参戦13

「やっヤダっ」
「どうしてなのかもう既に尖ってたね。俺にされるとこ想像してた?」
 見えてるし、触ったんだからまだクリップが付いてるって分かったはずなのに、意地悪を言う鷹神。
「やっ止めて‥。そっそんなの‥してないってば」
「ちゃんと俺の証を付けてくれてて嬉しいよ。いい子だね」
 くにくにと擂り潰され、しかも耳元で囁かれたら効果倍増。たっ堪んない‥。

「美緒ちゃんと比べてたんじゃないの? 俺の方が鷹神を満足させてあげられるって」
「そっそんなこと‥」
 思ってるわけないのに。
「えーっ、でもさっきの顔。明らかに焼きもち妬いてたでしょ?」
「やっ‥焼きもち?」
「そう、焼きもち。恋人の俺がいるのにどうして女の子連れてるの? エッチなことしてるの? って思わなかった?」
 そこでまた口を開くよりも早く摘んだ乳首を上に倒されて、返事をするみたいに喘いでしまった。

「んっんんっ‥」
「あれ、やけに素直だね。素直な先輩も可愛くていいよ。俺はね、乳首を触ったときの冬哉先輩の反応が好きなんだよね。普段は素直じゃない反応も含めて全部が好きだから」
 ダッダメ。耳のそばで話すのは止めて。それは違反だって。
 さっきの副会長みたいに腰が砕けかけて鷹神に止められる。摘んだものをグッと上に引っ張られ、踏ん張るしかなくなったのだ。

「やっやん‥」
 何をされているのか周囲に人がいたらモロバレな程ビクビクと震えてしまった。だって一日中そこは刺激されてたんだもん。
「男は姫抱っこしてあげないから。バス停まで抱いて歩くには遠いしね」
 そこで鷹神は珍しくもあっさりと解放してくれて、彼の家に到着するまでは何事もなく過ぎたのだった。
 もしかしたらその珍しい行動が俺の身体を欲求不満にしたのかもしれない‥とは後から思ったことだけど。

「ねぇ鷹神。デートだって言ってたのに、何この状況」
 学校からの帰り道、どこへ寄るわけでもなく、真っ直ぐに帰宅してそのまま鷹神の部屋に入りベッドの上にいるこの現状。
「そんなこと言ったってしょうがないでしょ。美緒ちゃんとヤれる所だったのに、冬哉先輩に邪魔されちゃったんだから」
 なっ‥、別に俺はどっちでもよかったのに。俺が副会長から鷹神盗ったみたいに言うのは止めてよ。

「ヤりたくて仕方なかった。どっか寄って帰る余裕なんて全然なかった」
 いつもにはない真剣な顔つきで、真面目に呟く鷹神。ベッドの上で向かい合わせになって、鷹神の太ももに跨る俺のシャツのボタンを外していく‥。
 なんだか恋人同士のような雰囲気に飲まれ掛けハッとした。そう、昨日の学校での行為を思い出したのだ。

「ダッダメ。今日は鷹神が脱ぐの。いつも俺ばっかり裸に剥いて、どんなに恥ずかしいか」
 恥ずかしいなんて思ってるの? 悦んでるくせに、なんて言われそうなのが分かったので、口を挟めないよう次を繰り出す。
「俺だって先輩だし、指だけで鷹神に勝つんだからね」
「へぇー、例の勝負するんだ? 冬哉先輩に出来るとは思えないけどな」
 普段やらないことってどうしてこんなにドキドキしちゃうんだろ。手を出す前に後悔しかけて自分を奮い立たせる。

 そうだ、俺だって先輩なんだから。ちょっとはそれらしいとこを見せなきゃ。
 学校で考えていたことと、さっき副会長に言われたことが頭に引っ掛かっていたのかもしれない。さすがにフェラしようとまでは思ってなかったけど。
「でっ、出来るもん。鷹神も少しは俺の気持ちを分かったらいいんだよ」
 鷹神は好戦的に微笑むと、自ら制服を脱ぎ始めたのだった。

 ブレザーとシャツを脱ぎ去ると上半身が裸になる。虎王先輩ほどじゃないけど鷹神もそこそこいい身体してるんだよね。
 元々都築の男子は骨太だ。筋肉がガッツリ付いてなくても線が細いイメージはあまりない。
 龍将は細いって言われるけど、背が高いからそう見えちゃうだけで、実は結構しっかりしてる。
 俺と腕なんて比べると太さが全然違うもん。確かに4人の中では一番筋肉が少ないかもしれない。
 でも芯が太いから頼りない感じは全くしないのだ。

