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S M L LL

中嶋×啓太編5


銭湯

「あらあら、まぁまぁ……」
言ったまま絶句してしまった自分の母に、啓太はただただ申し訳ない思いで一杯になる。
それはそうだろう。何しろ男に生んだはずの息子が、某学園の寮に入って帰宅すると、何故か女になっていたのだから。
「まぁ、そうだったの、啓太がねぇ……」
しげしげと見られて、更に恥ずかしくなる。
もう色んな感情がごっちゃになって、啓太は泣きたくなった。
何故に! 何ゆえに!?
何で男に戻れないまま実家に。更には何時用意したのかワンピースなどという可愛らしい服まで用意して、尚且つ啓太には一言もないまま、実家に戻らなくてはならなかったのか!
「ということで、将来的には僕が婿養子としてこの家に入ることになります」
などと、平然と隣で説明している男を、出来ることなら一発二発殴りたい気持ちになる。
だが、殴れない。殴ったら、家族の前であろうが何だろうが、その場で犯されそうな気がする。
それだけは嫌だ!
「まぁまぁ、そうなの? ええ。それは別に構わないのよ。むしろ嬉しいわ」
でも……と母は啓太に向き直り――。
「本当に女の子になっちゃったの?」
と尋ねる。
啓太は一瞬ためらったものの、女になってしまったのは紛れもない事実だったので、まさか嘘を吐くわけにもいかず、こっくりと頷いた。
「そうなの。でも言葉だけじゃ信じられないのよ? 知ってる? 常識って?」
そりゃ知ってる。だが、知っててもどうにもならないことって、やっぱりあるのだ。例えば中嶋とか中嶋とか、中嶋とか。
「信じてくれ、とは言わないし、結婚は認めてくれなくて良いから」
良いから、なんて甘いことは言わず、いっそ反対して拒否してくれ!
願う啓太の心を他所に、母は何故か啓太ににじり寄り、おもむろにむんずと――胸と股間を掴んだ。
「え? や……っ!」
思わず声を上げる啓太をしげしげと眺め。
「本当に女の子になっちゃったのね。しかも、胸が大きくない?」
感心したように啓太を見る母。
その前で啓太は……思わず出てしまった恥ずかしい声と、思い切り母の手に感じてしまった己を恥じて俯いていた。
「まさかお母さん、巨乳の息子をもつとは思わなかったわ」
「巨乳という程ではありませんよ。まだまだ発展途上ですし」
「あら、そうなの? じゃ、私は貧乳ってことなのかしら?」
「……」
なんだか妙な切り返しに、思わず沈黙してしまう中嶋。
しかし母はそんなことにはまるで気を払わず――。
「じゃ、お母さんのじゃちょっと小さいかもしれないけど、下着一式と服を出してきますね」
「いいえ、それには及びません。啓太の身の回りは僕が用意しますので」
「あら、そう? ならそれで良いけど……結婚前なのに、こんなに面倒を見てくれるなんて、幸せね、啓太」
――いいえ、むしろこの人が俺の人生を狂わせたんです!
思わず飛び出そうになった。

その日は中嶋と共に、伊藤家に泊まることにした啓太。
泊まる――というのはちと違うかもしれないが、仕事から帰った父と学校から帰った妹からは、思い切り他人行儀にされ、自分が他人になったような錯覚を覚えたのだ。
いや、むしろ父と妹の反応の方がまともなのだろう。
「今日はお風呂が壊れてるから、銭湯に行って来てね」
の母の言葉に、中嶋と共に近くの銭湯に向かいながら、啓太は言っていた。
「俺……中嶋さんちにお嫁に行きます」
「突然、どうした?」
「なんかもう、あの家は俺の家じゃない気がしてきて……」
「立派にお前の家だっただろう?」
「そうかな?」
本当にそうなら、あの父の腫れ物に触るような態度はなんだ? 妹の、他人にも滅多に使わない敬語はなんだ?
「……初めてですよ。俺、妹から『ありがとうございます』なんて言われたの……」
啓太よりも気性の荒い妹は、兄を殴りはしても、礼を言うようなことは一度もなかった。
可愛がっている妹である。礼を言われたのは嬉しかったが、あれでは他人に対して言ってるのと変わらない。
大好きな家族だったのだ。なのに、自分は家族と思っていても、向こうは違うのかもしれない……そう思ったら、涙が出てきて……。
道端に立ち止まり、本当に泣き出してしまった啓太を、中嶋は抱きしめる。
「済まなかった。今回ばかりは……無神経だったな」
「……本当……ですよ……」
ぐずぐずと涙を流す啓太は、中嶋の胸に顔を埋め、しゃくりあげた。
今まで自分のものだと思っていたものが、突然自分の手からすり抜けていってしまう喪失感。
女になった時は混乱ばかりが頭にあって、それ程考えずに済んだが、今は……。
「もう……俺……、中嶋さんしかいないんですから……大切に、してください……」
言えば、頭を撫でられる。
「大切にしてるだろう? お前は、俺の隣に笑っているだけで良いんだ」
「絶対ですよ?」
「ああ……判ってる……」
中嶋は啓太を抱きしめる腕に、力を込めた。

