参戦14

「先輩こそ付き合えないくせに」
 凄く寂しそうに言われて焦る。寂しそうなんだけど、子供が拗ねてるようにも見えて可愛い。あ、ダメだ。ムラッとする。
「ごめん、俺、男のモノは咥えられないし、鷹神のこと指だけで陥落させるのも無理。でも鷹神は可愛いよ。だからいつも通りにしよ?」
 鷹神は俺が一生懸命話したその台詞に、一瞬だけ沈黙してから爆笑した。

「俺、可愛いって言われたの2回目。中1の時以来だよ。先輩は先輩だったね」
 クスクスと笑いながら俺を抱き締めていた鷹神はそっと秘密を教えてくれた。
『俺ね、ほんとは胸が弱点ってくらいに弱いの。自分が気持ちいいから相手も気持ちいいだろうって思って弄るのが止められないんだよね。誰にも内緒だけど、冬哉先輩にだけ白状しちゃう』
 なんて言われてもうダメだった。感情が入るとどうしてこんなに違っちゃうんだろう。いつものように後ろから挿入されて、後ろから胸を摘まれて倍に感じちゃう。

「はっ‥ああっ‥、たか‥じん‥、イか‥せて。もう‥ダメ」
 とにかく乳首には一日中クリップが付いていて刺激を送り続けたもんだから、触られたら痺れているように全体がジンジンする。
「もっ、‥お願い、そこ‥や‥めて」
 胸に触られるのはもう勘弁してとばかりに泣きが入る。
 鷹神はあっさりと一度目を吐き出し、俺と一緒に頂点を目指していた。

「冬哉‥先輩、一緒に‥イける?」
「うっ、うん‥」
 そう頷いたところで鷹神はラストスパートをかけた。俺は自分のモノを扱き、鷹神と一緒に果てたのだった。


 ホッと一息ついてからのこと。
「ほんとはまだまだイけるけど、先輩は降参?」
「うん、昨日も昨日だったし、今日も朝からしたし、最近ちょっとやりすぎ」
「不思議だよねぇ。こんなにやってるのにどうして先輩の下の口はガバガバにならないんだろ。マジで鍛えてないの?」
「そっそんなこと‥してないってば」


 鷹神の言ってることは理解してる。からかわれているのも分かる。でも今は鷹神から目が離せなかった。だから鷹神の言葉は俺の耳を軽く刺激するだけの存在となり、反抗する気が起こらない。
 2回目は珍しく前から突っ込んでいた鷹神は、一緒に果てると俺の上に覆い被さってきた。少し汗ばんだ肌がくっついて、裸で抱き合っているんだと実感する。
「先輩、気持ち良かったね」
 普段は俺に気持ち良かった? と聞くばかりなのに、同じように気持ち良かったのだと分かるとなんだか嬉しい。
 鷹神も女の子相手だと優しいんだ。

 上に乗られた重さを辛いと感じる前に鷹神は離れてくれた。ここら辺のタイミングも凄い。人の気持ちが読めるみたい。
 しかも離れ間際に軽くキスしていったのだ。やっぱりプレイボーイなんだよね。キスに感じることはなかったけど、その行動がとれることに感動してしまう。

 でもね、舌は入れてこないんだよね。狼帝は食われるんじゃないかと恐ろしくなるくらい舌も絡ませてくるのに。
 うーん、鷹神は女の子大好きだから、男相手にキスはしたくないってことなのかな。それじゃ狼帝はどうなんだろ。あんまり男に対して抵抗がないって事なのかな。
 あっ、でも狼帝キスくらいなら虎王先輩にされてるかもね。だからあんまり抵抗無いのかもしれない。省吾も変だし、そう言うタイプって案外多いのかも。


 えっと、話しがずれちゃったけど、俺が言いたかったのは今の鷹神の様子。俺の横へ転がってずれた後、ウェットティッシュをすぐに投げてくれたのはいつもと一緒だったんだけど、違っていたことが一つあった。
 それはタバコだった。

