「アキラがこんなに頑固だとは思わなかった」 「頑固も何も俺とあんたの間には絆なんてなくて、あるのは利害関係だけだろう。卒業したらそれが切れるのは当然だろうが」 「私の気持ちは知ってるだろう?」 片桐教授はアキラを抱く腕に力を込める。その後同じようなやりとりを繰り返し、それに焦れた教授が痺れを切らし、ボロ雑巾のように酷く扱うのだ。アキラの身体になんの気遣いもなく意識が無くなるまで抱くシーンでもある。 リハの間中、藤原さんは胸も股間も触っているのかいないのか分からないギリギリを保っていた。それがなんとも焦れったくて俺の身体は全身で快感を集めていた。 だけど今回は邪魔されていないので台詞はきちんと言えたし、リハはなんの問題もなく進行し、すぐに本番になった。 「きょっ教授、そん‥な、だって‥」 リハの時は一切手出ししなかったくせに、本番が始まった途端藤原さんは手を絡めてきた。 胸にあった手は敏感な所に付いてるピアスを引っ張り捻る。シーツに入り込んだ手は硬くなった先端を握り締め、親指がその中でも一番感じる部分をクルクルと動き回る。 手錠で止められているので、どんなことをされてもそれを押しとどめることも、緩めることも出来ない。 「アキラは本当に感じやすいね」 おまけに台詞が違う! 俺にどう答えろというのだろう。 「ヤッ止め‥て」 「止めてじゃないだろう。気持ちいいくせに」 「こっこんな‥こと、して‥も‥あんたの、モノには‥なら‥ない」 「まだこの口はそんな白けることを言うのかい?」 藤原さんは胸の手を離すと、俺の顔に沿わせた。そして顎を掴み自分の方へ向けると、唇を合わせてきた。 「ん‥んん」 下からひっきりなしに訪れる快感が、舌を絡み合わされて増幅する。口から熱い空気が沢山零れてくる。それを思うように吐き出しきれなくて苦しい。 藤原さんは演技なのか本気なのか区別が付かないくらい、キスを楽しんでいた。いや、楽しんでいるように思えた。確かに、役の上では別れると言われたら、思わず監禁してしまうくらいに惚れているのだからキスも楽しいんだとは思う。けれど俺は男で、俺自身はノーマルなので心底それに酔える訳じゃなく。もしも藤原さんも同じ気持ちならやっぱりプロ根性が凄い、役者魂が違うというのか。 感心ばかりしていられない。ずっと擦られ続けた下が我慢が利かなくなってきた。今日はゴムも付けてもらってない。こんな所で吐き出すわけにはいかない。 けれどそれを伝えようにも口は塞がれたままだ。優しく唇を挟まれたり、激しく舌を吸われたり、緩急を付けてずっと俺の口内で遊んでいる。 ああ、ヤバイ‥。このままこの手管に落ちそうになる。 磯谷の言葉が頭の中に浮かんだ。 「お前がアイツに溺れるのは許さん」 けど、こんなに感情の籠もった行為をされたのは初めてのことで。本当に愛情があるんじゃないかと勘違いしそうになる。情を感じるから全ての刺激が増幅されるのだ。しかもこんな風に公の場で、隠さなきゃならないと焦るほど快感が大きくなってしまう。 やば‥ダメ。でっ出ちゃう‥。 俺は身体中に力を入れ、必死で頭を振った。 「どうしたんだい。そんなに強張って」 藤原さんは俺の反応に気が付いたのか、口を離す。大事な所は握ったままで親指の悪戯は続いている。 「おっお願‥い。イっ‥イっ‥ちゃ‥う」 ダメ‥だ。ほんとに我慢が限界に近づいてくる。腰に掛かってるシーツへ吐き出すしかないのだろうか。そんな‥、聡は映画の撮影中に本気で射精してる‥なんてどうしても言われたくない。それにこのスタジオの中だってどれだけの人間が俺たちに注目してるか考えただけでも顔が青ざめる。 ほとんど素に返って出た台詞に藤原さんは反応した。 「ん、好きなだけイくがいいよ。私はその時のアキラの顔が好きだ。君は本当に色っぽい。どれだけ私が君に惚れているのか考えてくれたことはないのかい」 熱っぽい瞳で見られて感情と欲望が直結する。身体が限界を訴えてふるふると震えた。 「感じてくれているようだね」 「でっ‥でも‥」 ここじゃイけない‥。仰け反るくらいに腰を伸ばして踏ん張ってみる。そんな俺の頑張りをなんと思っているのか、藤原さんはそこから直立しているモノを扱きだした。 