参戦12

 でも‥、その前に大事なことを忘れていた気がする‥。
 あーっ!
 ヤダもう。
 鷹神が来た所為で、胸のクリップが外せなかった。やん。
 次の時間こそ取らなきゃ死んじゃう。

 そして俺はチャイムと共にトイレをめざし、また教室まで来ようとしていた鷹神に途中で捕まり、結局手で抜いてもらったのだった。狼帝がしてくれる、と言ってたことはすっかり忘れて。だってさっきしてくれなかったんだもん。忘れててもしょうがないよね。
 鷹神は休み時間のたびに顔を出し、とうとう最後までクリップは外せなかったのだった。

「おい、冬哉。都築どうしたんだよ。昨日に増してこええぞ」
「狼帝、昨日の帰りはびっくりするくらい浮かれてたのによ」
「ぜってぇ気分悪いって顔じゃなかったよな」
「あいつの機嫌なんて全部お前絡みだろ。なんとかしろよ」

 狼帝と同じく掃除当番の奴らに頼み込まれる。うっく、でも今日はどうしてこんなに機嫌が悪いのか、俺にも分かんないから困っちゃう。
「どっ、努力してみるよ」
 教室の隅で内緒話ししてたんだけど、その輪を抜け出し、狼帝に話しかけてみる。
「狼帝、今日はどうしたの?」
 対狼帝用の必殺技を発動してみるけど、残念ながら効果は上がらない。

 狼帝はじっと俺を見て、それからボソリと呟いた。
「鷹神とデートなんだろ。俺に気を遣わなくていいから早く行け」
 うっそー。俺って追い払われちゃったの?
 初めてのことで動揺する。だって狼帝にこんなに無下に扱われたことなかったから。

「ごっ、ごめん‥。俺でもダメみたい」
 みんなに謝ると全員に俺の動揺が広まった。
「冬哉でダメだったって事は、付ける薬がねぇってことか?」
「ああ、今日はいかん。触らぬ神に祟りなし、でさっさと掃除を済ませて帰ろう」
 最近はみんなでボーリングに行くのが流行っていて、狼帝が空いてる日、つまりは今日、成績に余裕がある連中で行くのが恒例となっていた。
「でも冬哉が来るなら」
 言いたいことは分かる。俺が参加するなら間違いなく狼帝も来る。
「やっぱごめん‥。今日は用事があるんだ」
 なんだ、じゃあどっちにしろダメじゃん、などとみんながブーたれて解散となる。各自、掃除の場所へ散った。
 俺は今週は当番じゃないから帰ることにする。鷹神も当番じゃないって言ってたし、待たせちゃってるかも。
 狼帝に一声掛けようと思ったけど、デートだって肯定するみたいなので止めた。女の子じゃないから一々報告することもないんだよね。


 鷹神との待ち合わせは正門。生徒は全くと言っていいほどいない。職員用の通用門だと言うこともあるけど、下手に先生の目に付いて、いらぬことを突っ込まれるのも面倒だから。それにこの門は駅に向かうには一番遠い。

 くつに履き替え、グラウンドから大回りして正門が見える位置までやってきた。鷹神は律儀に俺より先に来ていた。
 そっそれはいいんだけど、女の子と一緒だった。
 ううん、女の子と一緒でも問題ない。むしろ女の子が周りにいない方が珍しいと言った方がいい。
 で、でも‥これはどうすればいいんだろう。
 鷹神は駐車場の隣に少しだけ作ってある庭園風の大きな石に腰掛けていた。長い足をもてあまし、結構大きな石なのに、腰より膝の方が高くなっている。

 そして、なんと、その膝の上には女の子が乗っていたのだ。
 しかも鷹神の手はいつも俺にするようにブレザーとシャツの中に入り込み、おまけにキスの真っ最中!!

 冗談でも俺と付き合うって言ったじゃん!
 あ、あれ? 今、突っ込むところってそこだっけ?
 違う違う、こんな場所でやってることが大問題であって、鷹神が誰と付き合おうと俺には関係ないんだから。
 そんなのを目撃しちゃったもんだから、出て行く機会を失った俺は、校舎の陰から覗き見を続ける。距離は10メートルもないくらいに近いので表情までハッキリと見えちゃう。

 鷹神の手は明らかに女の子のおっぱいを揉んでいて、その子も感じているっぽいのが伝わってくる。背中から回した手は女の子を支えつつも悪さをし、もう片方の手はスカートの中に侵入しつつあった。鷹神の手のせいでスカートは捲れ、それでなくても短いのに太ももギリギリまで露出する。
 ちょっ、ちょっと鷹神。ここ学校だってば。しかも庭。外なんだよ、外。ほとんど俺の真正面にいた鷹神は、覗いてる俺のことに気が付いた。
 視線が合うと目だけで笑ったのが分かる。鷹神は俺の反応を楽しんでいたのだ。その証拠にキスを止めた第一声。

「あ、待ち人来ちゃったからここまでね」
 完全に顔が見えると悪戯っ子みたいにニヤリとしたのだ。
「ええ〜っ、残念。私の身体、欲しくないの?」
 さすがに鷹神の選んだ女の子。ここで私の方が好き、とかは言わないんだ。あくまで身体限定にしてるとこが凄い。
「いやそりゃすっごい魅力的だけど、先約だからね」
 未練たっぷりでゆっくり立ち上がり、俺の方を向いた女の子はなんと生徒会副会長。神のハーレム軍団ってマジなの?

