HEARTWARMING LOVERS -3-


「……。」

 何だって?

 あまりにも唐突な言葉に俺の頭の中は真っ白。

 でも確か、今、好きって…?

 後ろから抱きしめてるせいで、松潤の表情が見えない。

「ビックリした?」

 したよ。しかも思いっきり。

 今はそんなこと冗談で言えるような雰囲気じゃないことくらい、松潤にだってわかるハズだ。

 でも。

「うん、俺も、松潤のこと好き。」

 今度はヤツが驚く番。

 だけど驚いて振り返った彼は何かに気付いたらしく、慌てて前を向き直した。

 気のせいかその瞳が傷ついた色をしていたように思う。

「それって友達として? それとも仲間として? 大野くんが言う『好き』ってそういうことじゃないの?」

「どっちでもない。」

「じゃあ……。」

 今度は体ごと振り返って言い淀む松潤を正面からひときわ強く抱きしめる。

「恋愛対象として、俺はお前が好きなの!」

 耳元で囁いて腕を放す。

「あ……。」

 途端に松潤はガクンと膝を折って座り込んだ。

「悪い……大丈夫か? お前……。」

 慌てて自分もしゃがみ込むと、松潤が震える手で俺の上着を掴んでくる。

「うん……ゴメン、ちょっとビックリしちゃって。」

「お互い様だろ。大体お前が先に言い出したんじゃん。それとも気持ち悪い? 同性のお前に恋愛感情もってる俺が。」

 そうだよ。雰囲気にのまれてつい言っちゃったけど、松潤は友達とか、仲間として『好き』って言ってくれただけかもしれない。

 ちょっと戸惑いがちに尋ねる俺に、でも松潤はブンブンと勢いよく首を横に振る。

「全然。嬉しい…。俺も同じ。大野くんのこと、恋愛対象として、好き……。」

 半分片言になってる言葉を言いきると、松潤は俺の腕に擦り寄ってくる。

「好き。大好き。」

 俺の胸に顔をうずめたままうっとりと呟く。

 髪をそっと梳いてやると静かに目を閉じた。

「大野くん……ありがと。」

「え?」

 こみ上げてくる愛しさに背中を撫でつけながら聞き返す。

「実はさ、今日はこのこと告白しようと思って来たんだ。」

「……。」

「大野くんの絵を見たかったっていうのももちろんあるけど……ごめんね。どっちかっていうと口実だったんだ。」

 ギュッと胸元にしがみついてくる。

 囁くというか、呟くというか……そんな松潤の声が心地良い。

「でも、好きだなんて言ったら拒否されそうで、ずっと怖かった。男同士だし、同じグループで家族より一緒にいる時間が長いオレにそんなこと言われたら気持ち悪いだろうなって。それでも仲間としてこれからも一緒にいられるならいいやって思って半分ヤケになってたのかもしんない。受け入れてもらえるなんて思わなかった。ありがとう。」

 顔を上げて、松潤は心底幸せそうに微笑んだ。

 言いようのない愛しさがこみ上げてくる。

「あのさ、松潤…。」

「ん? 何?」

「……キス、してもいい?」

 そう、実はさっきから思ってた。

 触れたい。抱き締めてるだけじゃ足りないって。

 うわ、俺ってすっげーヤなヤツ。

 これじゃまるで体目当てで『好きだ』って言ったみたい。

 何も早速下心があること告げなくても。

 ほら、松潤驚いて目見開いてるじゃん。

「ごめん、今の忘れ……。」

「いいよ。」

 自己嫌悪に陥って謝りかけた俺に、松潤はふわりと微笑んだ。

 天使、みたいだ……。

「…ん……っ。」

 気付いたら、俺はがむしゃらに松潤に口づけていた。

 最初は触れる程度に、次に角度を変えて深く。

「…っはぁ……っんん!」

 息苦しさに薄く開いた唇に舌を差し込んで絡めると、松潤の体がビクンと震えた。

 その体を逃がさないよう強く抱き締め、頭を押さえつけてさらに深く口づける。

 こんな風にするつもりなんてなかったのに。ただ普通にキスするだけのつもりだったのに。

 そっと首に回されてきた腕が、おずおずと答え始めた舌が、すごく可愛くて、愛しくて、自分で自分を止められない。

 まして松潤は一生手に入らないと思っていた存在だ。

 散々貪った唇を放すと、松潤のほんのり赤く濡れた唇が目に入る。 今まで自分のそれと重なっていたとは思えない艶めかしさ。

 なんだか急に恥ずかしくなる。

「ゴメン、いきなりこんなコトして……。」

 今の俺、マジで沈んだ顔してそう。

 松潤の顔を見ていられなくて視線を外すと、俺の気持ちを知ってか知らずかいきなり胸に飛び込んできた。

 さっきみたいに俺の胸に顔をうずめるように抱きついてくる。

「大野くんさっきから謝ってばっかり。そんなに後悔するならやらなきゃいいじゃん。やるなんて言わなきゃいいじゃん。」

「…ゴメン。」

「ほらまた謝る。何で? 俺がいいよって言ったんだよ? そんな、無理矢理やったみたいな顔しないでよ。そりゃちょっとはビックリしたけどさ、オレすっげー惨めじゃないの。」

 ゆっくりと体を離す。

 気のせいか松潤の口元に蠱惑的な微笑みが浮かんでいるように見えて、オレは息を呑んだ。

「大野くんはオレのこと好きなんでしょ? そしてオレも大野くんのこと好き。これが友達同士とかだったら別だけど、今のオレたちはそうじゃないよね? だったら何も問題ないでしょ?」

 言葉を紡ぎながら松潤はそっと自分のシャツのボタンに手をかけた。

 そのまま長く細い指でゆっくりとボタンを外していく。

 俺は呆然と彼の手の動きを見つめているしかなかった。

 松潤の手が下がるにつれてだんだん素肌が露わになる。

 彼の手が最後のボタンを外し終えたとき、我に返ってその右手を掴んだ。

「なっ、何やってんだよお前? やめろよ……俺はそんなつもりじゃ。」

 松潤は一瞬俺を見て動きを止めたものの、すぐにまた空いている左手で今度は自分のベルトを器用に外していく。

 引き抜いて勢いのまま投げ捨てると、カタンという音がやけに大きく響いた。

「松潤……?」

「そんな風に呼ばないでよ。皆と同じ呼び方じゃヤだよ。ねぇ、二人きりのときは潤って…名前で呼んで。お願い。」

 呆気にとられている俺の腕をいとも簡単に振り払うと、そのまま首に腕を回して抱きついてくる。

 あと少しで唇が触れそうになったとき、俺の一言で松潤の動きが止まった。

「…翔クンにもそうやって迫ったワケ?」

 ここでその名前が出るとは思いもしなかったらしい。

 松潤は驚いて、密着させていた体を顔がはっきり見える位置まで離した。

「な…んで?」

「ごまかすなよ。お前ら以前付き合ってたんだろ。」

 俺にしては低い声音で問いつめてみる。

「知ってた…の?」

 俺は頷く。

 知ってた。全部相葉ちゃんから聞いて…ね。











何故だ。何故こんな風に話が横にそれていくのだろう…。でもね、好きなんですよ。色々設定を考えるの。特に元彼設定とか大好きなもんで。今後も何度か出てくると思います。やたら設定だけ決めてあるのに使われるのは稀なんだよね。せっかく考えたんだから紹介だけでも…と思ってるとセリフが妙に説明口調になってしまいます。精進精進。次で最後です。また第三者視点です。

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