「あっ‥あああっ‥やっやめ‥っ」 も‥もう‥、出る‥。 陰嚢が迫り上がって発射の準備を整えた。 「ダッダメ‥ダメッ‥だってっ」 無駄だと思いつつも最後の抵抗を示してみる。今にも出そうな状態に気が付いてくれたのか藤原さんの手が止まり、根元を押さえた。 「あっ‥、ああ‥はふ‥」 よかったのかよくなかったのか分からないけれど、とにかく俺は命拾いをした。 「どうしてダメなんだい?」 分かっていると思うのに、藤原さんは意地が悪い。 「はぁっ‥ん‥だっ‥だって、‥そ‥そのまま‥出‥ちゃう」 身体中はまだまだ興奮していて、寸前の体勢は変わってない。そこを止められて凄く苦しい。しかしこの時はまだ理性の方が勝っていたのだ。 その俺が苦しい中から言った言葉を聞いてなかったのだろうか。藤原さんは根元を止めたペニスをシーツの中で振り始めた。 「ひっ‥く‥やっ、止め‥止めてっ」 先端の一番敏感な部分がシーツに擦れる。ザラザラした触感を鈴口の柔らかい所がイヤでも味わう。 止めて! それ以上擦られたら死んじゃう‥。 びくびくと震える俺の身体を抱いて藤原さんは満足したのか、首筋に唇を這わす。こそぐったいような妙な感覚が神経の集中を拡散させる。けど先端は痛いほどの刺激で逃げ出したくて仕方ない。 やだ‥止めて。 身体は藤原さんの腕から抜け出ようと必死で藻掻いている。 「アキラは本当に敏感だね。そしていい顔をする」 「おっ‥お願‥いっ」 「君にお願いされるのは気分がいい。言ってごらん」 「つ‥けて」 回りには聞こえないよう小声で囁く。 「う〜ん、そうだね。私の元にいてくれると約束してくれたら、ってことでどうだい」 そっそんな。ここで俺が教授の元へ戻る、なんて言ったら映画は終了だ。どうして現実と役とを一緒に出来るのか。それとも戻ると言ってしまって、NGを出すか。 ヒィッ‥。もう‥先端の刺激が耐えられない‥。 「いっ一緒に‥いる‥からっ」 俺はその刺激に負けてNGの方を選んでしまった。後々後悔することになるとはこの時は分からなかったのだ。 当然、ストーリーと違うことを言ってしまったのでその場でカットの声が掛かる。カメラがストップしてから藤原さんの顔は一変した。 それまで教授であったときでも、そうでないときでも余り変化がなかったのだが、役者として怒ってるとハッキリと分かる表情だった。 「せっかく上手くいっていたのに。君はアキラになりきるつもりがないのかい」 口調や声の大きさなんかは怒ってる感じはしない。けれど目が全然違うのだ。これ以上は無いくらい冷たい視線で一瞥されて肝が冷える。イくばかりだったモノまで一気に萎えた。 「すいません‥。けど‥身体の生理的に無理でした」 素直に謝ったが藤原さんは許してくれそうもなかった。 「この後すぐに本番に入るのは止めよう。君はもう少し練習した方がいい」 練習‥。藤原さんが変なことするのを止めてくれたらそれでいいのに。どうして俺のせいになってしまうのか。 けれどここで反論できる立場に俺はない。藤原さんの損ねてしまった機嫌を取るのが賢いだろう。 「いいかい、君はアキラなんだよ。それを忘れないように」 今からすぐにスタートと言うことなのか。俺を抱き締めたままの藤原さんの手は変わらない位置にある。その手は俺の両脇へと移動する。そして俺を持ち上げるように、上向きに力が入った。 俺はその力に逆らわないよう少し腰を浮かし、引っ張られるままに藤原さんの方へ身体をずらした。すると今度は下に引かれる。要は藤原さんの上に座ったらいいのか。 素肌の尻にスラックスの生地が擦れる。俺から手を離した藤原さんはズボンのチャックを降ろした。 「お願いします。そんなの無理」 そんなモノを銜え込んだままで演技なんて出来るはずがなく。刺激に耐えられずまた同じように降参してしまいそうだった。 けれど藤原さんは再度俺を抱き上げると己のモノの上に降ろした。両手が手錠で繋がれている俺はなんの抵抗も示せずにそれを呑み込んでいく。 「ぅ‥んんっ」 するりと一番太い部分が擦り抜けた途端、さっきまでイきそうだった俺のモノが復活した。 |