快楽のいばら街道 18


 撮影が始まって3週間が経っても、俺はまだ一日置きくらいにあの最低の姿を晒して、日焼けをさせられていた。もちろん、あの2人も傍についている。
 2人は俺に何をしようかと、毎回色んな事を考えてきていた。
 いらぬことをせずに、頼むからそのままほかっておいて欲しい。なのに、死ぬほどの刺激を浴びせられて、2時間が終わる頃には死んだようにグッタリしているのが常だった。

 最近のこいつらのお気に入りは、ビー玉くらいの小さな玉が間隔を置いて並んで付いている、細長い棒だった。
 それを3本ほど俺の中へ入れる。それだけでも小さな玉が擦れて、結構感じる。口を出入りするときに、ランダムに叩かれて刺激が来るのだ。
 なのにそれだけでは足らず、そこへまだ細めのバイブを突っ込むのだ。
 それまでは軽い刺激で遊んでいたのが、体積が増して前立腺に押し付けられる。押し付けられたビー玉は小さく抜き差しされて、微妙にいい所を擦るのだ。
 そしてバイブもスイッチが入れられる。
「うっ‥うぁぁ‥」
 悶え苦しむ‥そんな言葉がその時の俺にはピッタリだろう。
 前立腺にピンポイントで押し付けられているビー玉は、振動するのだ。
 その上、動くのだ。
 ビー玉付きの棒はいつまでも抜き差しが続けられ、俺は腰を振り続けるしかなかった。

 バイブが入り込み、腹側の細い棒が動かされる‥、そんなとんでもない刺激の連続攻撃に耐えられない。耐えられないが俺には拒否権も抵抗する術もない。
 だからどんなに強すぎる快感でもずっと受けるしかないのだ。地獄のような快楽に浸り続けるしかないのだ。
 涎を垂れ流しっぱなしの先端もタコ糸が割り入れられ、振動を続ける。時折拭かれては、ビクビクと震える。竿も扱かれてイきたいのに、やっぱり根元で縛られている。
 狂いそうな2時間を耐えさせられると、俺は我慢が出来ず、石川を呼び出して何とか身体の欲求不満を吐き出すのだった。

 そんな我慢が仕事だったのに、その日は何故か朝から意地悪をせずにイかせてもらえた。と言っても全員監視の中での行為で、思いっ切り快感に浸るわけにはいかなかったのだが。
 でも2回も続けてなんて、今までの3週間ではなく、相当満足できた。
 スッキリした所で、例のイスへ腰掛けさせられる。また裸にされ、前にはフンドシのような布が掛けられる。今更ここを隠してなんになるのだろうか。
 今俺が座らされている所は、一番狭いスタジオだった。スタッフも北岡さんの右腕と言われる人が2人だけ。そこへ北岡さんと女の人が入ってきた。
 なっ、ちょっと待て。俺はこんな姿なのに、誰かに見せると言うのだろうか。

 入ってきた女を見て驚いた。それは今や女優の中ではトップに位置する片瀬さゆり、39歳だった。
 俺とも共演したことがある。その頃の立場関係は同等だったが、こんなに差が付いてしまうなんて。
「ああ、こいつは聡。ご存じですか?」
 北岡さんの問い掛けに片瀬さゆりは蔑んだ目で俺を見た。
「ええ、一応は。だけどこんなに落ちぶれて。共演したなんて今じゃ恥ずかしくて言えないわね」
 こいつ、全然変わってない。昔っからタカビーだったが、輪を掛けたな。
「それにこんな恥ずかしげもない姿でどうしてここに?」
「あなたの色気を計るんですよ」
「ええっ?」
「聡のここで」
 そう言って北岡さんは俺の股間を指さした。

 熟女として若い子からも人気が高い片瀬さゆりは、30代最後と言うことでヌード写真を出すのだ。だが、高慢な性格ゆえに挑戦するような雰囲気が抜けず、写真に撮ると色気に欠けるらしいのだ。
 これがフィルムなら、その粘り着くような視線や仕草で充分すぎるほどの色気があるのだが、根っからの演劇女優なので静止画は勝手が違うようである。
 それにどうして俺が担ぎ出されたのか、しかもこんな姿で。片瀬になんて協力したくないのに。
 昔共演したときも立場的には同じだったが、そこは俺はアイドルで、向こうは歳もそこそこ行ってる女優。こちらがそれはへりくだって、ご機嫌を伺った。俺のことを気に入ったこいつはセクハラ三昧だったのだ。
 当然ながら、身体の関係も持っていた。

 しつこくて貪欲で、エネルギッシュな片瀬は満足という言葉を知らず、何度でも求められて奉仕させられたのを思い出す。
 俺はホストじゃないから、どんな相手だって勃つ訳じゃないんだが、あたしのような美人大女優を前にして、一度や二度でくたばるのはおかしい、と言い放つ凄い奴だった。
 そいつにまた食われるのか、と思うとうんざりしたが、だが今の俺の状況ならここから連れ出してくれて、好きなだけイくことが出来るなら美味しい、と言える。俺は気持ちを得な方向へ持ち直した。
 そして、俺の目の前で裸になった片瀬の撮影が始まったのだった。
 こんなおばさんの裸を見ても勃つことはない。だが‥それじゃ俺の役目は果たせない、と言うことは身をもって教えられた。

