トイレ
ある日マッド海野の如何わしいクスリの前に、否応なく性転換を果たしてしまった啓太は、現在女の身の上で全寮制男子校に通う、物好きになっていた。
本当なら、制服が合わない時点で学園を辞めようと思うくらいに追い詰められたのだが、何処から持ってきたのか、女の体でも凹凸が目立たない制服を中嶋から与えられ、体育以外の授業なら、問題なく受けられることになった。
色々問題点は残るものの、いずれ何かの折に男に戻れる日がくるかもしれない。
啓太はビクビクしながら、BL学園生活を送っている。
そんなある時である。
朝から腹の辺りに不快感が残るなぁ、と思いながら、それでも原因には思い至らず、ついでに酷いイライラにさいなまれながら過ごした一日の終わり。
生徒会室に向かう為に校舎を移動していた時、ぬるり、とあまり楽しいとは言えない、何となくあまり良い感想の抱けないものが、某所から流れ落ちてくるのに気付いた。
「え?」
それは、女の体になってから、何度か味わったことのあるもので――しかし、それはその感触を覚える前に、中嶋限定で激しいエッチをした、という前提の下で訪れるもの……。
当然先程までは授業を受けていたものだから、誰を相手にもエッチに至ることはなかった。
慌ててトイレに駆け込んで、更に個室に閉じこもった上でズボンを脱いで。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
気絶するかと思った。
パンツの中にべっとりとこびりつく、真っ赤な血。
しかもまだ出ているらしく、股の間を血が零れ落ちる。
「お、俺、病気!?」
混乱の最中であろうが、一応血をどうにかしなければ、という思考は働くものなのだろう。
啓太はトイレットペーパーをぐるぐると手に巻きつけると、かなりの厚さに巻かれたそれを棒状にまとめ、あろうことか、あそこに突っ込んだ。
ついでにパンツとズボンを上げ、上着を脱いで腰に巻きつけると、生徒会室まで一気にかけぬける。
某所に突き刺さった棒状のペーパーが動きを妨げ、某所を突き刺し多少痛かったが、そんなことに気を回している余裕は、既に啓太にはなかった。
「中嶋さん!」
この場合、救いを求める相手は、既に啓太の体の変化をこれ以上ない程に知っていて、さらに思うがままにその状態を楽しんでいると思われる、中嶋以外にいない。
飛び込んだ生徒会室。
叫んで、中嶋の隠れるパーティションを蹴り飛ばした啓太は、中嶋に縋りつく。
「俺、病気になりました! さよなら、中嶋さん!」
「……なんだって?」
突然飛び込んできたら、己と俗世界を遮断する為に置いているパーティションまで弾き飛ばされ、中嶋は不機嫌に啓太を見下ろす。
いっそお仕置きに犯してやるか? と不穏なことを考えている中嶋は、いきなり不可解なことを言い出した啓太に、また好き勝手な妄想が湧いているのか、と次の瞬間には呆れた声を上げる。
「だって! トイレに行ったら血がどばーって。体から血が出て、足りなくなると死んじゃいます。ってーか、何か不穏な病気かもしれないし!」
「……血? 血が出た? トイレ?」
ポイントは、血とトイレである。
トイレに行って確認したということは、血はあまりおおっぴらに見せられる場所ではないところから出たことになる。
そして啓太の体は、今は女。
中嶋のコンピューター並みの頭は、無駄な知識を多く溜め込んでおく保管庫でもある。
はじき出された答えは……。
「それは恐らく病気じゃないな」
「へ?」
「お前、女になってどれくらいになる?」
問われた啓太は、あまり嬉しくはない歴史の、その始まりの日を思い出す。
「えっと……二週間?」
「では、まだ経験がなくても当然だな」
中嶋は、ふぅ、と溜息をつくと、啓太の手を取ってまずは保健室へと向かった。
BL学園は、敷地内に鈴菱製薬の研究所と簡素な病院があるので、学園の保健室にはあまり人がいたことがない。
しかしながら、いざという時は病院の方から医師がやってきて、大掛かりな治療が行われることもあるので、保健室の設備はしっかりしている。
「えっと、ここで何を?」
「探し物だ。あと、そっちのロッカーに制服と下着の予備があるから、それを用意しておけ。まだ着替えるなよ」
「あ、はい……」
言われるままに啓太は制服と下着の予備を取り出し、中嶋の行動を眺める。
そうしている間にも、じわじわと滲む血の感触に、啓太はいつそれが足を伝って落ちるのか気が気でない。
今は棒状ペーパーのおかげでまだ無事だが、何時防波堤が決壊するか判らないのだ。
啓太の思考がぐるぐるしている間に、中嶋はどこから取り出したのか、茶色の紙袋一杯に何かを詰め込んでいた。
袋が一杯になると啓太を振り返り。
「トイレにいくぞ」
「はい?」
「ついてこい」
「あ、はい……」
どうやら治療をしてくれる、というのではなさそうだ。
当然といえば、当然だろう。中嶋は医者ではなく、学生で生徒会副会長。
いくらそれなりの知識があろうと、突っ込んだ治療を行うことは出来ない。
先を歩く中嶋の後ろを、啓太は懸命に歩く。
そろそろ防波堤決壊の危機が近付いてきそうだったが、行き先がトイレだと思うと、何とはなしに安心感があるのは、何故だろう?
