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罪深し至宝 7

「お待たせして申し訳ありません、ルーク様」

そう言って爽やかな笑顔を見せた青年は、青い軍服をまとっていた。

「良く来てくれた、フリングス将軍」
「いえ。他ならぬ聖主様のお召しですから」

フリングスはマルクトのものではない優雅な敬礼をすると、背後の陸艦を示した。
ジェイドにも見覚えのあるそれは、何があろうが決して使ってはならぬという言葉と共にマルクト軍に保管されていた、過去の遺物。
これには流石のルークも驚いて、フリングスに問うような視線を向ける。
何故ルークがこの陸艦を知っているのか?

「これはマルクト皇帝陛下にすら権利のないもの。唯一今、至宝の名を抱く貴方様のものでございます」
「そりゃ……まぁ、そうなんだろうけど、今動かすか?」
「時は熟しました。今こそ目覚めるべきでございましょう? もう譜石は第六まで――愚かしい人の手によって現実と化してしまいました。これを覆すのには、貴方様の本来のお力と血が必要です」

二人の会話を、どういうことだ? と疑問を浮かべて見つめる一行の中、今だ時間が足りずルークに服従を誓いきれないリグレットだけが、愕然と目を見開いた。

「まさか、貴様が『罪深し至宝』だと言うのか!」

え? とローレライ教団の関連者のみがその声を振り向く。
『罪深し至宝』その名は、ローレライ教団の経典に登場する。曰く――。

「ユリアを滅ぼし、穢れた血の一族、罪深し至宝……」

誰が呟いたのか、その言葉が呼び水となってルークを怪訝に伺う者が増える中、ルークは嫣然と笑った。

「教団の経典にはそう書かれているらしいな。とは言え、事実は常に誰かの都合の良い形に曲げられている。その裏に隠れる真実については、誰も言及しない」
「今はローレライ教団の曲げられた真実よりも、まずはマルクトへ向かうべきでしょう。キムラスカはもう預言という名の落とし穴に落ちています」
「だな……」

促したフリングスに逆らうことなく、ルークは示された陸艦へと乗り込んでいく。それにガイも続く。
アッシュも、顔では何か問いたげな様子を見せていたが、主人と仰ぐ人物に逆らうことは彼は考えていない。

「因みにフリングス将軍」
「アスランで結構ですよ」
「ならばアスラン。アクゼリュスの住民も、グランコクマへ送りたいが……」
「グランコクマは無理です。瘴気の感染方法がまだ特定されていませんので、住民達はここにテントを張りしばらくは適切な治療を受けることになります」
「そうか……」

アッシュの部下とガイの呼んだガイ自身の部下の手によって、住民はぎりぎりで全員救助を果たすことが出来た。
アクゼリュスそのものは崩落に近い状態で地盤沈下を起こしているが、だがそれはもう、どうしようもないことだ。

地面にそのまま座り込んで、沈み行く己の街を眺める住民達の心境はどのようなものだろうか?
命だけでも助かって良かったと、そう思えるのならば良いが……。

「グランコクマへ向かう」

ルークは断言し、そこから先は振り向かなかった。



陸艦の中、一応のこと護衛との名目でフリングスが扉を守る部屋の中で、ジェイドとルークは向き合っていた。当然のこと、ルークの側にいるのが当然とばかりのガイやアッシュもいる。

「そうだ。ガイ、動かしたのはホドの?」
「ああ。かつてガルディオスを守ってくれていた者達だ」

アクゼリュスを出る際、ガイが握り締めていたのは、即ちガルディオスに繋がるホドの元住民達の名簿だった、ということらしい。

「感謝していると、伝えておいてくれ」
「いや? もう判ってるさ。じゃなきゃ、俺に呼び出されたからといって、今はもう別々の生活を送っている彼らが、来てくれるわけがないからな」
「けどなぁ、感謝の気持ちは伝えとかなとな」
「伝えておくよ」
「それとアッシュ。アッシュの部下達にも、感謝を伝えておいてくれ」
「……上官の命令には絶対服従が軍人だ。感謝などは必要ない」
「ん。まぁ、そうなんだろうけど、一応な」
「……判った」