 俺の後ろには、椅子の空いた穴の下からバイブが射し込まれた。それだけで慣らされたそこは反応しそうになるが、一応2回抜かれている。勃ちそうで勃たない、そんな中途半端な感じ。
 北岡さんは片瀬の違う面を撮影したいようで、もっと素直に、とか要求している。プライドの高い片瀬は胸ですら見せたことがなく、初めてのことで世間の関心は否が応でも高まっていた。
 そんな背景も手伝って、北岡さんの方にも自分が写したから、と言うものが欲しいようだった。きつい顔が売りなので可愛らしい表情をすると無理があるのだ。
 大胆なポーズは取るのだが、いかにもな感じで見せられても、色気を感じない。やっぱり恥じらいってものがないと女性らしくないのだろう。

 色々と試していたが、北岡さんが気に入ったポーズが出たのだろう。俺の後ろに入り込んでいるバイブに、スタッフによってスイッチが入れられた。
 くっ‥。中の振動がいい所に響く。響いて勃ち上がりかける。だけどすぐにスイッチは切られて、中勃ちで止まった。
 それを北岡さんが指さした。片瀬の目が光る。
「聡も感じてる」
 片瀬がいいポーズを取るたびにほんの少しだけ振動が来る。こんな少しずつじゃ辛い気持ちの方が大きくなってくる。
 勃ち上がった方がどれだけ楽か。
 俺は自然とバイブの振動を待つようになり、ほんの少しの振動も全て物にするつもりで神経を集中させた。

 もちろん片瀬には俺の中にバイブが入ってるなんて伝わっていない。自分の姿態を見て俺が感じていると思い込んでいる。
 どんどん態度が柔らかくなり、そして色気を増していく。俺は‥こんなことに使われているのか‥。情けなさが襲うが、自分が這い上がるためだ、仕事だと割り切らなくてはやっていけない。
 快感を追う俺と、俺を感じさせていると信じている片瀬と。どちらがピエロで道化だろうか。二人共が北岡さんに踊らされているのだ。自分の思ったものを撮るためなら何でもする人なのだ。

 そのうち俺のモノは勃ちっぱなしになり、先端からは水分が滲みだした。白いフンドシを少しずつ濡らし、硬くなった竿に張り付いてクッキリと姿を現した。
 中で震えるたびにそれは怒張する。
 片瀬はそれを一々確認すると、満足な表情を浮かべ、またそれを北岡さんが撮る、と言った循環だった。
 どうやら今日が一番メインの撮影だったようで、それは3時間ほどで終了した。
 それから俺はベッドのある部屋へ連れてこられ、片瀬と一緒に閉じこめられた。こうなることはある程度予測していたが、俺は張り付いたフンドシ一丁で、しかも尻には振動したバイブが入ったまま、当然ながら指と耳は繋がれている。抜くことも出来ず、このままやれと言うことだろうか。
 すると片瀬は‥恨みたくなるようなことした。

 スタッフは俺の状態を全て話したんだろうか。
 勃ち上がったものになんとリングを付けたのだ!
「こうしておけば、好きなだけ楽しめるんでしょ?」
 悪魔のような所行で妖艶に微笑む。魔女とはこいつのような奴のことを言うのかもしれない。
 そして手にしたリモコンのスイッチを「強」にした。
「ぁうっ‥」
 腰が引ける俺のことはお構いなしで、ゴムを被せると自分の脚を開いた。
「舐めて」
 俺は‥震える中と闘いながら、女帝に奉仕を始めた。舌で満足させると次はペニスで。
 どれだけ頑張ってもこいつは満足しない。俺の方が保たない。けど止められている俺はイきたくてもイけないのだ。
 ペニスに擦り付く内壁が堪らなく気持ちいい。だが何度腰を振っても楽にはならないのだ。それどころか自分の中が熱くて堪らない。
 誰か‥助けて‥。

 気が遠くなる程、腰を使って俺はベッドに突っ伏していた。ガチガチに張り詰めたモノを抱えたままで。
 あいつは、いくらでも使えていいわね、とかふざけたことを抜かして、俺の根元に付けたリングを取らないまま出て行ったのだ!
 そしてまだ後ろにもバイブは入っている。しかもスイッチすら切ってくれなかった。
 電池が無くなりかけているのか、最初ほどの振動はないが、いつまでも震えるそれは俺にとっては叩き壊したいくらい憎々しい物で。
 片瀬が出ても部屋から出てこない俺を、スタッフが呼びに来た。
 天の助けか、それは石川だった。
 石川は片瀬と俺が出来ているのでは、と心配していたようだ。
 出来たと言えば出来ていたのかもしれない。セックスしたのだから。けれどそれは対等な関係の時に言えることだろう。今の俺は片瀬にとってはバイブと同じくらいの価値しかないのだ。

 欲しいのはあそこだけ。
 くそっ、次に会うときは、向こうから抱いて欲しいと言わせてやる。
 しかし、今はこの持て余した欲望を処理してもらわねば。
「石川さん‥、抜いて。イかないとどうかなる‥」
 思いっ切り甘えた声で、仕草で頼む。
 いつもならこれで上手いこと行くのに、今日の石川は違っていた。普段の怯えた様子がない。
「あなたは‥、あなたは、片瀬さんと恋人だったんですか」
 んなわけないだろう? あいつの態度をみせてやりたいぞ。
 なんて言い訳は通じそうになく。どうやら片瀬にヤキモチを妬いているらしかった。他のスタッフにも抱かれているのを見てるのに。なんだろう。女とやったのが気に入らなかったのか。俺はゲイじゃないから分からない。
「そんなに気持ちいいモノですか? 女性って。それとも大女優だからですか」
 適当に使っているつもりだった石川に、初めて恐怖を覚えた。



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