快楽のいばら街道 28


 身体を持ち上げたことにより、前のようには思い切り突けない。けれどしっかりと抱き締められて、俺の尻と藤原さんの股間とは常に数センチの距離が出来ていた。その短い距離を使って藤原さんは力一杯突き上げた。
「ぁうっ‥」
「私とのセックスは楽しくなかったかな」
 そっそんなの‥。本気で教授のことが好きなら、絶対楽しいはずで、抱かれて嬉しいはずで。そして幸せだったはず。
 そんなに好きなのに、別れようと決意したのはそれだけ独占欲が出てきちゃったからで。
 どっちにしても片桐教授のことが好きで好きで堪らない‥わけで。
「たっ‥楽し‥かった」
「そうか」
 嬉しそうに反応する藤原さん。本気で教授になっているんだな。
「かっ‥勘違い‥するな。俺は‥快感を、感じた‥と、言ってるんだ」
「感情は伴ってないと?」

「そ‥そうだ」
 返事を聞いて面白くなかったのか、労りのない突きが身体の奥まで入る。
「くっっ‥んっ」
 けれど余り大人に思えない反応が教授を可愛く思わせる。台本を読んだだけではクールで取っつきにくいキャラかと思っていたが、知れば知るほど愛着が湧く、そんな感じ。
 それは藤原さんの教授の解釈がそうであって、またそう思った通り演じられる実力をひしひしと感じる。
「アキラは強情だからね。素直になれるようにしてあげるよ」
 藤原さんは後ろから俺の頭に触る。見えないけどくすぐったいこの感じから、キスが繰り返されているのが分かる。
 こんなに全身で愛されて、それでも別れを掛けてまで振り向かせようとするアキラ。実は俺にはその気持ちが分からない。ここまでしてもらったら他に相手がいてもいいんじゃないかと思ってしまう。けれど残念ながら俺は真剣に恋したことがない。だから分からないのかもしれない。
 ひとときの甘い雰囲気はそれからすぐになくなった。

 ガツンと脳天を突き抜けるような衝撃が身体に走る。
 また‥またあの本気の突きが入ったのだ。この体勢ではストロークが少ない。それでも腰だけを上手く使っているのか、藤原さんのモノはもの凄い威力を持っている。
「うっ‥ぅんっ‥」
 ダメ‥、前を触られなくてもこの刺激はヤバイ。前立腺だけを定期的に突かれて、例の乾いた絶頂がやってくるのが分かる。
 ダメだ、このままじゃマジで中だけで達してしまう。
 そんな俺の煩悶など気にもならないのか、藤原さんの教授は疲れも知らずアキラを攻める。
 や‥、ほんとにヤバイ‥。下半身が熱を収集して、それを溜め込んだ前立腺が膨張する。限界まで大きくなるとそれを解放するのだ。そして中だけでオルガズムを感じてしまう。まるで女のように射精のない絶頂をみるのだ。
「う‥ぁっ‥あ‥」

 どれだけ我慢しても射精を我慢するのとは違って、自然に高まっていく。射精は力を込めたりすればある程度は我慢できる。だがこれはどこを締めたら我慢できるのかが分からない。すなわち生理的にまったく感情が入らない状態で勝手に達してしまう。
 だから教授の言ったことは少し間違っている。イヤでもイってしまうのだから‥。
 とは言っても強姦とかされたらそれはまた別だろうけど。

 この‥定期的な振動は非常に拙い。これほど藤原さんが保つとは思わなかった。俺よりも絶対先にばてると思ったのに。予想外に長く、強く、刺激が入る。
 はぁっ‥も、こんなに‥突かれたのは、初めてかもしれない。俺は声を発することも出来ず、ただただ我慢する。息だけが荒くなり、みんなが見てる前で、情けないくらいの顔をさらす。恥ずかしいなんて言ってられないほど藤原さんの突きは正確で威力があった。
「ぁ‥、あ‥お‥、ね‥がい‥」
「なんだい」
 藤原さんは動作を中断して俺の呼びかけに答えてくれた。

「あ‥んた‥の、テク‥に‥参って‥る、って‥こ‥と‥で、勘弁‥して‥」
 藤原さんはもっと強く俺のことを抱き締めると、顔を真横にくっつける。そしてその耳に囁いた。
「上手いこと言うね。中々アキラにに近づいているようだね」
 周りに聞こえないようそれだけ言うと、今度はハッキリと台詞を言う。
「若者ならテクニックがあると言われたら、喜ぶかもしれないが、私はそれくらいはあって当然の年だからね。テクを誉められるよりもアキラの愛情を確認したい」
 それはまるで愛情に飢えた子供を思わせる。いい年をして、大学教授の肩書きを持って、なのに一学生に溺れた片桐教授。根底にこんな性格が隠されているからだろうか。
「ほら、降参してごらん」
 せっかく少し収まりかけてきたのに、藤原さんは動きを再開した。
「やっ‥‥ぁぁっ‥、く‥」
 ああ‥ダメだ。前立腺はこれ以上ないくらい膨張してる。そろそろ‥ドライオーガズムに達してしまう‥。

 ふるふると身体が震えだした所で、なんとオッケーが出てしまった。
「ふう、さすがにちょっとやばかったかな」
 藤原さんはそう言う割りには疲れた様子も切羽詰まった様子も見せず、俺だけが言葉も乗せられないほど上昇していた。
 こんなままで本番になったらとんでもないことになる。いくらも我慢できないし、ましてや台詞なんて言えるわけがない。