「冬哉先輩、タバコ吸ってもいい?」
 鷹神の部屋はいつ来てもタバコの匂いで満ちていた。相当数、吸うんだろうな、とは思わせていたんだけど実際吸っているところは見たことがない。まあ、虎王先輩の前だと怒られるだろうし、鷹神とは学校で会うのが前提なのでそんな機会が少なかったんだと思うんだけどね。

 俺が「いいよ」と答えるまでタバコの箱にすら手を伸ばしてなかった鷹神は、思ってたよりも紳士的でビックリだよ。
「えっ、気にせず吸って?」
「ああよかった。満足いくセックスの後って吸いたくて堪んない」
 なんて軽口をたたきながら火を着ける。
 鷹神、すごっく美味そうに煙を吐き出すとニコリと笑った。
「下手なセックスでもイライラして吸いたくなるんだけどね」
 なんだよ、どっちにしても吸うんじゃん! その台詞で吹き出してしまう。

 でも余りにもタバコを吸う姿が決まっていて、全ての動作が手慣れていて見惚れてしまう。
 真剣に見つめすぎたのだろうか。
「何? 先輩も吸う?」
 狼ちゃんに止められてるんだけどねー、などと言いながら1本取り出してくれる。

「吸ったことない?」
「うっ、ううん。吸ったことくらいはあるよ」
「へぇー、あるんだ。超マジメだと思ってたのに」
 俺は別にマジメじゃない‥と思う。マジメって言うなら狼帝のことを言うべき。
 でもその超が付くマジメな狼帝だって吸ったことあるって言うのに、そこまでじゃない俺に経験がないはずがなく。
 まあね、省吾や啓介と一緒にいなかったら経験してなかったかもしれないけどね。

 けれど手を伸ばしかけて止めた。単純な理由は美味しくないから。奥底ではむせ返ったりしたら笑われると思ったから。
「うん、でも止めとく」
 鷹神は「そう?」と言っただけですぐに手を引っ込めた。エッチの時以外は決して深追いしない。理由も尋ねたりはしない。それは他人に、いや、目の前にいる相手に感心がないと宣言しているようで少し寂しい。どうしてこんなにあっさりしてるんだろう。

 タバコ一本を吸い終わるまでくだらない、けど笑える話しをしていて、本当に鷹神が頭が回る、今風に言えば空気が読めて気の利く人間だと痛感する。
 今までこんな風に扱われたこと無かったから知らなかっただけだったんだ。
 ホッとする時間をくれた後、どっちが先にシャワーを浴びるか聞いてくれた。俺は早く服を着たかったので先に借りることにした。だって美姫さんがいつ帰ってくるか分かんないから。

 風呂から出ると鷹神の部屋着を借りて着る。めっちゃでっかいけどしょうがないよね。下着は鷹神が洗っちゃったんだから。2時間もあれば乾くよ、と洗濯乾燥機へ入れちゃったのだ。
 よく冷えたスポーツドリンクのペットボトルをもらって、鷹神の部屋で待つ。リビングのソファーでゆっくりしたら、とは言われたけど、知らない人間が居たら家の人が驚くじゃんね。
 そんなことを思っていたのにビックリしたのは俺の方だった。

 鷹神のベッドで俯せにゴロゴロしていた俺に突然覆い被さるものが!
 余りにも急激に飛び乗られて、心臓が爆発するかと思ったよ。
「鷹ちゃん、おかえり〜!」
 そう言いながら飛び乗ってきたのは龍将だった。潰れてグエッってなった俺に、反応がおかしいと思ったのか、乗り心地が変だと思ったのか、龍将は一瞬で腕を締め上げた。

