。どのキャラにも隠し事があるので、クリアー後は第一印象とかなり異なる印象を持つことでしょう。本編中、全キャラに長い回想シーンが用意されていて、表の顔と人間形成されていく過程、もしくは隠されている正体について十分過ぎるほど語られるので、キャラについて知りたいことの大半は知ることが出来るでしょう。これだけ完全燃焼で終われるゲームも珍しいです。 ■テキスト ピンチが連続するゲームですが、あまり形容詞を多用せずに、簡単な台詞中心で次々とシーンを回していきます。これは読み手を疲れさせずに緊迫感を伝え続けるには効果的だと思います。また、本編中、とある設定により度々視点が入れ替わったり、場合によっては入り混じったりするのですが、口調や地の分を織り交ぜることで上手く誰の台詞か分かるように書いている点は感心しました。トリックのヒントが地の文に隠されていることもありますので、意識して注意深く読んでも面白いかもしれません。 ■演出 OPはイベントCGを使ってキャラクター紹介を進めていくもの。ただ、炎が燃えさかったり、CGの背景でエニアグラムの図形がグルグル回っていたり、中澤作品の特徴のひとつですが、作中で登場する意味深な単語が次々に現れたりと、様々な趣向が凝らされていてスピード感と動きのある仕上がりになっています。 本編中の視覚効果も盛りだくさん。超能力を使うときに画像がガラスが割れるように四散したり、炎がメラメラ燃えたり、ガスがゆらゆら漏れていたり。エンディングではスタッフロールと同時に何かの通信が流れていたりして、要所に工夫があります。基本的なところでは、目パチはありませんが、口パクはあります。また、効果音も豊富で、サイレンや銃声などその場面で欲しいと思うものがほとんど揃っています。 ■シチュエーション パニック状態の中で起こる殺人、疑心暗鬼に捉われながらも協力しなければならないピンチ、誰かを倒さなければ生き残れないサバイバル……とパニック物の王道を行くようなシチュエーションがてんこ盛り。勿論、熱い友情シーンから暖かい恋愛シーンまで、ゲーム内時間の短さの割りにドラマもギッシリ詰まっています。信じていたものが崩れ去るショッキングなシチュエーションが多いのですが、その後でしっかり信頼関係が再構築されることも多いです。裏切りと和平の繰り返しというか、謂わば「確認行為」の連続。そんなシチュエーションが目立ちました。 ■ゲーム性 面白いことに選択肢がなく、代わりに「センシズシステム」というプレイヤーが登場人物に対して抱く印象(好感度のようなもの)の数値を操作するシステムがあります。このセンシズシステムが発生するタイミング(ブランチ)で、例えばヒロインAよりヒロインBの方に好感度を強めに入力することによってヒロインB寄りのルートになる……といった感じでゲームを進めて行きます。このバランス調整がなかなか難しくて、匙加減を間違えるとあっという間に死亡フラグが立つのが面白いわけです。 また、もう一つ「RAMシステム」というものがあります。これは作中の特定の回想シーンで発生するもので、幾つかある回想の中から、自分が見るものを任意で選ぶことが出来るものです。逆に言えば、見なくないものは見ないことを選べるというわけです。見なかったことで展開やエンディングが分かれたりします。これが真価を発揮するのは本当の後半に入ってからなんですが……。 ■グラフィック 背景は正確に数えていませんが、40枚以上は確実にあります。50枚以上あるかもしれません。行動範囲がそれなりに広いとはいえ、ラボのようなどこも似たような場所でもしっかり部屋や階層毎に描き分けている点には感心します。仕事も丁寧で、細々とした表記や注意書き、看板に至るまで描きこまれており、臨場感を与えます。パースや彩色も問題ありません。 立ち絵は一人6パターン前後。服装のチェンジがあるキャラとないキャラがいます。イベントCGは差分抜きで134枚。ここに販促用CGなどがおまけで加わります。舞台が舞台だけに、残酷だったり気味の悪い絵もあります。何らかのアクションを起こしている時に表示されることが多いので、黙って立っているような絵は少なく、どれも動きがあります。クオリティーは総じて高く、構図もバラエティーに富んでいるので申し分ありません。
本作の目玉である「センシズ・システム」は、自分が信じるに足る人間とそうではない人間に差をつけることによって、行動を発生させていくものです。誰も信じなければ事態は悪化の一途を辿りますし、誰か一人だけを信じていても、上手く事は運びません。全員と上手く信頼関係を築いていかなくては、真のゴールには到達できないのです。 その実、作中には疑心暗鬼に陥るような様々な展開が待ち受けており、一体何が現実なのか分からなくなる瞬間が度々訪れます。現在の自分の行動している空間自体、本当にあるものなのか分からなくなるのです。そんな時に主人公を助けるのが「人を信じる心」です。その心が人と人とを繋ぎ、脱出の道を開くのです。この「人を信じる心」――言い換えれば「信頼」こそが本作のテーマなのです。一部の登場人物が使う特殊能力などは、まさに危機から脱出するのに必要な信頼関係を構築するためのツールだといえるでしょう。この「人を信じる心」を失ったとき、人は「怪物」化してしまうのかもしれません。多くの登場人物があたかも怪物のようになったことから分かるように、それは特殊能力の有無と関係ないことは明らかです。すなわち、我々にも起き得ることといえるのです……。 一度始めると止められなくなるほど面白いのですが、クリアーまでに時間がかかります。休日に余裕を持ってプレイしたい一本です。それとまったくの余談なのですが、このゲームは私にとってギャルゲー史上最も恐ろしかったシーンがあります。それはネタバレのため反転させますが、シーンタイトル「魔笛」(√Doubleで隊員達が被検体Nを隔離部屋から連れて脱出した際に、被検体Nが突如目を見開き大口を開けて「ぇけけけけけけ」と怪鳥のような笑い声を上げるシーン)です。あの声と顔は異常。今まで一番怖かったのは「ひぐらし」の目がアップで出るシーンでしたが、音声が入ったためかあれを超えました……。何度見ても鳥肌が立ちます。やはり人間、理解出来ない存在を目の当たりにすると本能的に危険を察知するんでしょうね。恐ろしい……。 |