それから数刻後。啓太と中嶋は、手を繋いで夜道を歩いていた。
「本当に、凄かったんです!」
興奮気味に話すのは、啓太。
「俺、女の人ばかりのお風呂って、初めて入りました!」
元が男なんだから、当然といえば当然だろう。
「楽しかったか?」
「楽しかったって言うよりも、凄かったです! ぽろりでもろり、でした」
「なんだ、それは?」
「もう、色んな胸があってですね? 湯舟に入るともう色んなところがメロメロで」
啓太の表現は良く判らないが、興奮しているのだけは伝わってきた。
齢十六で女になった啓太は、それまでが男だったので、それはそれはもう、女体というものに深い憧れを抱いていただろう。
だが、突如としてそれは啓太のものになったわけだ。
とはいえ、自分の体は鏡でもない限りはじっくりと見ることは出来ない。
結果、女になり女湯に入った本日、それこそ溢れんばかりの女体の神秘を観察したのだ。
「体って、本当に一人一人差があるんですね? 凄い胸が大きい人もいましたよ? 俺なんて、まだまだですよ」
自分の胸を揉みながら、啓太。
「でも、肌は絶対に俺の方が綺麗です!」
どうやら女としてのプライドも身についてきたらしい。
「判ったから、そう興奮するな」
「でも、変なんですよ?」
「なにがだ?」
「俺、心は男でしょ? なのに、沢山の女の人の裸を見ても、性的な意味での興奮はしなかったんです。ただ、凄いなぁ、って。見惚れるだけで」
「ふぅん……」
「ってこれ、心まで女になりつつある、ってことなのかなぁ?」
小首を傾げる啓太に、中嶋はニヤリと笑うと……。
「なら、逆に俺の体を見て、どう思う?」
風呂上りで暑いからか、何時もならきっちりとしている中嶋の服装は、今は乱れている。
シャツのボタンが数個外され、そこから見える胸は、綺麗に筋肉がついていて……。
あの胸に、さっきは慰められたのだ。
そう思ったら、頬に熱が集まってきて――啓太は思わず視線を反らしていた。
「ちゃ、ちゃんとボタン、留めてください……」
「何故?」
「何故って……」
恥ずかしいからに決まっている。
「何時も見ているだろう?」
「だけど! 今はそういう時じゃないし!」
「そういう時? どういう時だ?」
意地悪そうな囁きに啓太は更に赤くなる。
思わず滲んだ涙を拭いながら。
「……意地悪……」
と呟けば、頭にぽん、と手の感触。
「涙腺が弱くなっているな」
「中嶋さんの所為です……」
「そういうことにしてやっても良い。だが、そろそろ帰らないと、心配するんじゃないか?」
「ああ、そうですね」
一度離れてしまった手が、再び繋がれ、啓太は中嶋に引っ張られながら家路を辿る。
灯りのついた我が家。
玄関先では母が待っていて。
「お帰りなさい。どうだった?」
と聞いてくれた。
中に入れば父と妹が「ごめん」と謝ってくれ。
驚いて母を見れば、判ってるわよ、の笑顔。
一気に涙腺が全壊した啓太は、中嶋の胸に飛び込んだ。

2007/04/17
女体化10のお題

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