君と僕の昨日と明日 -2-


《小山慶一郎Side》


 J−Supportの楽屋では、今日も草野が横尾相手に愚痴大会を開いている。

「大体なんで赤西くんなんだよ。あんなヘタレじゃなくても亀梨くんだったらもっと他に相応しい人が絶対いるはずなんだから!」

「例えばお前とかな」

「そうだよ! 俺だっているんだから! なのに…なのに何で赤西なんだよぅ…」

 最後のほうは自分で言ってて泣けてきたらしく小声になってる。

 近頃ずっとあんな調子。

 亀梨くんと赤西くんが一緒にスタジオ入りしたり、一緒に帰っていったり、二人っきりで会話してたりするといつもこう。

 邪魔しようとして失敗した草野が楽屋でグチグチ言ってんの。

 で、大抵それに付き合ってるのは同じ亀梨くんファンの横尾だけで、他の連中は見て見ぬ振り。

 そして。

「だーもーうるせ。お前がさっさと亀梨くん諦めりゃそれで済むことだろーが」

 横尾は横尾で、いつまでもグチ聞き役に徹しているわけがなく、たまにこうやってキレる。

 そりゃあんなに繰り返されてちゃなぁ…(合掌)

 でも草野…最初はただ憧れてるだけって言ってたのに。

 今は誰が見ても明らかなくらい、ラブラブビームを亀梨くんに発してる。

 …受け取ってもらえないけど。

 人の恋路を邪魔するヤツは馬に蹴られて死んじまうんだぞ…まあそれはいいとして。

 最近の草野の行動(ってか主に愚痴)に触発されて、もしかしたらオレって! みたいなことを感じ始めた。

 それは、同じJ−Supportのシゲこと加藤成亮のこと。

 BADのときから、なんとなく気にはなっていたんだけど、草野のおかげであれあれ〜?って。

 まぁ、その、要するに、オレはシゲのこと、好きなんじゃないかって。

 いわゆる恋愛対象として、付き合って欲しいんじゃないかって。






 男同士で、とか思わなかったわけじゃない。

 けどこの事務所内で付き合ってるカップルって案外多いし(前出の赤西くんと亀梨くんもそうだし)何よりシゲ自身、ちょっと前までその中に含まれていたわけだし。

 その点に関しては恐らく問題ないだろうとは思うんだけど、やっぱり自信ない。

 だって、ずっと仲間として、ライバルとしてやってきたオレにそーゆー目で見られてたなんて知ったら、きっとシゲ、気持ち悪いだろうと思う。

 相手が男しか好きになれないのなら話は別だけど、たまたま好きになったのが同姓だったってパターンがほとんどだから、普通だったらまずいい気分はしないよね…。

 だから、どうしたらいいのかわからなくって、一人じゃ埒があかないってことになって、ある日悩んだ挙句に同じユニットの武内に相談した。

 そしたら。

「小山くんさ、そこまで自覚しててなんでそんなに自信ないかな〜」

 って呆れられた。

「だって〜」

「だってじゃないの。あんた俺より年上でしょう? まあそこが可愛いんだけどね」

「別に可愛くないし。それにオレシゲと三つも年違うんだぜ?」

 そう、そこも悩みの一つ。

 年の離れた夫婦とかって珍しくないし、大した事じゃないけど、今のオレたちの年齢ってたった一つの年の差でも先輩後輩ってうるさいじゃん?

 かなり重要問題なんだよ。

「大丈夫じゃん? シゲって割と年上好みなとこあるし、逆に年上に好かれるタイプでもあるし」

「それっていいことなのか? 悪いことなのか?」

「五分五分かな?」

 っ、武内のヤロー、人事だと思って楽しんでねーか?

 だいたい相談してるってのに何でゲームなんかやってんだよ。

 相談といってもオレが武内の家に押しかけた形だけに大きく文句も言えないのが悲しい。

「そんなことより、問題は別にあるんじゃないの?」

「え?」

 ちょっと不貞腐れて出されたサイダーを飲んでいたオレは急な問いへの反応が遅れた。

 武内はゲームの電源を切って振り向く。

「東新だよ。知ってるよね、シゲの元こ・い・び・と・だったってこと」

「…知ってる」

 東新…東新良和ってオレのニコ下でシゲの一コ上。

 ダンスが上手くて、BADの時も五関くん(MA並にダンスが上手いとジュニア内じゃ有名)とシンメで踊ってて、その二人だけ衣装が違ったりしてて、新しく出来た別のユニット(ING)と掛け持ちしてて、挙句の果てには向こうのユニットでオリジナル曲を真ん中で歌ったりしてて。

 サイズは小さめで、儚げでオレから見ても守ってやりたくなるタイプ。

 腹筋兄弟とかいって実は力も相当強かったりするんだけど、雰囲気がか弱いんだよ。

 オレがシゲと初めて会った時、すでに付き合っていたらしい。

 BAD時代に別れたみたいだけど、まだ二人とも未練がある…みたいな噂さえある。

 とにかくかなりの強敵。

 もしシゲを巡って争うとしたら、九割方オレ負ける自信ある。情けないけど。

「で、その東新がどうしたって?」

「お前わかり易いな。あいつの話になるといつもの元気もどこへやらってか」

 そ、そうか?

 自覚はないんだけど、どうやら自信のなさが思いっ切り表に出てしまったらしい。

「んー、あのさ、今度シゲが金八先生演る話、聞いた?」

「うん、すごいよな、あいつまだ中二なのに中三の役だろ? さすがシゲ」

 好きな人が世間に認められるって、凄く嬉しい。知らず機嫌が良くなる。

 で、それがどうかしたのか? と訊くとまた武内は尋ねてきた。

「共演者、知ってるか?」

「共演者?」

「そ。前もジュニアが三人演ったじゃん? 風間くん達の時。今回もそうらしくて、シゲ以外のメンバー、誰なのか知ってる?」

「知らない……!! まさか」

 まさか。

「そのまさかだよ。後の二人はマッスーと…東新」

 嘘だ…。

「嘘じゃねーよ」

 声に出していないのにオレの心中を察した武内。

 あの二人、東新がBADとINGの掛け持ちで忙しくて、どっちかっていったらINGをメインに活動してて、それが原因ですれ違って別れたって聞いたから、同じ仕事でまたヨリを戻す可能性だって結構高い。

 どうしよう…!!

 武内が至極真面目な顔で、混乱している俺の肩を掴んで言った。

「お前、早くしないと本当に…東新に取られるぞ」











今回は慶ちゃんオンリー。その代わり次回はシゲサイドです。武内さんのキャラが慶ちゃん以上に嘘ついてると思われますが、何故か私の中の彼のイメージってこんななんですよね。恋愛偏差値第二章も見てないし。ちなみに密かに武内×飯田派。きょんのキャラが更に分からないので書けません(苦笑)今回もそうですが、今後も私の趣味でやたらとーちんが美化されてる可能性があります。彼については二年くらい前から可愛いな〜とか思ってたので、最近活躍中で嬉しいんですが。信用はしないで下さいね。慶ちゃんも、必要以上に可愛くしたかったので(なってるかどうかはともかく)本当にこんなキャラだと思わないほうが良いと思われマス。

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