快楽のいばら街道 19


 息荒く、俺を睨み付ける石川は、仁王のようにそびえ立つ。
 ここのスタッフは俺のことをからかっている風なので、もの凄く意地悪ではあるが、だけどその分どこか余裕がある。余裕がないのはいつも俺の方で。
 これは下手に外したら、不味いだろう。
「全然気持ち良くなんてなかった。俺はあんたに抱かれる方がいい」
 はっ早く、この中で振動を続ける物を抜いて。
 俺を堰き止めている物を外して。
 そして扱いてイかせて。

 俺の願いはそれだけなんだ。あんたの思いなんてどうでもいいんだ。大体ヤキモチ妬ける程の関係じゃないだろう、俺たちは。
「気持ち良くなかったのなら、どうして抜かなきゃならないことになってるんです? 気持ち良くなかったらイかなくてもいいでしょう」
 そんな屁理屈言われても‥。俺は困る。
「だって、バイブが入れっぱなしだったんだ。刺激されたらイきたくなるだろう」
「そんなに‥そんなに良かったんですね」
 お前、俺の話を聞いてるのか?

 俺の話なんて全く聞いちゃいない石川は、俺の両足を乱暴に掴むと持ち上げて開く。そのまま俺の頭の方へ押し付けた。
「自分で持っていて下さい」
 両手はウェストの位置までは下がる。俺は言われた通り自分の足首を持った。自分から広げて相手に見せたことなどない。その情けない姿に泣けそうになる。
 こんなことまでして射精したいなんて‥。
 どうして俺はこんな酷い目に遭っているのか。何故俺はこんなこと投げ出して、逃げ出さないのだろうか。
 それはひたすらにあのステージの中に戻りたい、と言う強烈な思いだけだった。もう一度拍手に包まれるなら、何でもやろうと思う、その心だけだった。
 石川の前にバイブの突き刺さった秘所を晒す。そんなことをしてもその思いがなくなることはない。
 その俺の中に深々と潜り込んでいるバイブの飛び出している部分を石川が掴んだ。
「あ‥んんっ」
 突然動かされて、今まで慣れていた刺激が変わる。
 イきたい欲求がよりいっそう高まる。

「ココで悦んでるくせに、前も入れたいなんて。あなたは後ろへ入れられた方が気持ちいいんでしょう」
 バイブをぐにぐにと動かしながら、石川は俺を責める。
「そっ‥そん‥な‥こと、ない」
 俺だって男だ。こんな排泄に使うしか本来は用がない所に、色んなモノを入れられるより、普通に女の子の中に入れた方がいい。
「こんなに悦んでるじゃないですか。これ以上気持ちのいいことを女性がしてくれますか?」
 振動し続けるバイブを少し浅めに入れると、前立腺へ押し付けた。
「んんっっ‥」
「ほら、これが気持ちいいんでしょう?」
 どうしても俺が気持ちいいと言うまで解放しないつもりだな。こんな目に遭わされ続けたら持たない。んっ‥、しっ仕方ない、降参しよう。
「くっ‥ん‥、イッイイ」
「‥やっぱり‥ですか。もっと早く素直になっていればよかったのに。でも素直になったからご褒美をあげますよ」


 石川は押し付けたままで、そこに円を描いた。前立腺が中で転がるように動く。
「あああっ」
 それはもの凄い刺激で持ってる足を放して逃げようとした。
 俺の放した足の一つを石川はバイブを持ってない手で掴む。
「暴れると中を痛めるかもしれません。どんなに気持ち良くても大人しくしていて下さい」
「あ‥うっ‥」
 一本だが足を真っ直ぐにすることになって身体が伸びる。曲がっていたときよりもダイレクトにそれを感じる。石川は俺が苦しんでいる様を見ても手を緩めようとしない。
 突っ込んでる最中はその余裕がなくても、その他の時は俺のことを気遣ってくれるのに。我を忘れているのか石川は別人のようだった。
「やっ止めて‥くれ」
 ずっと震え続けている中と吐き出せない外と、これ以上はないほど切ない思いさせられる。

 逃げたくても片方の足は掴まれたままだ。おまけに中のバイブを押し上げられて腰が抜けそうになる。背中を反らし、身体を捻る俺を見て、石川は満足そうだ。
「聡さん、やっぱりあなたはここに入れられる方が好きなんですね。本当に気持ち良さそうだ‥」
 気持ちいいのはお前の方だろうが。そう、毒づきたい気分で一杯なのだが、まだ撮影は1週間ある。石川を敵に回しては損なことばかりだろう。
「イイッ‥から、頼‥む。イ‥かせて‥」
 もちろん、実際にも苦しくて仕方ないんだが、思いっ切り泣きそうな顔をしてやった。なんとか平常心を取り戻して欲しい。この苦しみを分かって欲しい。
 グリグリと前立腺を虐めていたのだが、石川の手が止まる。
「はっ早く、リングを‥取って‥」