ガイとアッシュは、うっすらと笑みを浮かべている。
下僕にとって主の命令は喜びではあるが、そこに感謝を向けられるのは、また別格の喜びがあるらしい。

「しかし……罪深し至宝、ですか……」

キムラスカの至宝とは知っていたジェイドは、探るような目でルークを見やる。

「何度もあなたが言っていた穢れた血。……私はあなた方の乱れた性生活を差してそう言っているのかと思ったのですが……違ったのですね?」
「いや? 違ってないけど? そもそもそういう生活が根底となっているから、穢れた血と呼ばれたんだ、聖家のあった時代に。……ま、これからマルクトの皇帝に会いに行くんだ。アスランを自由にする為にも、皇帝には隠されてたことを話すから、その時に疑問があったら聞いてくれ」
「話してくれるんですか?」
「だって、協力してくれるだろ? ジェイド?」

ジェイドは苦い笑みを浮かべ、眼鏡を押し上げる。

「……どうしてそう思います?」
「ここで俺が動かないと、世界は預言に殺されるから……かな? あと、ユリアの血を持つ者に?」
「ヴァンですか?」
「そう。最後まであがきやがってあの髭野郎め……」

坑道から出たルーク、ジェイド、ジェイドに拘束されていたヴァンは、崩落に巻き込まれた。
一部大地が他の大地から切り取られ、ゆっくりと沈下していくのに、街に取り残されたルーク達は一瞬自分の生存を諦めたくらいだった。
そこを助けてくれたのが、ガイの呼んだ元ホドの住民達だった。
一度崩落を経験している彼らは、その時崩落する街から逃れたのと同じ手段でルークとジェイドを救った。けれど、ヴァンはその隙を狙って逃げおおせたのだ。

「あのまま捉えられていたら、俺の調教フルコースで下僕……」

そこでガイとアッシュがぶんぶんと首を振った。
ヴァンごとき人間など、ルークの下僕には相応しくない、とありありとその表情が叫んでいた。

「んじゃ、奴隷?」

こくん、と二人が頷く。

「んじゃまぁ――奴隷にしてやったのに」
「因みに調教フルコースとは?」
「一週間生で放置、玩具、道具他、ありとあらゆる方法で精力と気力を毟り取り、意識が朦朧としたところで絶対服従」
「効果は?」
「さる貴族が俺を屋敷に監禁したことがあった。父上が半狂乱で探してくれたんだけど、流石に二度目の誘拐は外聞が悪いからな。ファブレに警備の欠点があるなどと知られるのはまずい。で、秘密裏に探されたから時間がかかって。その間一週間。俺はその貴族の屋敷で、延々とその貴族を銜え、精を搾り取り……まぁ、一日目に陥落してたんじゃないか?」
「それは……凄い名器ですね……」
「俺もそう思う。んで、二日目から屋敷の中は自由に動き回っても良いから、絶対に逃げないでくれ、って足に縋られて懇願されたんで、二日目からはその貴族に更なる天国を教えてやった」
「……その貴族は今?」
「うん。一週間に一回は、足を舐めさせてくれってやってきてたな」

ジェイドは遥かグランコクマの皇帝を思う。
あの、やたら自信に溢れた皇帝も、ルークの調教フルコースを食らったら、ルークに足を舐めさせてくれ、と懇願するようになるのだろうか?
それは嫌かもしれない……。
だが……。

「ルークの足ですか……」

ジェイドの視線はルークの足に釘付けになる。
今は赤い靴の中に隠されたそれではあるが、見たら舐めたく成る程に魅力的なのだろうか?
ルークはそのジェイドの思考に気付いたか、首を振った。

「ジェイドはやめとけ。足なんて舐めなくても、望むならきっちりと相手するから」
「は?」
「下僕になりたいってなら、止めないけどな」

それに……、とルークは続ける。

「穢れた血は呪縛に等しい。それに絡められたら、ジェイド自身が逃れたくても、逃れられなくなる」

それこそ、己の意志など関係もなく。

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