ワンコとリリー
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本作はコミックマーケット70及び通信販売限定で、ゲーム、サントCD、オリジナル冊子、次回作「Garden」予告本のセットで販売されたものです。 私は通信販売で予約しておいたのでコミケには行かずにすむと思っていたのですが、その後コミケでさくらむすびビジュアルファンブックの発売が決まり、それを手に入れるために予定していなかったコミケ出撃が確定。そのファンブックも後に通信販売がされることになるという良く分からない事態に陥りましたが、まあそれは別の話……。 本作に関しては、一般販売は今後おそらく無いと思いますが、まだ中古市場やオークションではそれ程価格は高騰していないので、今後高くなる前に手に入れておくのも手かもしれません。 オリジナル冊子『WANKOLOGY』の作家陣を挙げておきます。 尾崎弘宣、KEG、☆画野朗、狐印、桜沢いづみ、鈴平ひろ、タ・カーナ、ちこたむ、西脇ゆぅり、緋賀ゆかり、MITAONSYA、三月まうす、ミヤスリサ、refeia(以上イラスト)、あらきかなお(以上コミック) の各氏となっております(五十音順、敬称略)。 私は、尾崎弘宣氏、狐印氏、桜沢いづみ氏、ちこたむ氏、西脇ゆぅり氏、MITAONSYA氏のイラストが特に気に入っております。 かなり短い内容なので、買う価値があるかと言われると無理してまでは買わなくて良いと思いますが、私としては大満足の一品。その魅力とは何か? すべては必然――トノイケワールド ムービーなどは無い代わりに、最初から歌が流れています。この歌が凄く良いのです。 キャラクター。桜沢氏は特徴的な目を描かれる原画家。好き嫌いは多少出るかもしれません。私は可愛い絵だと思います。立ち絵のある登場人物は、社会人だけどそうは見えない女の子一人と犬が二匹。但し、この犬と言うのが普通の女の子に犬耳と尻尾を付けただけのもの。しかも人語を発します。本作で犬と言う存在は、単なる記号的な犬以上の意味を持っていない様に思います。とするならば、何故わざわざ犬を人型にする必要があったのでしょう。ゲームの差別化のため? 犬に感情移入させやすくするためと言うなら、確かにしやすくなっている気はしますが……。私は逆に少し不気味な感じを受けてしまいました。 グラフィック。背景は丁寧でストーリーが短い割に枚数は大目です。立ち絵パターンは各キャラ3〜5種類。表情パターンは豊富です。イベントCGが18枚(差分含まず)と少ないのが残念。塗りの方は背景、立ち絵、イベントCG共に丁寧です。 ゲーム性。普通のADGですが、ハッピーエンドとトゥルーエンドがあり、最低二周しないとトゥルーエンドに辿り着けません。また、おまけが重要な意味を持っているので、こちらも合わせてクリアーする必要があるでしょう。難易度は低め。 演出。効果音がそこそこ良いのですが、それ以外は特になし。不便は無いのですが、敢えて言うなら、Hシーン時に主人公のフィニッシュ時に画面が白くフラッシュする演出くらいは加えるべきでしょうね。 Hシーン。勿論、全ヒロイン聖水装備です(笑) 声はありませんが、テキストは上手いですし比較的長めなので、実用性はある方だと思います。ただ、演出項でも述べた通り、射精時のフラッシュが無いのが人によっては問題になるかもしれません。 テキスト。いつもより冗長さが無くて気軽に読める文になっています。☆画野朗氏が原画を担当していない本作でも何等変わりなく面白かった今回で確信しましたが、トノイケ氏のテキストは人を引き込む魔力を持っているんですよね。ヒロインの表情を「にこーっ」などと直接的に表現して臨場感を持たせたり、同じことを言葉を変えて要所要所で登場させたり。とにかく印象付けが上手い。これからも頑張って欲しいですな。 シナリオ。ワンコと暮らす中で本当の自分を発見していく話です。シナリオ中では、犬が人間に捨てられることや保健所に送られることを描写しているものがありますが、本作はそうした深刻なテーマを取り上げているのではありません。基本的に難しいことを考えずに作品中に流れる優しさを感じることを出来れば良いのかな、と思いました。そうした優しさの中に、今回もトノイケワールドが仕掛けられています。それは小さなパラレルワールド。Key作品の様な奇跡に見えつつ、実はすべてが必然と言う、不思議なようでやはり不思議なもう一つの世界。う〜ん、私はこの人の書くシナリオが心底好きなんです。
本作のテーマは「本当の自分探し」です。 このテーマは、トノイケ作品の根本に共通して流れているものです。トノイケ作品からは、毎回、本質的に人間は優しく同情的な生き物と捉えている印象を受けます。だからこそ、どの作品も全体的に優しく、そしてどこか儚げな雰囲気を漂わせているのでしょう。 今回の「自分探し」は、気付いているけど気付きたくないもの、認められないものを認めていく方向からアプローチされています。意地を張ったり恥ずかしがって自分の優しさを隠す人って意外と多いですよね。あるいは、そうしてしまうことで自分の築き上げてきたものが壊れてしまう――言わばアイデンティティーの崩壊――ことを防ぐためなのか。 成長するにつれて、人間は「本当の自分」を偽っていくようになるのかもしれません。それはつまらない意地のためかもしれませんし、自分を出すことで何かを失うからかもしれません。しかし「本当の自分」と向き合って受け入れていく――あるいはそうした環境を整える――ことで、人間は初めて自分に出会えるのではないでしょうか。例え、時間が掛かったとしても遅くはありません。心から自分に胸を張れる時はいつか必ず訪れる――そんな願いが本作には込められているのではないでしょうか。 |