参戦16

「ヤダ。もっ、ヤダ。さっき2回もヤったじゃん」
 決死の思いで訴えたけど、俺の言うことなんて微塵も聞いてくれやしない鷹神は3度目になるモノを突っ込んできた。

 その間もずっとイくように刺激されていたのでヤダと言いながらもイきたくなる。一回のこういったプレイ中では限界の3回目だけど。
 俺だっていつもいつも言いなりになんかならないんだから。

「たっ、鷹神がヤるなら俺もイかせて」
 少しは頭を使ったつもりでいたのに、墓穴を掘っただけなんて。
 既に突っ込んでいた鷹神はニヤリとした。
「へえ〜、こんなにヤってもまだイきたいんだ?」
 しまった‥。後でお風呂ででも自分で抜けば良かった。

 鷹神のフィニッシュに合わせて俺のモノもイけるように扱いてくれる。だけどその寸前、さっき言ってた通りのことをしてくれた。
「やだっ! イッ、イかせて」
 もうイけると思ってた俺のペニスは苦しくてはち切れそうになっている。それなのに扱く速度を思い切り弱めてしまったのだ。
 中では鷹神が気持ち良さそうに3度目を吐き出していた。
 龍将に乳首を捻られて何度か鷹神を締め付ける。その度に鷹神は吐き出し、ようやく満足げな顔をした。

「ほんと冬哉先輩の中って気持ちいいよね。どこでそんなテク学んでくるのさ」
「ひっ、ひど‥。俺もイかせて」
 さっきの恋人気分とは凄い違い。俺をイかせてくれないままに終了し、腕もほどいてくれないままに風呂場へ連れ込まれた。
「ほっ、ほどいて」
 一度入ったからと言って鷹神は来ず、龍将と二人っきり。風呂桶の縁に上半身を置かれ、尻を突き出す格好を強いられていた。
「なんかまだまだいくらでも咥えたいです、って言ってるみたいだね」
 この体勢にしたのは龍将なのに勝手なことばかり。

「もっ、もう‥ムリ」
 いつもの意地悪のつもりで、自分でイかないよう手も縛ったままだったけど、さすがに時間と共に萎えてくる。さっきはほんとに苦しかったけど、このまま終わってくれた方がいい。
 なのに後ろに指を突っ込まれ、あっと言う間に復活してしまった。

「やっヤダ。んんっ‥お願い。もう‥ムリだから」
「でもゼリーで中もグチャグチャで気持ち悪いでしょう?」
 そりゃ自分でも洗うけど、でもゴム付けてくれるからそこまでは気持ち悪くない。
「あっ、んんっ‥やっ、もうヤダってば」
 口実を付けただけだったのか龍将は前立腺しか弄らない。
「でもここを触られてるときは気持ちいいんでしょ?」
 前立腺だけをゆっくりと弄られるなら気持ちいい。それはそうだけど今日の今はもう辛いばっかりで。

「いっ、今は‥勘弁して」
「えーっ、けど冬哉さん、俺にとんでもないモノ飲ませようとしたよね?」
「そっ、そんな‥」
 どう考えても意地悪するために、わざと放してくれなかったとしか思えない。そりゃ精液なんて口の中に入れたくないだろうけど。
「だからお仕置き。と言っても殴ったり蹴ったりなんてしないから。すご〜く優しいお仕置き」
 もう全身へばっていたのに、龍将はお得意の前立腺マッサージを始めてしまった。
 ヤダッ。これやり出すと凄い時間かかる‥。

 どんなに訴えても龍将は許してくれず、ドライオーガズムに達するまで揉まれ続けた。
「はぅっ‥、あんっ‥、やっやだ‥、もう‥イ‥かない」
 少し前までのお尻を突き出す格好では耐えられず、床にへばってしまった。鷹神が利用するらしく、お風呂用マットが2枚もあって、重ねて敷いてあると床でもそんなに気にならない。

