快楽のいばら街道 20


 禁欲、と決められてから4日間はイかせてもらえない、と言うことだった。だが、俺には石川がいる。辛かったらいつでも抜いてもらえばいいと思っていたのだ。
 そうしたら‥思い切り宛てが外れた。
 石川は他のスタッフと一緒に、アイドルの海外撮影に付いていってしまったのだ!
 一体何のためにあんな奴に媚びを売っていたのか。それを知ったときのショック。ニヤリとするスタッフの顔を見た瞬間、ばれていたことに気が付いた。
 そう、石川は意図的に出張させられたのだ。

 4日、と聞けばそうたいした日数じゃない。ただ射精しないだけなら4日間しないことなんてざらにある。それどころか十代でもない限りそんなに毎日抜くものでもないだろう。
 だが、俺のこの状態では毎日どころか、毎時間でも抜きたくなる‥、そんな酷い有様だった。
 普段の撮影とか、日焼けの時のむごい仕打ちとか、そんなものが可愛く思えるくらい、4日間は長く、悲惨だった。
 股間を晒すしかない俺の前には常にスタッフが付いていた。そして程良い刺激を与え続ける。
 リングで止めることもなく、ただただイけない程度の刺激を延々とくれるのだ。いらないと喚いても、ずっと。
 後ろへ指を2本、入れると抜き差しと言った激しい刺激ではなく、前立腺を軽く押さえるだけにとどまる。それは中から押し出したい、キュ〜ンとした軽い快感。
 けどそれを時々こりっと捏ねられると、飛び上がりたくなるのだ。

 俺はどんどん耐えられなくなって、中に入ってる指に腰を擦り付ける。前立腺は押されながら左右に振られてキュンキュンと感じる。
 けれど、決してイけないくらいの刺激。自分で腰を振って快感を増幅しているのに、イけないことが腹立たしくなってくる。
 どれだけイかせてくれと頼んだことか。スタッフはどいつもこいつも、ニヤリとして俺を言葉でも嬲り続ける。
「聡さん、本当にあなたは淫乱ですね。4日くらいの禁欲も出来ないんですか? たったの4日ですよ? 射精を覚えたての中学生や高校生じゃあるまいし、毎日出さなくてもいいでしょう? そんなに出してばかりいると、頭がおかしくなりますよ」
 俺の中へ指を入れながら、そんなことを言って、けど俺を煽る。普通にしていれば4日くらいは何でもない。だけどこんな風に前立腺を弄られたままで4日は耐えられないのが普通だろう。
 座っていれなくなると、身体をずらして寝転がる。しかし寝ると足を高く広げて上げないといけないのだ。

 するとまたスタッフから意地悪を言われる。
「自分から見せるなんて、そんなにここが弄って欲しいんですか?」
 どうあっても中を触るクセに、わざわざ俺が触れと言ったように振る舞うのだ。
 けれど、どれだけ中を弄られても、俺はイけないのだ。何時間経っても同じ状態で、苦しくて死にそうになる。しかも俺の切り札はなくなってしまった。どんな状態になっても我慢するしかないのだ。

 これだけ酷い目に遭わされていても、午前と午後の日焼けの時間だけは守られる。撮影はさすがに休みだったが。
 午前はいつもの通りローター責め。そして午後はこれまたいつもの2人が来て責められる。俺は逆さの股間晒しの状態で磔られる。
 普段でも2時間我慢するのは気を失うくらいにきついのに、それより前から我慢させられてる状態ではきつすぎてどうかなりそうになる。でもこの2人にはそんなことは知らされていない。容赦なくビー玉付きの棒が挿入され、バイブが挿入される。

 そして振動しながら、ビー玉が前立腺を這いずり回るのだ!
 あああっっ、背中がこれ以上は無理なくらい反りっぱなしになる。拓ききってる股間にどうしようもないほど力が入る。
 それだけでもきついのに、この2人はまだ意地悪を考えつく。
「ねえ、ここでも色んな感触って分かると思う?」
「さあ、この人って触ると気持ちいいとしか言ってないけど」
 台詞と共に竿の部分が擦られる。イきたい衝動がいつものごとく押し寄せて、俺は腰を揺らす。べっ別に気持ちいいなんて言ってる訳じゃない。
「ほらね。でもどんなモノで触られてるかとかは分かってないかも」
「なら、これも楽しめるかな」
「ああ、悦びが増えるんじゃない?」
 顔は見えないのに、ニヤリとほくそ笑んだ気がして、冷や汗が出る。これ以上の刺激はどうあっても受けられない。俺は気絶してしまう。いや、この際だから気絶した方が楽なのかもしれない。
 そうして裏筋とカリとが集まってきた、一番感じる部分に冷たいモノがおかれた。