「誰?」
 それはもう殺気だった声で、俺、別に悪いこと何にもしてないのに、泥棒にでもなった気分。思わずごめんって言いそうになっちゃったよ。
「いっ、痛いって。俺だよ、冬哉だってば」
「ええっ、冬哉さん?」
 龍将にもようやく通じたようで、放してもらえた。
「ごめん、兄貴のジャージだったし、タバコの匂いが凄いしたから吸ってすぐだと思って」

 もうほんと痛いんだから。玄関に猛獣注意って書いておきたいよ。世の中の泥棒さんのために。絶対盗った物以上の物を奪われるって。骨一本とかで済めばいいけど、命まで取られそうな勢いだったもん。
 この殺気だった姿が族のリーダーしてる龍将なんだ‥。

「それでなんで冬哉さんがいるの? って聞くだけヤボだね。兄貴は風呂場なの?」
「うん、俺が先にシャワー借りたから」
 龍将は本当に知りたかったことはそこじゃないのか、俺の顔をジッと見つめている。
「なあに?」
 それでこっちから話しを振ってやったら勢いが付いたのか口を開く。
「冬哉さん、当然だけど今ヤってたんだよね? それで終わった後すぐに吸ってたの? 兄貴」
「う、うん、そうだけど‥。なんか拙いの?」
「うん‥、俺が言うことじゃないかもしれないけど、兄貴が吸わない人と同じ部屋で吸うのってすっごい珍しいんだよ」
 ああ、それで俺は今まで間近で鷹神がタバコ吸ってる所を見たことがなかったんだ。

「ここだってちょっと窓を開けて外へ出れば済むし、外が嫌なら自分だけ俺の部屋へ来るとか、それよりも冬哉さんがお風呂へ入ってる間に吸えば済むことでしょう?」
「そう言われたら‥そうだね」
 確かに、一人で吸う機会はいくらでも作れたよね。
「どうしてだと思う?」
 聞こうと思ってたことを逆に尋ねられて言葉に詰まる。
「‥分かんない」
「それはね、超気持ち良かった時にはどうしてもタバコ吸いたい。でもその時間を共有してた人とは離れたくないから」
 そんなヘビースモーカーな鷹神にタバコより俺を選んでもらえて嬉しいかも。

「兄貴って一人でも平気って顔してるけど、実は結構寂しがり屋なんだよ」
 身内しか知らない鷹神に一歩迫った気がしてさっき感じた寂しさが癒される。
「それは分かる。鷹神って可愛いところあるよね」
 アハハと二人して笑ったところで鷹神が戻ってきた。

「なんだよ、二人して。俺の悪口言って笑ってんのかよ」
 ブスッとしてる顔も可愛い。何が出来る、なんて考えなくても年下は年下なんだね。
「龍も帰ってたんならまず俺に言いに来いよ」
 龍将が飛び付いてきたことといい、今の鷹神の発言といい、ほんとに二人とも仲が良いんだなぁ。

「ねえ、でもどうして龍将の方が後から帰ったのにおかえりなの?」
 先ほど思った疑問を聞いてみる。
「ああ、だって兄貴っていつでもいないから、たまにこうやって家にいる時はおかえりって言う癖がついちゃってるんだ」
「そう言えばお前、顔見るとおかえりだよな」
「たまにはこうやって家にいてよ」
 高校に入ってからはマジメだろ、なんて言いながら軽くつつき合いしてたのに龍将は変なことを思い出した。

「ちぇっ、もう少し早く帰ってこれば良かった。そしたら交じれたのに。超残念」
「なに? 龍もヤりたいの?」
「決まってるじゃん。抜ければ抜けるだけ抜きたい年頃なんだから」
 これは拙い。

 後ずさった俺を鷹神はあっさりと捕まえ、何の抵抗も示せない大きめのジャージは脱がされた。
「ほら、いつでもヤれる体勢」
 後ろから足も一緒に羽交い締めにされ、膝裏を通して持ち上げられるとどうなるか。とても恥ずかしいM字開脚させられて龍将の前で股間をさらけ出すことになる。

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