快楽のいばら街道 24


 そこへ監督の本番開始の声が。
 こっこんな状態ではまともに芝居が出来るわけがなくて。俺は焦りと疼きとでおかしくなりそうだった。
 藤原さんは何事もなかったように前と同じに情感たっぷりに台詞を繰り返す。そして俺の台詞の時には手を出して中断させる。
 その度にストップが掛かり、俺は耐えられなくなってきた。
「ああっ‥んっ‥。もっ‥お願い‥しゃべらせて‥く‥ださい」

 遂に台詞にはないことを懇願してしまった‥。
 そうしたらそれを待っていたかのように、藤原さんは目を光らせた。
「そう‥アキラとして言ってごらん」
 けっけど‥今のこのシーンは濡れ場じゃなくてシリアスな場面だ‥って、監督も初めに言っていたのに‥。
 そんなことを考えて躊躇している間に、藤原さんの手はまた俺のモノに絡んできた。
「んっ‥っく‥。やっ止め‥ろ」
 アキラなら敬語は使わない。教授と呼んではいるけれど、その地位に似合わない、金を出して男を抱く教授をバカにしているのだ。もちろん心底では惚れているのだけど、それを悟られないようにするため余計にその素振りが露骨になるのだ。そしてそれが教授を深く傷つけていて、この二人は傷つけ合う哀しい関係になってしまっている。
「ほら、どうして欲しい」
 絡んだ手と指は的確に俺を追い上げていく。そっそんなことを言ったって、本当にイったら不味いだろう。

「おや、今日は頑張るね」
「止‥めろっ‥て‥。俺‥は、別‥れる‥って」
 そこまで言った所で藤原さんは上半身を起こした。それまでベッドの柵にもたれていたのだが、そこから背を離したのだ。そして俺の尻に手を掛けた。
 俺はその手が何をするのか想像がついて冷や汗が流れた。
「そんなことは言えないようにしてあげるよ」
 藤原さんは俺の中に入っていたローターを引き抜く。
 しっ‥知ってたのか!
 それから磯谷が充分すぎるほど入れた潤滑剤の力を借りて、指が滑り込んできた。
「ぁ‥ああっ‥」
 その指はさっきまで振動していた前立腺をすぐに見つけ出す。震えて痺れているそこは撫でられると飛び上がりたくなった。
「くっん‥」
 円を描くように転がされて死にそうになる。みんなが見てるのに、俺は腰を振って吐息を漏らしてしまう。
「あ‥あ‥んん」
「アキラはここを弄られるのが好きだね」

 シーツの中での行為は外からは分からない。けれど藤原さんの手がどこら辺をまさぐっているかくらいは分かるだろう。俺の反応を考えたら、してることを想像するでも一つしか出ない気がする。
 中を弄られて喘ぎ、みんなに気付かれるんじゃないかと焦り、反応しないよう我慢して余計に感じる。
「んんっ‥も‥もう‥止め‥っ」
「おや、止めていいのかい。こんな中途半端な状態で。君が一言私のそばにいてくれると言ってくれさえしたら、望むだけ君の好きなことをしてあげるよ」
 藤原さんの指はしつこいくらい的確に、前立腺だけを撫で続ける。痺れて腰が引け、中心のモノは痛いくらいに張り詰める。
 返答が出来ない俺に焦れたのか、遊んでいたもう片方の手がペニスを握り締めた。
「あああっ‥」
 ああ、もうダメだ。俺はこんな映画の撮影所の中で、みんなの目の前で射精する瞬間を晒すのだ。
「やっ止めろっ」
 必死の抵抗も聞き入れられず、藤原さんの手は無情にも前後に動き出した。

「金と単位だけの関係じゃなかっただろう。君は私の手によっていつも快楽を得ていた。違うかい?」
 藤原さんの両手は巧みに動き続ける。
「ちっ、違‥ぁ‥うっ」
 尻に力を入れ、腰を引いて寸前で我慢し続ける。あの写真撮影での我慢が思い出される。辛く厳しい快楽の地獄‥。あれに比べたらまだマシだろうか。それとも他の人に知られないように我慢する方が苦しいのだろうか。
 陰嚢が締まって出るのが分かる。
 今、射精したら我慢に我慢を重ねた所へ持って中からの興奮も最高なので、とてつもなく気持ちいいものになるだろう。もうほんとにダメだ。この気持ち良さを想像してしまっては解放に向かうしかない。
 クッと腰の緊張が緩んだ。身体が意識を乗り越えてしまったのだ。
 出る‥。
 そう思って身構えたのに、俺のモノからは発射されることはなかった。
「そばにいてくれると約束もしてないのに、君が望むことをしてあげるわけがないだろう」