「冬哉先輩、お待たせしました。鷹神くれるなら今すぐ譲って下さい」
 ニッコリと、美人な女の子しか使用不可能な笑みでのおねだり。あっさりと陥落しそうになって鷹神に止められる。別に無理にデートする必要ないのに。
「ダーメ、冬哉先輩は俺の方が欲しいの」
 鷹神に欲せられて心臓がドキンと跳ねる。なんで? 本当の恋人なんかじゃないのに。
「ちえっ、つまんない。私の方がずっと満足させてあげられるのに。冬哉先輩より絶対フェラ上手いよ?」
「フェッ、フェラ?」
 一応は隠れていたはずなのに、余りの発言に挨拶するより先に返答してしまった。

 副会長は俺の目の前まで歩いてくると、何故だか宣戦布告する。
「そう、フェラ。鷹神のために覚えたの。冬哉先輩は上手いの?」
「なっ、何言ってるの。やっやったことないよ」
 女の子にそんなことを露骨に聞かれるなんて想像も出来ず、めちゃくちゃ焦る。
「ええーっ!! やったことないって。鷹神、好きでしょう?」
 そっ、それってどういう意味? 単純に鷹神のことが好きなんでしょう? ってこと? それとも鷹神が好きならフェラくらいしてあげなよ、ってことなの? それとも鷹神がフェラ好きなの知ってるでしょう? ってことなの?
 なんかもう凄い発言で頭が混乱しちゃう。

 そもそも俺と鷹神に肉体関係があるってどうして知ってるの? でも知る術って言ったら一つしかないよね。俺は口の軽い鷹神をキッと睨み付けた。
 鷹神は非常に分かりやすく、大げさに顔を背けた。
 くぅ〜、こんな誤解をされたままじゃ堪ったもんじゃない。かと言って無理矢理されてるとも言い難い。でも惚れてないし、付き合ってなどない、とこれだけはハッキリさせておかねば。
 俺が口を開きかけたところで、鷹神からのストップが目に入った。口元に人差し指を立てシーってしてる。

 その隙に鷹神は副会長の後ろに回り、抱き締めながら耳に口を付けて囁いた。
「美緒ちゃんの方が数倍いい身体してるから。だから今度抱かせてね」
 確実に落ちたのが分かった。副会長、気が強くて頭が良くて、男ってバカなんだからってのが口癖で、いつもキリリとした顔が真っ赤になって最強に照れていた。
 うわっ‥、その顔に俺がやられちゃいそう。

 腰が砕けた副会長を鷹神はサッとお姫様抱っこすると、さっき腰掛けていた石まで運び、座らせた。
 じゃね、と言いながら軽くキスすると背を向けたのだった。


「冬哉先輩、お待たせ。でも先輩早かったね。もっと掛かると思ってたのに」
 えっ、なんでだろ。俺も掃除当番じゃないって言っといたよね?
 疑問が顔に出てたのだろう。続けて補足してくれる。
「だって狼ちゃんが離してくれないと思ったんだもん。だから暇つぶしに付き合ってもらったのに」
「ひっ、暇つぶしで女の子に外であんなことするの? 先生だって出てくるかもしれないのに。鷹神、やっていいことと悪いことがあるよ」
「先生は大丈夫。今ね、職員会議中だから。そっか、でもそれなら男の冬哉先輩にならやってもいいんだ?」
 俺のそばに来たすぐから肩を抱いていたんだけど、その手をも一つ下におろし、あっという間にシャツのボタンを外した。
 左手は上から、右手は横から手を出すとそのシャツを引っ張って開く。両方の乳首が一瞬にして丸見えになってしまう。

「なっ何するの」
 離れようと思っても肩をガッチリと押さえ付けられて動けない。仕方ないので咄嗟に鞄を胸まで上げて隠した。
「だって男なら上半身は裸でも問題ないでしょ」
 何もないのに上半身だけでも裸になってたら問題有るでしょう。運動してるわけじゃないのに。おまけに変な物付いてるし。
 そう言いたかった文句はあっさりと中断させられる。

「ああっ‥」
 丸見えになった乳首を鷹神がそのままほっておくはずはなく、両方共が直で摘まれてしまったのだ。

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