 龍将があぐらをかいた上に頭を乗せ、横向きに寝転がる。背中側から伸ばした手が下の口に入り込み、ずっと同じ刺激を送り続ける。10分ほど悶え続け、やっと休息の時間帯に入った。
 口にすれば10分って大したことないみたいだけど、10分間も頂点に昇りっぱなしになってみてよ。マジで死ねるって。ほんとに苦しいんだから。一回達したからもう放してくれてもいいのに、龍将の指は次を狙うべくまだ動いていた。

「お願い。放して。マジで死んじゃう」
 落ち着いた隙に訴える。
 ドライオーガズムはやり方さえ間違わなければ10分(絶頂)×10分(休息)で繰り返し味わえる。本人にその気があれば10分おきに延々と快感に浸れる訳なんだけど、これは一人でやるものだと思うんだよね。
 なんて言うのか、オナニーの上級版。
 俺は入れたこと無いけど、エネマグラっていう器具を使うとジッとしてるだけで絶頂に達するらしい。
 まあ、今と何処が違うの? と聞かれたら困っちゃうんだけどね。でもこんな姿を人に晒してると思うともの凄く恥ずかしい。しかも他人の家の風呂場で。

「ねえ、冬哉さん。マジメな話ししていい?」
 ええっ? こんな状況でマジメな話し? 頭に入っていかないよ。
「指抜いて、腕をほどいてくれたら」
「せっかくこの状態になったのに勿体ないでしょ。あと2〜3回は味わいたいでしょ?」
 確かにここまでもってくるのは大変だけど、そこまでしてこの刺激が欲しいなんて思ってないから。いつも無理矢理されてるだけだから。龍将にだって分かってると思うけど、基本的に意地悪された方が感じちゃうもんだから、みんな揃って虐めてくるんだと思う。
 そこまで分かってるんだから、一度くらいは意地悪された時に感じない振りとか出来ればいいんだけど、残念ながら身体は正直。今だってちょっと腰を捻って逃げ出せばいいのに、言葉で許してもらえるまで待っちゃうなんて虎王先輩に身体で覚え込まされてるのか。

 違う、そうじゃない。拒んだ後に何をされるか分からないからだ。要は怖いから。それに尽きる。
 龍将は腕もほどいてくれず、もちろん指だって抜いてくれず、勝手に話しを始めた。

「冬哉さん、なんで兄貴と付き合うなんて嘘付いてるの?」
「えっ、理由は聞いてないの?」
「理由も何も冬哉先輩と付き合うことになったから、としか聞いてないよ」
「ええっ、そうだったんだ。てっきり嘘だって分かってるから全部知ってるのかと思ってた」
「嘘は見れば分かるでしょ」
 そっ、そうだよね、どう見ても恋人同士になんて見えないよね。
「でも虎王先輩に‥」
「大丈夫。言わないから」
 まあ、龍将にとっては虎王先輩よりも鷹神の方が大事なのは明白。洩らしてもイイかと思い全てを話す。

「プレイボーイだとばかり思ってた鷹神が、結構一途でビックリだよ。だから協力してあげようと思って」
 ジンジンと疼く下半身をやり過ごしつつ、最後まで説明した。すると龍将は「ふーん」と面白くなさそうに鼻で返事をする。
「白坂会長のこと好きだって知らなかった?」
「ううん、違う。鷹ちゃんが一途なのは間違いないけど、相手が違うの」
「えっ、どういうこと?」
 龍将は自分から話したがったくせに、時間を掛けて考えている。

「俺に話したかったんじゃないの?」
「うーん、まっいっか。冬哉さん、俺が話したってことも、これから話す内容も内緒にしてね。狼ちゃんにも言っちゃダメだよ」
「うっ、うん。分かった」
 そんな重大な話しなんだろうか。身体の芯は疼いているくせに身構えた。

「兄貴ね、中学2年の時に付き合ってた人がいてね」
 そりゃ鷹神なら付き合ってない方が不思議なくらいだけど。
 俺の顔を覗き込んだ龍将は想像したことが分かってしまったようだ。
「違う違う。今みたいにセフレとかじゃなくて、真剣に付き合ってた人がいたの」
 あの鷹神から「真剣」って言葉が出てくるのが嘘っぽいけど、白坂会長のことを話してた時も真剣そうだったもんね。顔は見えてなかったけどさ。