「このまま本番に行きまーす」
 なのにこんな声が聞こえ、俺は自分の身体を持て余したままで本番に突入してしまったのだ。

「アキラがこんなに頑固だとは思わなかった」
「むっ‥無理‥」
 そう言いかけたとたんに突きが入った。
「ぁうっ」
 だっだめ、それ以上突かれたら、マジで身体が反応する。
 焦って俺は思いきり怒鳴っていた。
「あっ‥あんたなんか大嫌いだーっ」

 言い終わったのともう一度藤原さんの突きが入るのとは同時だった。
 そしてその突きで身体は痙攣を始めた。
 そう、乾いた絶頂に達してしまったのだ。

 どれだけ踏ん張ってみても身体の痙攣は収まらない。身体中の筋肉が収縮を続け、藤原さんを銜え込んでる部分も無理なのに締まり続ける。
「あうっ‥‥、く‥ぅ‥、ん‥んんっ‥」
 がくがくと腰が震え、砕けそうになりながら、堪らない快感に支配される。その間も藤原さんのモノは往復を続ける。けれどその行為には強い想いを感じた。嫌いだと怒鳴られて、怒っているかのようだ。
 俺は本番だと言うことも、だからフィルムに収まり続けていると言うことも、全部が頭から抜け落ち、けれど観客の視線だけは感じながら、快楽に支配されていた。
 もう‥演技なんて出来たものではなかった。

 ゾクゾクッ‥ゾクゾクッ‥、と快感は電気のように痺れをもたらしながら、走り続ける。ダメ‥これ以上の刺激は気を失うかもしれない‥。
 絶頂をみているのに、それなのに藤原さんはまだ俺を突いている。しかもその上なんと、俺のモノを扱きだしたのだ!
「はぅっ‥、くんっ‥‥ダッ‥だ‥め‥」
 散々高められたモノはあっさりと頂点に達した。
「あああっ‥ああっ」
 悲鳴にもならないような声を上げて、俺は両方ともの絶頂を味わう。
 こんなの‥絶対誰が見ても演技だなんて思えない‥。頭の裏ではもの凄い羞恥心が駆けめぐる。だけどそれよりも凄いものが身体中に渦巻いている。そう、台風のような感じ。
 雨と風の二つが身体の中で暴れている。
 余りの激しさに体がついて行かない。頭もその刺激を受け止めきれない。それほどの強すぎる快感だった‥。
 ダブルで絶頂をみたのは初めてのことで、そこで俺の記憶はなくなった。

 それから目が覚めたのはかなり経ってからだった。まったく見覚えがない所で一瞬何が起こったのか判別が付かなかった。
 俺はまだ裸のままで両手は括られて、どこかから吊されているようだった。足はかろうじて着いていたが。
 うっすらと目を開けた俺の前に立っていたのは藤原さんだった。
「ふ‥じわらさん?」
「君はまだ私のことがわからないようだね」
 え、まだこれって演技中?
「心から私のことを片桐だと思えるようになるまで個人レッスンをすることに決めたから」
「だっ、だけど‥撮りの進行が‥」
「そんなことは気にしなくてもいい。君の演技がマシにならないと本番が撮れないから一緒のことだろう」
 うっ、やはり藤原さんのお眼鏡に適わなかったのか‥。けれどあの状態にしたのは藤原さんなのに‥。かなり無茶を言われているのだが、なんとかして気に入ってもらえるように頑張るしかない。

 でもこんな素っ裸で縛られて、一体なにの練習をするのだろうか。
 場所は使われていないスタジオの一つ。背景は地下室のようだった。
「さてアキラ。どうして君はこんな所へ連れてこられたか分かるかい」
 これはなんだろう。よくオーディションにある、どれだけ役を掘り下げているかのテストだろうか。
「全然わかんないよ」
 吐き捨てるように言えば、分かっていて分からないと答えているようだろう。
「何故裸なのかはどうだい」
「それは、あんたがエロいことしたいだけだろう」
「ははは、なるほど。私はそう言う目で見られていたのか。しかし惚れた相手じゃなければ君の言うエロいこともしたくないはずなんだがね」
「そんなことないだろう。その証拠に金出してセックスする奴もいる」
「そんな低次元な者と私を一緒にはして欲しくないな。私はね、ちゃんと愛情を持った相手にしか欲情しない」

「聖人君子のようなことを言ってるけど、そんなに純粋ならどうして奥さんを裏切ってるんだよ」
 そこで藤原さんの顔は驚くほど変化した。今まで優しい大学教授だったのに、危ない研究者になってしまった。感情らしきものは引っ込んで、ただ冷たいものが流れている。
 うわっ、奥さんのことは禁句だったのか。逆鱗に触れてしまったようだ。
「私は妻のことをとても愛しているよ。彼女には幸せになってもらいたいと思って今まで暮らしてきた。とても大事にしてきたつもりだ。これからもそれを壊すつもりはないよ。だがね、アキラ。私にきちんとした恋愛感情を教えてくれたのは君なんだよ。だから私は君を手にするためなら何でもするだろう。唯一、妻を不幸にすることを除いて」
 台詞は変わりないが表現が全然違う。少し棒読みっぽいのに、それがまた一段と怖さを醸し出していた。
「こんな所に俺を繋いでどうするつもりなんだ」

「ようやく本題に入れたようだね。私なくてはいられない身体にしてあげようと思ってね」
 そこで藤原さん、いや片桐教授は凍り付くような笑みを浮かべたのだった。


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