聞いてもらいたいつらさと、言ってしまったつらさ。
両方共感じて、初めて本当のつらさを知った。













    華〜初対面〜














どう言っていいのかわからない。
でも、今言わないと俺はいつまでもこの感情を抱きながら生きていく。それだけは少し思っていた。
それでもいいと思っていた。
だがこのままじゃ何もできない。
何も変われない。とわかったんだ。




「・・・初めてアイツに会ったのは、中学の入学式の時だった。噂で双子の女がはいってくるのは知っていた。
だがそんなの俺には関係なかった。女なんて興味なかったしな・・・。
でも、みちまったから、な。アイツのあんなところを・・・。」
ぽつぽつと話し始める跡部に、その横でなぜか緊張しながら話しをきく鳳。
跡部は俯きながら、いつもの覇気はどこへいったのやらと思うほど声は弱弱しかった。
その瞳は3年前の春を思い出しながら、どこか懐かしそうに細めていた。
ごくり。と鳳は息を飲んだ。
跡部が誰にも言わなかった事を自分に話そうとしているのだ。
緊張もする。
そんな鳳を気にしているのかいないのか、跡部はゆっくりと言葉を紡いだ。





「入学式なんてかったるかったし、ふけようかとも思ったんだけどな。
でも答辞読む予定だったしふけることもできなかったからせめて式ぎりぎりに行ってやろうと思ったんだよ。で、暇つぶしに校舎の裏にいってみたんだよ。
そしたら桜の木があってな。正直きれいだと思った。見とれたんだよ、桜なんかに。
毎年みてたはずなのに、何故か今年のは特別に思えた。
・・・・そこに、アイツはいたんだ。式ふけようとしてる奴かと思った。
・・・実際アイツは式でてねぇけどな。桜の花が散る中、アイツ寝てたんだぜ?木の下で。
人が近づいてもきづかねぇほどグッスリと。頭に桜の花たくさんつけて。
なんでだろうな。いつもの俺ならそんなの気にしねぇでとっとと他の場所にいくんだが、足が動かなかった。
アイツに、に釘付けになった。」





桜の花が散る中にいるがきれいだったから。
と、跡部は言おうかと思ったが、プライドにかけてそんな事はいえなかった。





「ゆっくりと近づいたんだ。それで、頭についた桜をとってやろうと思った。
・・・なんでかわかんなぇけどな。
それで近づいて、あと5センチで触るっていうところで、アイツ、おきやがったんだ。」






『・・・・なんか用?』
『用なんか、ねぇよ。』
『・・じゃぁなんでこんなに近くにいんのよ。あんた。』
『お前が、こんなとこで寝て・・・頭に桜がついてたから、とってやろうと思っただけだ。』
『ふ〜ん・・・・でも、余計なお世話。』






「俺に喰いついてきた女子なんて初めてだった。初等部でもそんな奴いなかったからな。」
思い出し笑いなのか、跡部がくくくと笑った。






『あんた、1年?』
『・・・お前も1年だろ。』
『も、ってことは1年か。』
『あぁ。・・・・お前、入学式でないのかよ。』
『・・・この時間帯にここにいるあんたには言われたくないね。』
『俺はぎりぎりに行けばいいんだよ。どうせ俺がいねぇと式なんてできねぇんだからよ。』
『あんた俺様すぎ。あんたがいなくたって式は始まるし、普通に終わるわよ。』
『答辞は俺が読むんだぜ?始まったとしてもおわらねぇよ。』
『は?あんた、アトベケイゴなの?』
『なんで俺の名前知ってんだよ。』
『妹が騒いでたから。答辞読むアトベケイゴっていう奴、かっこいいんだって。なんだ。あんただったのか。』
『妹?』
『・・・・双子なの。あたし、姉のほう。』
『あぁ、噂の。』
『噂?そんなのになってんの?』
『あぁ。』
『・・・・噂でお互いを知ってるって変な感じ。』
アイツがちょっと笑ったんだ。
後にも先にも、あいつがあんな風に笑ったのなんて初めてで、今でも目に焼きついている。
無愛想でとっつきにくそうな面をもっているとは感じたが、本当は、誰よりも話しやすくて、俺の外見じゃなくて話してくれたのは多分俺の記憶の中では初めてだったんだ。
嬉しかった。だから、自然に会話は続いた。
でも、いくらなんでも式場にいかなければいけない時間がきた。





『・・・・そろそろ俺行くわ。』
『あぁ、頑張って答辞読んでね。あたしはきかないけど。』
『式、でねぇのか?』
『あんなのでるきになんないし、色々双子っていうだけで質問されるのは予想されるし。妹がでてるから平気でしょ。』
『妹がでててもお前がでなきゃ意味ねぇだろ。』
『・・・・いいの。あの子さえいれば、文句なんて言われないわよ。親だって、あたしがいなくても気にしないだろうし。』
『・・・理解不能だな、そのひねくれ方には。』
『ひねくれてる?・・・・そうだね。あたしは、ひねくれ者だわ。』
どこか寂しそうな顔をした。泣くかとも思ったが、あいつは目が笑っていないで口だけで笑って俺に言った。
『こんなの相手にしてないで、はやく行った方がいいんじゃない?アトベケイゴくん。』
『・・・わかってる。』
そう言って俺はに背を向けた。
「悪かった」といえなかった。
自分の言った言葉でが傷ついたのはわかったのに、俺は謝る事が出来なかった。
名前をきくのも忘れてた。
でも、きかなくても同じ学校内。
急がなくてもいいと思った。





答辞を読んでる間、ふと目を横にむけると、アイツと同じ顔のやつがいた。
俺は瞬時に、「あぁ、こいつが妹か。」とわかった。
顔は一緒だったが、雰囲気はどことなく違った。
姉が凛とした空気をもっているというならば、こいつはどこか
丸い、やわらかい空気だった。
式が終わり、教室にいけばそこにはこれから俺が長年顔を合わせていくであろう面々。
そして、教室の端の席に、アイツがいたんだ。
俺は何故か嬉しくて、教室にはいった直後にアイツに近づいて話し掛けたんだ。(もちろん名簿で名前を確認してから。)
『よぅ。さっきはどーも。
外をみていた顔をこっちにむけてあいつは口を開いた。
そして、衝撃的な言葉を俺にむけて言ったんだ。






『誰?初めて会うんですけど。なれなれしく呼ばないでよ。』






言ってまた外をみだした。俺は疑問とショックで頭が回らなくてとぼとぼと自分の席に戻った。
妹とまちがったか?いや、あいつはさっきのあいつだ。
じゃぁ、なんであんな態度をとった?理解、不能だ・・・・。






何年かして気づく。そんな態度で、アイツは自分自身を精一杯守っていたのだということを。




  


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すっごい久しぶりの華です★おまたせしてすいません↓↓
あんまし発展ないかもですけど・・・。夏休みはいるまでには終わらせられるように頑張りたいです。
ってか跡部は絶対に答辞読みましたよね。あの人読まなきゃ誰読むんだっていう。
でも受験組みじゃないですよね?あれ?・・・まぁいっか。

2005.5.20 片桐茜



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