失われた未来を求めて
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●オートメッセージ ●クイックセーブ ●クイックロード ●スキップ(既読判定あり) ●次の選択肢にジャンプ ●前の選択肢にジャンプ ●バックログ ●バックログ中の音声 ●マウス追尾 ●CG鑑賞(クリアー後) ●音楽鑑賞(クリアー後) ●シーン回想(クリアー後) ●Y.U.I.S. |
●BGM:28曲 ●OP歌 ∞未来 橋本みゆき ●挿入歌 ray of memories 橋本みゆき ●ED歌 Salut.sileil! 橋本みゆき | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
システムは至れり尽くせり。オート時にも音声が進行し、クリックしてもオートメッセージを維持するのはかなりお気に入り。何の不満はありません。ウィンドウ時の解像度も自由自在に操れます。後半突如として現れる「Y.U.I.S.」については、ネタバレになる可能性があるので、詳しくは避けますが、あるキャラの好感度を示すバロメーターのようなものです。 | シンセサイザーを中心に、エレキギターやベースを混ぜた軽快な曲が多いです。明るい曲が大半ですが、ゆい関連はその存在が謎のため、不気味な曲が多いです。 ●インフィニティ ●緋色の世界 ●memories of... | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
センス抜群のグラフィック 良作というものはパッケージを見た瞬間「これだ!」と思わせる臭いがあるものです。本作もその例に漏れず、良作特有の雰囲気がありました。それは驚異的なグラフィックとセンスのあるタイトルフォント、そして意味深なパケ裏のストーリーが融合した結果の産物で、どれが欠けても駄目なのですが、強いて言えばその中でも特に題字の作りと配置に惹かれたのでした。雑誌編集をしているとフォントを選定したり作ったりするのが如何に大変か分かるんですよね。文字ひとつにどれだけ手を加えたか、若しくはそのまま未加工で出しているか一発で分かります。ですから、本作の通常のフォントに一手間も二手間も加えて作られた長体のかかったどことなく上品な文字はやる気が感じられ、こういう仕事をするチームなら、期待出来ると思ったのです。 初回限定版には設定資料集が付いてきます。ネタバレ満載かと思いきやそうでもないので、プレイ前にパラパラと捲っても問題はないでしょう。 一風変わった「ループ物」 ■シナリオ 謎に満ちたスタートの割には、オーソドックスな学園ドラマが展開され拍子抜けするのですが、突如登場人物を予期せぬトラブルが襲います。その問題を回避するため、何度も同じ時間軸の違うルートを通っていくことになります。こう書くとよくある「ループ物」を想像すると思うのですが、それぞれのルートの登場人物達は別の扱いであり(しかしパラレルワールドではないとされています)、記憶を共有しているわけではありません。ですから、プレイヤーは同じ体験を味わっていますが、キャラクターにはそうした体験がないことになります。そのため、トラブル回避に対するモチベーションがプレイヤーとキャラクターで異なっており(というかキャラクターはトラブルが起こることを知らないので回避する術も持たないのです)、何度も同じ悲劇が繰り返されるのを見ることになります。ですから、フラストレーションが貯まる側面は否定出来ません。もっとも、周毎の共通ルートが短く、ループ物にある何度もまったく同じことが繰り返されるということはありませんので、飽きは来ないと思います。 ■キャラクター 非常にバランスの取れた端整な顔立ちのヒロイン達。メインの佳織以外は、細かく髪を結ったりまとめたりしており、こだわりが感じられます。クセがなく万人向けの絵であり、多くの人は素直に可愛い見た目だと認めることが出来るのではないでしょうか。 基本的にはヒロイン救済型のシナリオで、何かに悩むヒロインを主人公が助けていくという展開なのですが、どのヒロインも実は芯が強く、いざと言うときに主人公を支えてくれるので、パワーバランスが取れています。家族構成や過去の出来事にはほとんど言及されないので、パーソナルデータについては不明な点が多いのですが、全員同じ部活で一緒に過ごす時間が長いため、それぞれのキャラクターの人となりについては、じっくり吟味することが出来ます。全員が恋敵になってもおかしくないのに、いつでも互いを尊重し合い、仲間意識を強く感じられるのも本作のキャラクターの特徴です。 ■テキスト 一から十まで状況説明するのではなく、それらしい雰囲気を匂わせる文を書いて、ある程度プレイヤーに想像させる、少し大人なテキストです。ただ、後半はやり過ぎて説明不足になっている箇所がありました。