まんせいか6

 そう、毎朝抜いていたのが習慣になっていて、溜まってきたのだ。
 俺は仕方なく自分でした。おかずにしようと思った雑誌は役に立たなかった。あの手の、あの指の感触が思い出されてしまう。そうすると簡単にイけるのだ。

 毎日していると感触が薄れていく。いくら反芻してもだんだん思い出せなくなってきた。なんだか物足りない。そのうちに登校日がやってきた。
 やはり早い電車に乗った。ずっとあったように手は襲ってきた。前にゴムが被せられる。またお尻に‥と思ったら胸を嬲られ、高めるだけ高めておいて終わりだった。
   終点でトイレに行く。なぜ? 今日はどうしたんだろう。不思議だった。

 自分で抜いても何故か満足感が得ず、悶々とした何かは溜まっていく。そのうちに自分は指が入ってくるのを待っていたことに気がついた。愕然とする。やっぱり俺は淫乱なのか。こういうのが好きなんだろうか。いやだったんじゃなかったのか。実は良かったのか。
 凄いジレンマに陥った。それにプラスして何かも溜まってくる。気が狂いそうになっていた。

 狼帝の家に宿題をしに行くと、先輩に会った。そしたら悩み事でもあるのか、と聞かれてしまった。やっぱり顔に出てるのだろうか。先輩なら解決してくれるだろうか。

 お盆になると狼帝のうちは里帰りをした。先輩だけは受験生なので残っている。俺はこの機会に相談することにした。もうどう思われてもいい。この苛ついたイヤな気分から救ってくれるなら。それほどに切羽詰まっていたのだ。


 先輩は相変わらず爽やかな笑顔で迎えてくれた。相談があると言うと何でもと言ってくれた。少し話しやすくなった。
 俺は痴漢に遭ってること。それから逃げたいこと。だけどもやもやしてること。そして自分は好き者なんだろうかと悩んでいること。全てを話してしまった。あんまり恥ずかしいので詰まりながらだったが、先輩は我慢強く、じっと聞いてくれた。
 全てを打ち明けるとずっと一人で抱えていた物が分散されたようで凄く楽になった。先輩に聞かれた。
「まずどうしたい?」
 俺は考える。
「わかんない」
「このまま待って、新学期が始まってから痴漢を捕まえるか?」
 えっ、ちょっとそれは‥。だって俺の状態までばらされたらどうしたらいいの。
「逃げたいだけで、捕まえなくてもいいです」
「えっ、そうなのか」
「だっだって‥。その痴漢に抜かれてるなんて、みんなにばれたらどうすればいいのかわかんない」
「ふーん、じゃあ狼帝と一緒に俺もその電車に乗ってやろう」
「えっ、いいんですか」
 俺は一瞬喜んだがもう一つ問題があることを思い出した。美姫さんだ。
「その子だって痴漢に遭ってたんだろう。きちんと説明すれば解ってくれるよ。言いづらいなら狼帝には俺から説明しておこう。それで狼帝から言ってもらえばいいだろう」
 それならいいかな。黙ってたって狼帝は怒るだろうな。でもしょうがない。言いそびれると言いにくいことはもっと言いにくくなるんだから。
「それで解決かい?」
「はっはい。有り難うございました」
 やっぱり先輩に言って良かった。俺は久しぶりにすっきりした気分でうちに帰った。


 一日おいて俺はまた先輩に会いに来た。すっきりしたはずだったのに、気分は元に戻ってしまったのだ。先輩にそう告げる。自分は淫乱なんだろうか、そう質問する。先輩の部屋へ行ってるように言われて待つ。
「痴漢に遭ったのと同じ状態にして、すっきりしたら冬哉は好き者。誰にされても感じたら冬哉は淫乱。解ったかい?」
 えっどういうこと。疑問の顔の俺は無視され、立たされた。来るときに持ってきたガムテープをビッと切る。手を後ろで合わすように言われ、そうするとそのテープを巻かれた。
「せっ先輩。何‥するんですか?」
 窓際に連れて行かれて片方の足はベッドの足と一緒に巻かれた。
「これで、電車と同じだな。それでまずどうするんだい」
「どっどうするって」
「決まってるだろう。痴漢がすることだよ」
「えっ、先輩が?」

