びっくりして立ち上がりかけた。肩を押さえられる。またイスに戻される。
「股間とか‥」 俺の顔を見ながら足の間に手を入れてくる。痴漢と同じような所に同じように力が加わる。 「あっ、せっ先輩っ。何するんですかっ」 先輩はそれには答えず、俺の最後の言葉を繰り返す。 「胸とか‥」 手を抜くと今度はブレザーの中へ。そのまま片方の中心がある辺りをなで回す。指や爪が当たるとその度に締まってゆくのが分かる。シャツの上からでも判るようになったのだろう。 摘まれた。ビクッと震える。 「やんっ、やっやめて」 俺は両手で腕を押した。 先輩はもう片方の手を挙げた。すると今まで黙って見ていたその他の先輩達は、俺の両手、両足を持ち上げて長机に張り付けにした。 かなり大きな音がして机に放り投げられ押さえつけられる。俺は怖くなって泣きそうになる。 「そんなに怖がらなくていいよ。試してみるだけだって言っただろう。気持ちのいいものかどうか、この俺がわざわざ実験してやるって言ってるんだ。そんな泣きそうな顔するってのは失礼だろう」 虎王先輩はときおり自己中まるだしになる。そんな先輩に逆らえる奴はいない。 ブレザーのボタンが外された。シャツがズボンから引き出される。ネクタイがほどかれ引き抜かれる。シャツのボタンも外された。これで上半身は裸も同然だ。 「いっいやだ」 でもこれはちょっと酷いんじゃないか。先輩は怖いが俺は暴れてみる。しかし両手は上にあげられ、一つにまとめて押さえられてて、動いたのは肩ぐらいだった。足は机のはしに膝を掛け一つずつ押さえられて、そこから下が虚しく宙を蹴っただけだった。三人に、しかも凄く力がありそうな奴らに押さえ込まれていてはどうにもならない。 俺のそんな態度は気にならないようで、一息ついたらベルトに手が掛かった。バックルが外されて、ズボンの留め具も外された。そのまま一気にファスナーがおろされる。俺は焦って、もう一回渾身の力を振り絞って暴れた。が、今度は待ってくれなかった。暴れてお尻が浮いた拍子にトランクスごと下げられた。瞬間暴れるのをやめた。体中が脱力する。俺はすっかり裸に剥かれてしまった。 「やめて‥、止めて下さい」 もう懇願するしかない。先輩は平然としている。 「男同士なんだから恥ずかしがることないだろう」 そりゃそうかもしれない。でもそれは銭湯とか、そういう場所で、しかもみんな同じ状態の時のことを言うんだと思う。 先輩はさっきの続きをする。今度は両手で両方の突起を摘まれた。 「くっ‥」 みんなに見られてるのに体は素直に反応してしまう。声が漏れてからだが跳ねる。両方一緒に捏ね繰り回される。潰れたり、ひしゃげたり、伸びたりいろんな形になるたびに刺激が走る。 「やっ‥」 先輩にされてるからか、両方嬲られるのが初めてだからか、それとも見られているからなのか、その刺激に慣らされている体は、ものの見事に反応してしまう。 「声も出していいぞ。誰も気にせん」 そんな、必死で耐えてるっていうのに。それなのに先輩は胸囲を持ち上げるように手で覆うと親指で押した。そのままの力加減で回しだしたんだ。 「やっ、やめ‥てっ‥」 指が上の方にくると潰れたままでずり上がる。そのたびに仰け反ってしまう。 「やめっ、んんっ‥、やっ‥んっ‥」 とうとう声も出て、同じリズムを刻んでしまった。 まな板に載せられて活け作りにされてる、断末魔の魚のように虚しく跳ねる。 「うん、そうだなぁ。これだけ感度がいいと男でも触りがいがあるかな」 先輩は本当に実験してるかのようだ。冷静に感想をのべる。こんな事を されてても大事なポイントのような気がして聞き返す。しかしその間も手は 動いている。 「おっ男でも‥触りたい‥ですか?」 先輩は脇や胸の周りを撫でるとお腹を触る。そして脇腹からまたお尻にいった。尻のこぶを揉みながら、 「なかなか触りごこちがいい。でも反応がないとおもしろくはないな」 また感想をのべる。やっぱり俺がいけないんだ。男に触られて感じちゃうなんて。何の反応も示さなければおもしろくなくて狙われなかったかもしれない。俺って淫乱なんだろうか。 「女と違って目に見えて気持ちがいいかどうかが判るとこがいい。今凄くいいんだろう」 先輩は少し意地悪な笑みを浮かべた。俺は今の自分の状態に気がいくと、恥ずかしくて顔が熱くなった。百パーセント充電されているのだ。 「つらいだろう。ついでに抜いてやろう」 「いっいいです。せっ先輩。止めて下さい」 「何をいうんだ。中学の時にも教えてやっただろう」 まったく聞く耳持たずで俺のモノに手をかける。また乳首も摘まれる。そして動き出した。 「やだっ、先輩っ。虎王‥先‥輩。あっ、んんっ‥」 俺が昇りつめたと同時に声がした。 「冬哉ーっ!」 鍵が掛かっているのか、ドアを蹴破ったと思うぐらいの音がした。 「開けろーっ!」 虎王先輩は、やれやれ、と言いながらドアを開けた。声がそうかと思ったけど想像通りの人物がそこには立っていた。 こんな格好なのに。見られて泣けてきた。この姿を見て狼帝もキれた。すぐさま虎王先輩に殴りかかる。先輩はあっさりと腕を掴んで止めた。 「冬哉に何をしたっ!」 「別に何も」 「何もって格好じゃないぞっ」 「じゃあ本人に聞いてみるといい」 そう、先輩はおふざけが過ぎただけなんだ。昔からちょっときついのが好きなのである。 「大丈夫だよ。先輩は俺の質問に答えてくれてただけだから」 その説明は彼の気には召さなかったようだ。 「何でもいいからここから出るぞ」 狼帝に応えて俺を解放するように合図する。 俺は恥ずかしさでいっぱいで、思うように手が動かない。狼帝に手伝ってもらって何とか制服を着て、出ていこうとした。 その背中に先輩の声が飛ぶ。 「電車ぐらい一人で乗せてやれよ」 狼帝は凄い形相で先輩を睨むと、とても悔しそうに、分かったよ、と吐き捨てるように言った。 先輩、ありがとう。仲直りさせてくれて。あんな事をされても、実は痴漢に手を入れられたときより怖くなかったんだ。先輩だったから、本当に変なことにはならないだろうって信じてるから。 狼帝は何も聞かなかったが一言だけ言った。 「虎王には近づくな」 さっきのこと心配してるのかな。でもあれは先輩特有の悪ふざけなのに。確かに今日のはちょっと行きすぎの感はあったけど。狼帝だって分かってると思うんだけどな。でも反論しないでおいた。 俺も一つだけ聞いた。 「絶交?」 「するか、ばか」 俺の頭をくしゃっと撫でる。 二人で一緒に帰途についた。 金曜日は美姫さんにも挨拶するため、いつものように乗って、おなじようにされた。反応するから面白がってしてくるってのは解ったんだけど、我慢すればするほど意識が集中して感度が上がるみたいだ。平然とするなんて絶対に不可能だ。でもこれも今日で終わり。来週からは平和に通えるだろう。そして今日もトイレに駆け込んだ。 |