快楽のいばら街道 23


 控え室で無理矢理足を開かれた。磯谷は俺のモノを扱き、自分のモノは抜き差しをする。二人共が果てるとそこへローターを突っ込む。
「イヤだ。どうしてこんなことをするんだ」
「聡はイったあとすぐが一番色っぽいからな。その一番いい顔を今からみんなに見せつけてやれ。ローターはそれを維持するんだ」
 そのままバスローブを着せられ、部屋から出されてしまった。出てきた俺を他のスタッフが見つけ、俺は後戻りが出来なくなった。それでもまだローブを脱ぐときになんとかして抜いてやろうと思っていたのに。脱がずにベッドへ入り、入ったらすぐに藤原さんも入ってきたのだ。
 それから脱がされて裸になった。手錠を繋がれて四つん這いになる。俺はパイプベッドに掴まりながら腰を突き出してるような形でいた。
 シーツが掛けられているので外からは分からない。が、そこでリモコン操作のローターが振動を始めた。
「ううっ‥」
 一瞬身体が強張る。そしてその後、腹の底から痺れるような快感が押し寄せる。

「アキラ‥。どうした」
 う、藤原さんってばもう役になりきってるのか。
「本当に君は色っぽいな」
 頬に手が添えられてゾクリとした。色っぽいと言われヒヤリとした。気付かれているのか!
 必死で堪えても股間のモノは勃ち上がってくる。硬く突出してその存在を主張する。マズい。余りにもマズすぎる。
 きっと俺は情けない顔をしていたのだろう。藤原さんは心配そうな顔を見せたが、スタートの合図がかかって一瞬で切なげな表情へ切り替わった。
 さすが‥。
 俺だってそれなりに役作りもしたし、別れの苦しさと言うのも表現できると思っていた。
 だが今、こんなものが中に入っていては演技など出来そうもなかった。
 手錠で繋がれた手ではローターを抜くことも出来やしない。
「く‥んっ」
 腰が引けて鼻が鳴った‥。

「アキラ‥。何度でも言うよ。私は君を離すつもりはない。離れない、と言ってくれるまでその手錠は外さない」
 そこでの俺の役の立場は結構優位に立っていて、別れるの一点張り。その真意は奥さんと別れて自分の方へ振り向かせたかったのだ。しかしもしも奥さんの方を取るなら、それはそれでキッパリ別れるいい機会だと思っている。だからかなり強気で突っぱねるところなのだ。
「最初から‥卒業までって、言ってた‥じゃないか」
 ビシッと言いたかったのに、中からの振動に邪魔されて息が続かない。
「君は私のことを好きじゃなかったのかい」
「はっ、好きか嫌いかの‥、感情で付き合って‥いた‥訳じゃないだろ。あんたは俺のことを抱く。俺は抱かれた分‥、金と単位をもらう‥。それだけの関係だ」
 冷たくあしらう所なのに。俺の顔はこの関係が惜しいような表情になってしまう。中が切ないほど苦しいのだ。

「ダメだ、ダメだ、ダメだ。聡、君はこのシーンを理解してるのか。そんな顔では別れたくないと言ってるようなもんだろう。それじゃ児童劇団よりも哀れだぞ」
 当然だがそこで監督からダメが出た。
「本番までになんとかしてこい」
 その場にいたスタッフ全員が「だからアイドルなんて」という目つきで俺のことを睨んでる気がする。だって、こんなのが後ろに入ってるんだから。なんて言い訳は出来ず、とにかく本番までに抜かねばならない。
「すいません。手錠を外してもらえませんか」
 俺は藤原さんにそう頼む。けれど藤原さんは怒っているのか知らん顔だ。
 まずい、怒らせるなと監督からも言われていたのに。磯谷の奴、そんな悪戯してる場合じゃないだろう。またこれで役を降ろされでもしたら逆戻りじゃないか。
 焦っていた俺に、さっきのまま同じシーツの中で藤原さんはこう言った。
「少し‥練習するか」
 とにかく一度抜けたかったのにそれすら叶わなくなってしまった‥。

「アキラ。私は君のことがとても好きなんだ」
 演技だと分かっていてもその真剣さと熱っぽさで勘違いしてしまいそうになるくらいに藤原さんは上手い。
 俺もアキラになりきってないといけないんだろうな。
「俺は‥どっちでも‥構わない」
「君も私のことが好きだろう」
 藤原さんは演技してるはずなのに、四つん這いに近い形になってる俺の尻を撫でた。
「んんっ‥、えっ‥あの‥」
 ローターは変わらずに俺を悩ませる。そこへ尻を触られて防御を忘れる。つい声が漏れてしまった。
「変わらずイイ声を出すな」
 淡泊そうな雰囲気のままで藤原さんはその最中のような台詞を言う。そしてその手は尻の割れ目を這い出した。
 思わず俺は腰を引いてしまう。
「感じてるのか?」
 ダッダメ‥そこ‥触られたら、我慢が出来なくなる。こんな所で、我慢できなくなったらどうしたらいいのか。