 目前に男の裸を見せられて何かを感じる‥なんて絶対にイヤなんだけど、いつも服を着ている相手が素肌でいるってことが気恥ずかしい。
 やっやだな‥。やっぱりなんか調子狂う。
「ほら、先輩ちょっとどいて」
 鷹神は自分の足から俺をどかせるとズボンを脱いだ。
 そこで俺の目に飛び込んできたのは派手なヒョウ柄のパンツ。
 ボクサータイプなのにこんなに派手なの見たことないよ。
「凄いパンツ‥」
「あれ、いつもはこんな柄のビキニのパンツなのに。何を今更‥」

 そう言われてちょっと考える。だって毎日に近いくらいエッチしてるのに、どうして今更こんなに驚いているんだろう。
 えっ、でも‥。
「ででも、俺って鷹神のパンツまで見てる余裕ないんだもん。それに鷹神バックからやるの好きなくせに」
「ああ、そうか。なるほどね。冬哉先輩が俺のことを観察できるくらいに通常状態に戻った頃はとっくに隠れちゃってるんだ」
 ちぇっ、なんか悔しいなぁ。ほんと俺の方が年上なのに。

「冬哉先輩はいっつも裸になってるけど、俺が裸ってのも珍しいんだよね。まっ、先輩は喘ぐのに忙しいから」
 相変わらず俺が淫乱のように言う鷹神にムッとした。
 今日こそは降参って言わせてやるんだから!
 でもパンツまで脱ごうとしたのは止めちゃった。だって直視しながらなんて萎えそうだもんね。やっぱり俺はゲイじゃないし、男のモノを見たって嬉しくないもん。

「なんだよ、女の子が泣いて喜ぶ武器なのに。冬哉先輩だってこれが咥えられないと物足りなくて欲求不満になるくせに」
 いったい何を言ってるのか、鷹神は!
 自分から欲しいなんて言ったことないからね!
 おまけにそんな苦しいのが入ってる方がいいなんて、入れる側の都合のいい思い込み。
 そっ、そりゃ‥指で前立腺を刺激されながらイくのが一番気持ちいいけどさ。だから「中も触って」って言うのは本心。
 でもやっぱり用途が違う所へ無理なモノを突っ込むのは無理なんだって。

 「入れて」って言葉は言ってるかもしれないけど、相手がイかないと俺もイかせてもらえないことが多いんだもん。仕方ないじゃん。
 それを表面の言葉通り、俺が欲しがってるなんてとって欲しくないなあ。
 虎王先輩だけはちょっと別だけど。快感を追う意味ではやっぱり同じで欲しいと思ったことはないけど、独占したいという意味でなら欲しかったかもしれない。
 だって俺の中に入ってる時だけだもん、先輩が俺の、俺一人のものになってるのって。

 とにかく、初めての体勢におっかなびっくりだったけど、俺は鷹神の生太ももに跨って、裸の鷹神と対峙したのだった。


 鷹神の好戦的な笑みはまだ消えていない。俺の両手は伸び、鷹神の胸を摘んでいた。
 触ったときに少しビクッと震えて反応していたみたいだけど、彼は余裕があるのか、それ以降は目に見える動きはない。
 これじゃいけないと、いつもされているように強めに摘んで捻ってみた。怖々触っていたからどうも神経まで届いていなかったらしいのだ。
「うっ‥」
 声が漏れた? 今までずっと胸と睨めっこしていたけど、慌てて頭を上げ、鷹神の顔を確認する。
「ハァ‥、今のはキた」
 鷹神は俺と目が合うと正直な気持ちを隠そうとせず、素直に刺激を甘受してる。
 ええっ? 俺が想像してたのとなんか違う。

 まずは男に触られてもそんなに感じないだろうと思ってたこと。
 次にもしも感じてもギリギリまで突っ張るだろうと思っていたこと。

 素直な鷹神に拍子抜けし、手の力が落ちる。
「あれ? もう終わり?」
 その隙にあっさりと元に戻ってしまってこっちが焦る。
「まっまだまだだよ」
 また力を入れてキュッキュッと潰してやれば、鷹神からは吐息が漏れた。
 ええーっ、マジで?
 声がいい鷹神は吐息だって耳が蕩けて落ちそうなくらい色っぽくて。