 藤原さんの手は、俺のペニスの根元をしっかりと止めていたのだ。
「‥ぅあぁっ‥」
 本当に出る寸前で止められて苦しい。激流が出口を求めて暴れ狂う。これをどう収めたらいいのか、どう冷やせば落ち着いてくれるのだろうか。
 苦しくて切なくて映画の撮影だということを一瞬忘れる。
「止めて‥イかせてっ‥」
 そう叫んでからハッとした。こっこんなところでイかせてと自分から頼むなんて。俺は今の自分の立場を分かっているのだろうか。しかも本当にイかせてもらえたりしたら、もの凄く拙いってのが分からないのだろうか。
 我を忘れる‥それくらいに止められると言うことは耐えきれない酷い行為なのだ。
「イかせて欲しかったら素直に私のものになるんだな。アキラが好きなことを沢山してあげるよ」
「それは‥ダメ‥」
 もう少しで教授の言うことを聞いてしまう所だった。演技を忘れて今の自分の快楽を求めてしまいそうになる。
 藤原さんの指はずっと俺の中で動き続けていた‥。

 我に返ったことで少しだけ、イきそうだったモノの熱が冷める。ほんの少しの刺激もなくただ解放されても、今ならイけない。
 藤原さんは百戦錬磨かと思わせるほど俺の状態をよく分かっていた。止めていた手を離すと、俺の上へ被さる。
 そしてとうとう俺の中に入ってきたのだ。
「っくぅっ‥」
 思わずアゴが仰け反って、身体が反り返る。侵入してくるときに前立腺を擦り上げられて快感に腰が震える。
「アキラ‥これが欲しかったんだろう」
 う‥嘘だろう‥。だってこれはAVの撮影じゃなく、この間までの俺の異様なエロ写真集の撮影でもないのだ。
 逃げ出したくても手錠で繋がれていて動けない。手で藤原さんの手をガードしたくてもベッドの柵を掴んで耐えるしかない。
「仕方ないな。今回はこれが欲しかったと素直に言えたらこれで終わりにしてあげるよ。そしてアキラが一番したかったことをしてあげる。少しは私の株も上がるかな」

 優しい顔で薄く笑うその顔は、渋さが加わって凄みと怖さまで醸し出していた。無理に振り向かされて頭を押さえられて、俺は下に藤原さんのモノを銜えながら、上は舌に蹂躙されていた。
 や、だめだ‥。欲しくて欲しくて堪らなかった‥と白状させられそうになる。イかせて欲しくて、中からも刺激が欲しくて、けれどそんなことをこの場面で言うわけにはいかず。
 藤原さんの舌に応えていたら落ちそうになる。
 けど、こん‥な、予定外のことしても大丈夫なのだろうか‥。さっき我に返ったことで蘇った冷静な部分で考える。
 しかしそんなことを考えられたのは、ほんの僅かな時間で、すぐにゆっくりと動き出した藤原さんに翻弄される。
「あっ‥ああっ」
 まさか本当に本番をしてるなんてばれるのは拙い。口から零さないと辛い熱を必死で我慢する。それは全身に力を入れることとなり、よりいっそう藤原さんの太いモノを味わうことになった。

「アキラは強情だね」
 唇を離した藤原さんはそう言ってゆっくりと抜き差しを続ける。イけないほどに、でも感じるように、ゆっくりゆっくりと‥。
「ぁぅ‥、お願い‥しま‥す。こんな‥の、違‥う」
「だから先ほどから言ってるだろう。素直に欲しかったと言ってごらん。そうしたら君が望むようにしてあげよう」
 藤原さんはゆっくり突きながら、色気のある声を俺の耳元へ響かせる。舞台俳優だけあって張りのある良く通る声をしているのだが、演技が達者な彼は艶っぽい声を作ることだって造作もないことのようで。この甘い囁きにすぐに乗ってしまいそうになる。
 それでも首を振る俺に、なんと藤原さんはどこから出してきたのかゴムの上からリングを嵌めてしまったのだ。
 イかせてもらえない!
 咄嗟に写真集の頃の記憶が蘇る。
「ヤダっ‥止めて‥。イかせてっ」
 映画の撮影中だと言うことが頭から吹っ飛び、再び思わず叫んでいた。


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