保健室から程近いトイレの中、中嶋は啓太を個室に誘うと「脱げ」と命令し、ズボンから下を全て脱がせた。
あらわになった細く頼りない下半身。その両足の狭間から、血に染まった棒状の何かが顔を覗かせていた。
「それは?」
「えっと……紙を丸めて……」
「なるほど……処置は悪くはない」
咄嗟のことだったとはいえ、それが出来るなら、啓太は案外とハプニングに強い性格をしているのかもしれない。
「悪くはないが……可愛い顔をして、卑猥な格好だな」
楽しげににやりと笑う中嶋に、啓太は頬を染めて、ぷい、と視線を外す。
「俺はそれどころじゃないのに……酷いです……」
「ああ、済まない。だが、俺以外の何かがそこに入っているんだからな。嫉妬して当然だろう?」
「はぁ!?」
どこの世界にトイレットペーバー棒変化に嫉妬する馬鹿がいるというのだ?
啓太は驚いて中嶋を見上げる。
しかしながら、楽しげに笑っている中嶋の目は案外と真剣で笑っていず、ひたすら啓太の股間を凝視している。
ヒシヒシと嫌な予感を感じる啓太。
中嶋がこういう目をしている時は、何かよからぬことを考えている時。
しかも、啓太が女性の体になってからは、それが顕著になり……。
「よし。俺が塞いでやろう」
「はい!?」
予感的中!
中嶋は、全く中嶋らしく思い切りよく股間のものを引き出すと、何時の間にか準備万端整っているそれを、啓太に見せつけ、呆然としてしまった啓太の片足を軽々と持ち上げる。
「うわっ!」
無理矢理片足立ちにさせられた啓太は、バランスを崩し中嶋の胸に倒れみ――。
「いきなり何するんですか!」
怒って顔を上げたところに、すかさずキスが降ってきた。
今まで数え切れない程の男女を泣かせてきた経験がものをいうのか、中嶋のキスはたくみである。
恋愛初心者に毛が生えた程度の啓太など、そのキス一つで昇天一歩手前まで導かれてしまう程だ。
だが、中嶋はキスだけで終わらせるような、簡単な男ではなかった。
何時もなら前戯とばかりに体の隅々まで愛撫されるのが、既に啓太の内は血で潤っている。
広げられた足の間に、もうこれ以上ないくらいに卑猥に突き出たペーパー棒を、中嶋は思い切り良く引き出した。
「う……っ」
どこぞに触れて感じてしまったのか、啓太はキスで塞がれた口内で、くぐもった呻きを上げて、ふるりと体を振るわせた。
こうなってくると、楽しいのは中嶋である。
血で汚れるのをものともせずに、消毒代わりに指を舐め、その唾液に濡れた指を、啓太の内へ押し込む。
ぬるぬると絡む血で潤った内部を掻き混ぜ、その感触を楽しみ。
一際感覚が鋭くなっている体は、それどころじゃない、と自覚しているのに関わらず啓太の意識を狂わせ惑わせ、ついには陥落してしまった。
淫らに腰を振り、中嶋の昂ぶったものをせがむ。
あるだけ感じた体は、一人で立っていることも出来ず、血で汚すことも覚悟の上で中嶋の膝に支えられた状態。
その上、指で広げられたそこに、熱い肉棒が……。
「は、早くッ!」
切羽詰った啓太の声に、ふ、と笑った中嶋は、ゆっくりと己を埋めていく。
正面からがっちりと重なった体は、啓太の望みをかなえるごとくに、ゆっくりと動き始め――。
尋常でない状況と場所。そして行われた行為故、達するのは非常に早かった。
らしい。
出血原因が、女性ならば誰にでも平等に訪れる――らしい生理だと判ったのは、生理中だと判っていたのに遠慮無用に中出し状態で3度程致された後のことだった。
パンツに生理帯(ナプキン)を当てるのから教えられ、昼と夜の使い分けまで教えられた。
2006/10/24
女体化10のお題