「聡さん‥」
 石川は、手の動きをいったん止める。
 我に返ったか?
「聡さんっ」
 俺の名前を呼ぶと抱き付いてきた。荒々しくバイブを抜き取ると、自分のモノを突き立てる。そしてこれでもか、と言うくらい必死で抜き差しを繰り返す。
 もっ‥もっと、ゆっくり‥。さっきまで嬲られ続けたソコは、ジンジンと痺れていて、刺激が大きすぎるのだ。
 しまった‥。平常心を取り戻させるどころか、余計に煽ってしまったようだ。石川は溺れたように息苦しそうで、とてもじゃないけど通常の状態には見えない。
 まるで玩具のように手荒に突かれる。
 ああっ‥、身体が‥尻が‥あそこが‥、壊れてしまいそうだ。
「はっ‥んん‥っく‥んっ」
 もう堪える息しか漏れない。そのまま失神してしまえたら楽になれるのに‥。そう思うくらい頭の中は真っ白になっていた。

 石川は自分勝手に2回も達すると、ようやく頭が冷めてきたようだ。
 その頃の俺はもう喘ぎ疲れて、声も出ないくらいグッタリとしていた。でも下半身だけは悶々として、苦しくて、硬く屹立していて。
「ああ‥。聡さん、どうしてあなたはそんなに色っぽいんですか。俺はあなたを壊したくなる‥、気が狂いそうになるんです」
 ほとんど壊されて掛けている‥と思うんだが、どうやら元に戻ったようだ。
「イ‥か‥せて」
 それだけを俺は願う。
 石川は軽く頷くと、俺の根元のリングを外す。先端まで血が通う、そして先端に溜まった血が抜ける‥。その血の動きだけでも腰がガクガクと震える‥。
 ああっ、これを早く抜いて‥。
 ようやく俺の願いが届いて、石川はリングを外したモノを銜えた。
 ベロリと大きな舌が絡んでドクドクと脈打つ。それだけで、あっさりと吐き出していた。
「はうっ‥うんんっ‥、くぅっ‥」

 待ちに待ったその刺激は、スッキリしたとかそんなレベルではなく。頭に快感が突き抜けて死にそうになった。
 そこで俺の記憶はなくなった。

 いつも男としての限界まで我慢させられて、それから男としての限界まで感じさせられる。
 スタッフはこれほどの快感を味わえるなんて、滅多にないことだから聡さんは仕事なのに幸せでいいですね、なんて馬鹿なことを言うのだが。
 こんなに苦しい思いはしたくないのに。俺は人間として扱ってもらってないのだ。ロボットのようにリモコン一つで、あそこを勃たせたり、萎えさせたり出来ると思われている。
 また「しろ」と強要させられる。

 だけど、あと1週間で撮影は終わるのだ。
 あと‥もう少し我慢すれば、俺は自由の身になれるのだ。

 なんて喜んでいたのだが、その2日後。俺は全てを捨てて逃げ出したいと思っていた。


「聡さん、今日から禁欲してもらいます」
 なっ、何を言ってるんだ。今までだって我慢に我慢をさせられて、これ以上はないくらい辛い思いをしているのに。
「最後の撮影のテーマは野獣。まさしく獣のように性を感じて欲しいんです。これまでのように恥じらいとか気持ち良さとかは表現してくれなくていいです。本能でそれを欲してもらいたいので。獣のように吼える聡さんを撮りたいので」
 スタッフはそう説明すると、股間まですっかりいい色に日焼けした俺の身体を剥き出しにした。
 そしてある部屋へ連れて行く。
 そこは倉庫のようで周りの壁はコンクリを積んで出来たものだった。その一部に目が吸い付く。
「聡さんのために特別に作ったんです」
 まるで‥俺は囚人になるみたいだ‥。

 壁には丸い金具が付いていて、そこにはベッドが置いてあった。そのベッドの上には鎖と革の枷が‥。
 危惧した通りその枷は俺の両手に一つ一つ付けられた。そして枷から出ている鎖を金具に通す。その鎖は膝にも巻かれた革の枷に繋がれた。鎖の長さは70センチほど。そして金具は1メーターほどの間隔を空けて二つがベッドの上1メーターの所へ埋め込まれていた。
 右手と右膝、左手と左膝を繋がれて、上から吊されているようなものだ。
 つまりは俺は座った格好でも両足を広げて股間を晒し、寝ると両足を高く上げることになるのだ。
 手を上げれば少し鎖は緩むが横幅は決まっているので足を閉じることは出来ない。手を下げれば足をひっぱり上げることになるのだった。
 どんなに頑張っても自分のモノを触ることは出来ないし、足を閉じることも出来ない。ましてや股間を何処かに擦り付けたりすることすら出来なかった。

 壁にもマットが凭れかけさせてあり、座って足を広げて上げる、と言う一番マシそうなポーズを取るしかなかった。
「ああ、このポーズも似合いますね」
 そう言ってこれも撮影されたのは言うまでもない。
 何故こんな恥ずかしいと思う限界を超えたことをやらせるのか。またそれを考え実行するこいつらの神経を疑う。
 しかし‥そんなことを考えられるのは最初の3時間ほどだった。


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