 でも無理矢理ヤられてる時は何も感じないこの絵が、妙にリアルに頭に描かれて困る。だって男の俺が男の乳首摘んでる絵だよ? どっか変じゃない? どっちかって言えば気持ち悪いよね。
 頭の一部が冷静なまま残ってる俺に比べて鷹神のモノは、ムクムクと大きくなってきた。

「冬哉先輩気持ちいい。だからそのままイかせてくれると嬉しいなぁ。それとも先輩、タチやってみる?」
「ええっっ?! おっ俺が?」
「だっていつもやられっぱなしで悔しかったんでしょ?」
「そっそれはそうだけど‥」
 そう言ったところで、今まで大人しくしていた鷹神の手が伸びた。
「やっやん‥」
 鷹神の手は、ズボンの上からだけど俺の股間を鷲掴みにしたのだった。
「あれぇ、まだあんま勃ってないね」
「だっ、だって‥」
「俺が相手で不満なの?」
「そんなことない‥けど」
「ないけどなんだよ」
 さっきまでの色っぽい鷹神は消え去り、ムッとした顔が俺の前に迫る。

「だって、なんかおかしくない? 男が男の乳首摘んでても」
「いっつも俺に摘まれて気持ち良さそうにしてる先輩に言われても答えようがないよ」
「うっ、うん。それはそうなんだけど。鷹神はそれで勃つんだよね」
「聞かなくても分かってるでしょ。俺のこのビッグなモノが敵を目の前にして降参したことがあった?」
 そうなんだよね、こっちになって初めて分かることもある。

「鷹神は変だなって思ったことないの?」
「冬哉先輩にはないよ」
「えっ、ないの?」
「うん、ない。だってアナルセックスがこんなにイイものだって知っちゃったから」
 んんっ? 俺に変って思ったことないって事はアナルセックスは経験してたって事だよね。
「ねえ、その言い方だと俺の前にもそういうことした人がいるってこと?」
「あれ? 聞いてない? 俺って冬哉先輩が抱きたくなるように、先輩の前は笹原さんで練習させられたの」
「笹原さんって‥、虎王先輩のことが好きだった人?」
「そう、過去形にしちゃ可哀想だよ。笹原さんは今も昔もずっとずっと王ちゃん一筋。王ちゃんの命令ならなんでも聞くよ」
「そっそんな‥。虎王先輩のことが好きなのに鷹神に抱かれたの?」
「うん、そう。でも王ちゃんが見てる前だったからか、酷く燃えてたけどね。その後ちゃんとご褒美で王ちゃんに抱いてもらってたから」

 ええーっ、信じらんない。好きな人の前で違う人とセックスするのってどんな気持ちなんだろう。もう少し深く考えたかったけど、目の前の人間について追求したくなる。
「大体、そんな状況でよく勃ったね!」
「だってすっごい興味あったんだからしょうがないじゃん。アナルセックスなんて女の子はさせてくれないし」
「あっ、当たり前でしょう!」
「それに笹原さんってフェラがムチャクチャ上手いんだよ。俺、あの人以上のテクにあったことないもん」

 分かった。たった今理解できた。
 鷹神は節操なしだからヤらせてくれれば誰でもいいんだ。男でも女でも関係ないんだ。
「もう、鷹神ってば節操なさ過ぎ」
「そう言う冬哉先輩は今のこの状況を変だと思ったことはないんだよね? そっちの方が節操ないと思うけど」
「えっ?」
「でしょ?」
 俺の方が節操ないの? でもそう言われれば4人もの男と関係持ってる訳で‥。

「で、でも‥浮気とかじゃないし」
「俺だってみんな納得ずくだし、無理強いしたことはないよ。一緒でしょ」
 なっ、なんか納得いかないけど、そう言った所で鷹神の両腕は俺の肩をスルリと乗り越え、背中の方で合わさったみたい。
 顔がよりいっそう近くなったと思ったら、ふわりとキスされていて面食らう。
「笹原さんとは冬哉先輩のために練習しただけ。男は先輩だけだから。先輩がイヤなら女の子とも手を切ってもいいよ」
 もの凄く優しく、低音ボイスでささやかれ、心拍数が跳ね上がる。
「きっ、切れないくせに」
「先輩がマジで俺と付き合ってくれるなら、ちゃんとキッパリ切る」

 やっやだ‥もう。いつもこんなに真面目な顔して誠実そうなこと言って口説いてるんだろうか。女の子だったら落ちてるよ。
 ジッと俺の顔を見つめていた鷹神はふぅと軽い溜息を付いた。

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