「その人とは結婚してもいいって思ってたくらいに真剣に好きだったの。惚れてたんだよ」
 ええ〜〜っ!!!! 中2で結婚までって‥そんなに真剣だったんだ。けど過去形なんだね。
「うん、想像通りでね。振られちゃった」
「鷹神振るなんて見る目ないんじゃない?」
 まだ純粋だったろう頃の鷹神を思うと少し胸が痛い。その相手が酷い人に思えてきた。

「違うの。きっと向こうも兄貴のことが好きだったと思う。本当に兄貴のことを考えてくれて他の相手と結婚しちゃった」
「けっ、結婚?」
 だって中2の時の話しでしょ。
「そう、結婚。愛希子(あきこ)さん、その時24歳だったから」
 24!? 中2って14歳‥だよね。10も年上と付き合ってたなんて。早熟どころの騒ぎじゃない。

「愛希子さん、ばあさんが死んじゃったときも慰めてくれた兄貴にとっては無くてはならない人でね。親父にも反発しまくってたから一人暮らしの彼女の所に入り浸ってて家に帰ってこなかった」
 中2でほぼ同棲? 俺には想像できない世界だよ。
「兄貴がほんとは頭も良いって知ってたから、このままじゃいけないって思ったんだろうね。学校止めて働く、みたいなこと言っちゃってたらしいから」
 ひょえー。
「中2でもう働くこと考えてたの?」
「うん。見た目はもっと上に見えたし、いざとなったらホストでも土方でもやるって言ってた」
 うわっ、まだまだ親のスネかじって大学行って当然、なんて思ってる俺が敵うわけないんだ。

「それが突然結婚するから出てって。中学生となんて本気で付き合うわけないじゃない、って言われて」
「うそ、酷い」
「兄貴も若かったからさあ、プライド高くて『俺だって年増相手に本気なわけないじゃん』とか言ってタンカ切って出て来ちゃったんだって」
「若かったって‥。そんな風に言われたら普通の反応じゃないの?」
「うん、まあね。兄貴5歳くらいサバよんでたから向こうもショックだったろうしね。それに愛希子さん、兄貴と違って真面目ですんごい優しい人だったから。傷付けないようもう少し考えればよかったって」
「そっか‥」
「田舎でお見合いしたんだって」
「そんな‥」
 そんな悲しい思いをしてたなんて全然知らなかった。

「だからね、兄貴はその時のことをもの凄く後悔してるんだよ。どうして見栄なんて張っちゃったのかって。優しい人だったから泣いて縋ったら結婚だって止めてくれたかもしれなかったのにって」
 鷹神が泣く? まったく想像できないよ。それくらいに辛かったの?

「それからは自分のこと本気で好きな子は相手してないの。白坂さんや冬哉さんのことを言うのは絶対、100%落ちないって確信があるから。白坂さんのことは公言しておけば本気避けになるから特にね」
「まだ他の人を好きになれないくらい辛いの?」
「うん、俺が美姫ちゃんを亡くしたって考えてよ。怖いでしょ? それくらい当時は荒れまくってた」
 なんか‥駄目だ。どちらを想像しても悲しすぎる。鼻の奥がムズムズして泣けそうになる。でも悲しみに浸りきるのは龍将の指が許してくれない。

「けどね、王ちゃんから愛希子さんの本音を聞いてね。あっ、もちろん王ちゃんは直接聞いた訳じゃないよ。兄貴のことを想ってわざと突き放す言い方をして身を引いたんだって」
 龍将の指の刺激を超えて、ブワッと涙が浮かんだ。どちらも本気だったのに。二人とも想い合っていたのに。

「それから自分の幼さを反省して大人になろうって決めて、ちょっと真面目になったんだよ」
 鷹神‥。いつもおちゃらけて楽しそうにしてるのに。そんな辛いことを乗り越えてきたんだ。

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