ここを除けば良好です。また、会話にセンスがあります。こと細かくクドクド話すのではなく、各キャラクターが相手が何を語りたいか先読みするため、テンポが良く読みやすいと思います。 ■演出 OPムービーの担当は神月社氏。始まった直後まではイベントCG以外のパーツも使っていて凝った感じですが、しばらくするとイベントCGを適当にばらまくだけのものになってしまいます。そして、歌が終わった後に全員のキャラ紹介とタイトルアップが続きます。歌と動画の尺が合わないのはどう考えてもおかしいので、おそらく未完成状態です。ただ、公式サイトで公開されているデモムービーでは歌と動画の尺は合っているので、私のインストールしたデータのみがおかしいのかもしれません。必要環境は満たしているのですが……。 目パチ口パクは実装しています。会話の状況ごとに合わせて表情も変えるので、臨場感抜群です。会話が終了した時に変えるのではなく、ボイスが流れている最中に変えるのです。アマガミにかなり近い高レベルといえます。 また、システム画面への入る画面や、オートメッセージの印として歯車が回るのですが、これがなかなか良いアクセントになっています。 ■ゲーム性 アドベンチャーゲームですが、マルチエンディングではありません。というのも、攻略対象は4人ですが、攻略出来る順番が完全に決まっていて、最後のヒロインを攻略した先にあるエンディングを迎えることが目的だからです。最後のヒロイン以外のエンディングも用意されていますが、これは飽くまで「アナザーストーリー」という扱いで、ゲームの正史とはされません。アナザーエンディングには、発生条件があり、1周しただけでは到達出来ません。これが厄介なところで、共通ルートを何回も読まなければならず少々苦痛でした。また、グランドフィナーレを迎えるにも条件があり、それまで選んできた選択肢を、エンディングの条件に合うように、それまでのルートに戻って選びなおさなくてはならないシステムとなっています。選択したことはゲームの内部情報として記録されるので、こまめにセーブしていれば、ロードして選択し直してセーブすることで条件をクリアーしていくことが出来ますが、セーブしていなければ始めからゲームをやり直していく必要があり非常に面倒です。辻褄合わせのためとはいえ、スマートとはいえないシステムではあります。 ■Hシーン 純愛物にしてはマニアックなプレイやシチュエーションが目立ちます。具体的には、足コキ、主人公(男)の潮吹き、携帯写真での撮影、拘束など。回数は、佳織×3、愛理×4、凪沙×4、ゆい×5。1回辺り、オートメッセージで15〜20分ぐらいの量はあるので純愛物にしては頑張っている方です。 シナリオ上の必要性は高くなく、唐突に始まるパターンが多いです。 ■グラフィック 背景は38枚。学校が舞台なので校舎内の絵が中心です。外の絵もありますが、建物がメインになっているものがほとんどです。あまりごちゃごちゃと小物を置かず、シンプルにまとめていますが、塗りや汚れ表現は的確です。ただ、モブがまったく描かれていないのが気になりました。そこを除けば十分のクオリティーです。 立ち絵は一人当たり3〜4パターン。表情パターンあり。塗りは極めて丁寧。指先の影の付け方、服装のしわ等、陰影に細かく気を遣っている様子が伺えます。 イベントCGは差分抜きで88枚。本作の場合、とにかく「塗り」が凄まじくハイクオリティーです。特に生命線は「肌」で、大胆な塗り分けは、胸や膝や腹筋の立体感を際立たせ、そこに加わる光線が一種の幻想的な雰囲気を醸し出しています。構図も立っているところを眺めているようなオーソドックスなものはなく、斜めにしてみたり、俯瞰してみたり、下から覗いてみたりと工夫が凝らされています。
ゲーム終盤に差し掛かるとタイトル「失われた未来を求めて」の意味が分かってきます。タイトル通り、無くなってしまう現象を探求していくのですが、そこで必要となるのが何事にも諦めないエネルギーです。残念ながら本編では目的遂行へ向けての過程の大部分が省略されていますが、「諦めない」で取り組み続ける信念がテーマとして物語の根底に流れていることは十分に感じ取れます。その結果が、主人公達が未来まで行い続けた研究の成果であり、クライマックスにおけるゆいの行動になるのです。また、各アナザールートにおける主人公の行動にも、諦めない信念を感じることが出来ます。全体的にちょっと青臭さを感じますが、長い繰り返しの最後に迎えるエンディングには、心温まるものがあるはずです。 大方の目的は他のループ物と同じようなヒロイン救済にありますが、シナリオの調理方法に工夫があり、ループの仕方や世界の在りようなどに新しさがあります。各事象は最後に説明が為され、論理的にまとめられていますので、科学アドベンチャーとしても楽しめると思います。 |