 俺はびっくりしてしまった。それでも先輩にせっつかれると一番始めにされたことから順番に話す。先輩はそのように手を動かす。先輩の手も大きくて指が長い。バレーをしているせいかゴツゴツしてるように思う。ほんとに痴漢に遭ってる気分になってくる。違うのは、事細かに説明させられることだ。
「回すって、どういう風に?」
 もうすでに胸に手が行って指は突起にくっついて動いてる。それなのにまだ聞いてくる。
「だ‥から、それでいいです」
 上にくると言葉が詰まる。先輩も解ってるんじゃないかと思うのに意地が悪い。
「こんな風でいいの。気持ちいいかい」
 そんな、気持ちいいって聞かれても困ってしまう。
「それで次は?」
「ゆっ指ではさんで‥」
 言葉通りにはさまれるともう口がきけない。
「どの指で、はさんでどうするの」
「見て‥ないから解らない。でも‥それから動かされて‥あっん」
 言い終わらないうちに擦り潰される。痴漢に遭ってるより両方嬲られて、倍、感じる。Tシャツに入れてた手を抜くと突然脱がされた。
「見えないと解らないな」
 後ろで二の腕に絡む。
「ほら、見てごらん。こんなに興奮してる。いつもこうなのかい。乳首を摘んだらこうなるんだよ。‥動かすとこう。これで合ってる? ちゃんと説明しないと解らない」
 んんっ、先輩は俺に見せるようにわざと二つの先端を上に向け、動かした。偶然、いつもと同じ触り方になる。
「ぁあっ合って‥る」
「そう、それでこれが一番感じるのかい」
 返事の代わりに喘ぎが出る。感じるたびに身体が反る。胸が反ると余計に敏感になる。快楽の悪循環が出来上がる。後ろから抱えられてるのでもたれてしまう。電車の中と違って抑えてなくてもいい。
 なんか先輩も慣れている。男としたことがあるみたいだ。

「随分と気持ちいいみたいだけど、次に行こうか。どうするんだい?」
 指を止めて、でないと喋れない。けど声にしなければ通じない。
 俺は必死で前にゴムをつけられ、同じ物を指につけ、されることを伝えた。先輩はすぐに机からコンドームを持ってくると俺のモノの先端につけた。

「ズボンも邪魔だな」
 そう呟くと履いていた五分丈のパンツとトランクスを下げられた。
「やだっ、先輩。やめて。もう‥いい」
「何言ってるんだこれからだろう。それでこの指はどうすればいいんだ?」
「もう本当にお願いだから止めて下さい。先輩にそんなこと‥」
「こうするのかい?」
 そこから先は言ってないのに、お尻に手を当てると指を入れてきた。慣れてしまったせいなのか。ゴムについてる潤滑剤のせいなのか。抵抗する間もなく奥まで侵入する。

 あぁ‥‥。
 これは‥。
 指が入ってくると俺は嘘のように満足した。これであの感覚が味わえるんだ。先輩にそんなことさせるなんて、悪いと思っても期待してしまう。
「この指はどうすればいい?」
 勝手に動かしながら聞かれる。
「入れたまま‥ひっくり返し‥‥」
 また言い終わらないうちに行動される。痛みを少し感じたが、痴漢には二本の指でされてたのだ。一本だとそんなに苦しくない。
「どこ? 言ってみろ」
 先輩は少しずつ動かしながらどこがいいか聞いてくる。
 あっ、もう少し、もうちょっと‥。うっんんっ‥。
「そっ‥そこっ」

 ダメ、もうダメ。そこがいい。よくってだめ。先輩はもう一つの手で乳首を摘んで、その腕は脇で俺を支える。
 あまりの快感に、一人で裸になり、喘ぎ、悶えてる、淫らな俺が居ることに気がつかない。
 立ったまま俺は気を放った。


 先輩に抱かえられて座り込む。足のガムテープが取られた。
「解っただろう。冬哉は好き者で、淫乱」
 そんな‥。でも、そうなんだ。今の俺のこの姿。誰にされても感じ、そしてすっきりしてしまった。
「さあ、俺は冬哉の言うとおりにしてやった。今度はそっちが俺の言うことを聞いてくれる番だぞ」
 俺のショックが冷めやらぬうちに上半身だけ俯せにベッドに乗せられた。お尻を突き出した格好になると足を開かれ、その上に馬乗りになられる。と言っても俺と反対方向に。
 何かを塗られた。初めて素の指が入ってきた。
「なっ何するんですか」
「お前だけ気持ちいいなんてずるいだろう」

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