「くっ‥」
 緊張で尻が引き締まるのが分かる。
「感じてるよ」
「これはどうかな」
 その次に来たのは、今までに感じたことがない少しチクチクした感触。裏側の根元に感じるこれはなんだろう。神経を尖らせたその時、そのいくつかあった感触は先端へ向かって動き出した。
「うっう‥」
 生きてる? 動いてる? 気色が悪くて腰を思い切り振ってしまう。つられてペニスも左右へ揺れ動く。アナルに射し込んであるバイブに括り付けられているヒモに引っ張られて、先端がジンジンする。でもそれでも恐怖が俺の腰を振らせ続ける。
「すごっ、ムチャクチャ感じてる」
「そんなにいいなら、もう一匹増やすか」
 今度は表側の根元にそれを感じた。裏も表も何かが蠢く。
「ううっ‥」
 俺は呻って腰を振るしかない。
 そしてそれは最初に置かれた冷たいモノへ向かっているようだった。

 神経が集中して鋭敏になる。過敏になったのはペニスだったはずなのに、中まで影響があったのだろう。俺はまた止められているにも関わらず、中だけで絶頂を見ることになる。

「うーっ、ううっ‥」
 何かが付いているペニスを振りつつ、身体はビクビクと痙攣を起こす。
 ああっ、何度も何度もさざ波のように繰り返す絶頂。辛い、辛いと思うほど感じまくる。一生終わることがないと思わせるこの快感は苦しくて切ない。
 だって、終わりがないのだから。射精は全てを出し切ってしまったら、それでエンドだ。だが空打ちと言ってもいい射精と違う到達は、いくらでも感じることが出来る。感じたくなくてもとことん俺を追い詰めるのだ。
 どれだけ身体を震わせても、痙攣を繰り返しても、終わることがない。
 ああっ、もうそこに刺激を加えないで欲しい。

「あ、食べてる」
「ほんとこんな所でも食欲はあるんだ」
「しがみついて離れないよ、このカブト虫」
 俺のモノに付いていたのはカブト虫だったのか。先端に置かれたのが虫用のゼリーだったと分かる。さっきまで蠢いていたのがそこへ集まって大人しくなる。しかし、掴まれている感触はなくならない。
 生き物が付いていると思うと、それだけでソコが熱くなる。嫌だ、取って欲しい。
 振り払おうとすればするほど、そいつは必死でしがみつく。どうりで取れないはずだ。俺は身体を震わせながら、霞む頭の片隅でそんなことを考えていた。

 そんな俺にはお構いなしに、相変わらずビー玉付きの棒は静かに抜き差しが繰り返され、バイブは振動を送り続ける。そして俺はイきっぱなしになって、痙攣を続ける。
 地獄のような前立腺責めに我慢を強いられて、おまけに羞恥心を最大限に煽られて、終了する頃には俺の意識はほとんどなくなり掛けていた。

 苦しい‥。身体が熱を帯びて取れていかない。苦しくて苦しくて、死にそう。
 やたらと喉が渇いて、水を飲んだ。それでも身体は冷えることがない。
「頼むから‥お願いだから‥、イかせて」
 俺に付いているスタッフは、相変わらず中をまさぐっていた。片手にペットボトルを持ち、片手は開かれた足の間でゆっくりと動いている。

 どこまで虐めたら気が済むんだろう。一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。
「もう‥イヤだ。俺は‥止める。こんなの正気の沙汰じゃない」
「へー、いいんですか? 元のスターに戻れなくても」
 そう言われて、めげていたものが戻ってくる。そう、俺はスターに返り咲くためにこんな酷い仕打ちにも耐えてきたのだ。この撮影だけじゃない、今まで男に抱かれてきたのもその為だ。
「さすがですね、聡さん。そう言われると瞳に力が戻りましたよ。あなたはその顔の方が似合ってます」

 けど、けれど、それとこれとは話が別だろう。イきたいのはイきたいように弄られているからで、人間として男として当然の反応じゃないか。子孫を残す生き物の生理現象なのだから、それを堪えろと言うのは酷だろう。

 夕飯を過ぎるまで中の刺激は続き、その後も筋トレをいつもの調子でやらされ、ようやく寝る時間になった。
 ホッと出来る‥。俺はそう思った。ここまで来るとイきたいとか何とか言うよりも、ただもう刺激を送るのを止めて欲しかった。そこを弄るのを止めて欲しかった。
 キューンと腹の下から押し出してくる快感とも呼べないくらいの神経の痺れ。これを感じたくなかったのだ。前立腺も性器も休ませて欲しかった。

 それなのに、無理矢理睡眠薬を飲まされた。それは寝るためにはいいとして、ただ寝かされたのではなかったのだ。
 もうこれ以上はないだろう、と思うくらい酷い仕打ちだった。


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