 北岡さんのスタジオと違ってここは映画の撮影所だ。誰も俺が尻にローターなんて入れてることを知らないし、身体を使ってまさしく体当たりであの写真集を撮ったとも知らない。
 俺はアイドル時代のままの聡であり、こんな所でまで痴態を晒すつもりはない。
 けれど割れ目を往復する手が、くすぐったいようなじれじれと焦らせるような感触で尻に力が入ってしまう。
「ほら、アキラ。聞かれたらちゃんと返事をしないと」
 藤原さんは演技としてこの続きを望んでいるのだろうか。確かにこういう関係なのだから、触られたりしてもおかしくない。
「かっ感じてなんかない」
「いい答えだね。アキラ、君らしい」
 もしかしたら誉められた? 手は尻の往復を止めないが、藤原さんは演技をしているのだ。
「それじゃあこれならどうだい」
 藤原さんは少し窮屈そうに前から伸ばしていた手を一端離すと、下を向いてる胸を摘んだ。
「‥っっ」
 身体が飛び上がりそうになった。

「みっみんな‥見て‥る‥のに」
「アキラ、ここには私達二人以外は誰もいないよ。だから素直になるんだ。君はこうされるのが気持ちいいんだろう? いつも私の前では素直に快感を享受していただろう」
 そっそんな‥。こんなに沢山の人がいる中で俺に本気で喘げと言っているのだろうか。
 藤原さんは台詞を述べながらも手は乳首を摘んでクリクリと動かしている。ジレジレとした刺激の中に、ときおりツキンッとするものが混じり、その度に俺の身体は勝手に震える。どんなに我慢していても神経の反応を抑えることなど出来やしない。
 ほっ他の人に気付かれる‥。監督やカメラさんにメイクさん、色んな人達が注目しているのに。
「アキラ。何度も言うが私は君を離すつもりはない。離れない、と言ってくれるまでその手錠は外さない」
 前の台詞からってことなのか‥。とにかく藤原さんにオッケーをもらわないことには、このまま本番の撮りに入ってしまう。

 今、このシーンがベッドシーンとか濡れ場というのなら、演技だと言い張ればいいのでそんなに問題ではないのだが、とにかくこのシーンは別れを切り出してシリアスになっている所なのだ。ここから教授は少し狂ったような執着愛を見せ、アキラは手錠で繋がれて監禁されてしまうのである。
 それでも別れる決意を覆さないアキラと、奥さんと離婚する決断が下せない教授は結局は破局してしまうのである。
 だけどアキラを失った哀しみが大きく、奥さんには態度の変化によって気付かれてしまうのだ。普通ならゲイと言うかバイだとばれた時点で離婚問題になると思うのだが、この奥さんが非常に器の大きな人で、教授の傷ついた心を癒し誠心誠意尽くす姿によってまた教授も奥さんへの愛を取り戻すのだ。
 その献身的な奥さんとの愛情を取り戻すまでの道のりが、切なくてもどかしくてヒットした要因なのだそうだ。監督からの受け売りだけど。
 だから教授役は並大抵の演技力じゃないとこなせれないのだ。

 男に執着して見せる狂気、そして破局、それが露見、躊躇しながら愛情の方向の修正、全てを理解してくれた相手へ再燃。いい年をした大人の男がする行動は、派手なパフォーマンスは一切なしで淡々とそれを表さなければならない。また片桐教授は感情の起伏が少ないキャラなのだ。

 俺はそのきっかけをになう、出番は前半だけなのだが重要な役だった。だからきちんとシリアスはシリアスでこなしたかったのに。
 こんな風に嬲られていたらアダルトビデオにしかならない。
「最初‥から‥、卒業‥までって、言ってた‥じゃないか」
 ダッダメだ。中だけじゃなく胸からも刺激が加わってさっきよりもっと悪い。だけど藤原さんは止めない。
「君は私のことを好きじゃなかったのかい」
「はっ、好きか‥嫌いかの‥、感情で付き合って‥いた‥ああっ‥、んんっ‥。やっやめっ‥」

 台詞の最中なのに、もう一つの手が中心で猛ってるモノの口を撫でたのだ。鈴口ってペニスの中では一番便感なのに。そこを撫でられて声が続かなかった。
 手は手錠で繋がれているにも関わらず、感じる所を押さえようとしてガチャガチャと音をさせて引っ張った。身体中が切羽詰まっている。
 そこへ藤原さんは今まで座っている体勢だったのを変え、俺と同じ四つん這いに近い姿勢になった。だがそれは俺の上から覆い被さるように。
 後ろから俺の耳に口を付けるとこう囁いた。
「このままだとここへ証拠を残すことになるがいいかい?」
 俺はその囁かれた息にゾクリとし、その囁かれた内容にビクリとした。
 ベッドに精液を残すわけにはいかないだろう。後片付けをしてくれる人が気付かないわけがないから。
「いいものがあるんだが、付けて欲しいかい」
 俺の目の前にコンドームを見せる。藤原さんがこれ以上悪戯をしないでくれたらそれでいいんだけど、この先まったく予想がつかなかった。
「お願い‥します」
 諦めてそう言った。

 藤原さんが俺のモノを握る。それだけで快感に身体が震える。わざとと思えるほどゆっくりと本体を撫で回し、その形を確かめるように手の平で包む。散々触ってからようやくコンドームを付けてくれた。
 シーツの中で繰り広げられる色事。周りの人間は誰も気付いていないのだろうか。いや、あいつだけはそれが分かっているのだろう。俺のマネージャーの磯谷だけは。それとも藤原さんがこういう悪戯をするって知っていたのだろうか。
 おれの分身は充分に満たされ、あと少しで吐き出してしまう所まで来ていた。


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